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ESGの観点から改正公益通報者保護法を考える


目次[非表示]

  1. 1.改正のポイント
  2. 2.公益通報者保護法の目的
  3. 3.ESG経営で見る公益通報者保護法
  4. 4.ミスターマックス様事例ご紹介
  5. 5.弊社のソリューションについて
  6. 6.リスクマネジメントに必要な5つの力
  7. 7.弊社のソリューションについて



改正のポイント

2022年、6月1日から、改正公益通報者保護法が施行されました。今回の改正では、従業員300人超の企業に対して
●事業者に対して、内部通報に対応する「体制を整備」(窓口設置、調査、是正措置の実行)することを義務付け
●事業者に対して、内部通報に対応する「対応業務従事者」の指定を義務付け、この従事者には守秘義務を課す
●行政機関等、外部への通報に関する要件緩和(刑事罰案件だけでなく行政罰案件の告発も保護法の対象に)
●退職者や役員も保護される通報者として、その範囲を拡大
●通報者の匿名性確保

など、いくつかのポイントがあります。
この法律を所管する消費者庁は事業者が適切かつ有効な措置をとるための「指針」と「指針解説」を公表しており、例えば前掲の「匿名性確保」については「匿名の内部公益通報も受け付けることが必要」と明確に記載するなど、考え方や具体例などが示されています。



公益通報者保護法の目的

公益通報者保護法は2004年に制定、2006年に施行された法律で、企業の不祥事を早期に発見し、被害を防止、あるいは最小限に食い止めることを目的にしています。それが社会と企業双方の利益にかなうためです。
今回の改正では、これをさらに推し進めるべく……
 ●企業自身による是正(自浄)をしやすくする
 ●通報者が通報しやすくする
 ●通報者を保護しやすくする
ことを目的とした条項が盛り込まれました。
「組織(業界)の常識は世間の非常識」などと言われますが、意図的に不正を行うよりも、意図せず行ってしまったケースの方が多いのではないでしょうか。食品の偽装も、数値の改ざんも。今まで疑うことなくとってきた行動が、ある日突然批判を受け、大きな損害を被る結果を招いてしまいます。



ESG経営で見る公益通報者保護法

ステークホルダー資本主義が浸透する中、「非常識」な企業は信用を得られません。もちろんユーザーは「非常識」な企業の商品やサービスを選択しないでしょう。一方、投資家は短期的な利益だけではなく、持続的に成長できる企業、すなわちESG経営を推進する企業への投資を意識しています。
ESGのうち、「E(環境)」や「S(社会)」は比較的社会にアピールしやすいことが多いですが、一見“やって当然”(アピールするまでもない)と思われがちな「G(ガバナンス)」こそが経営上は最も重要といえます。2021年、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織である企業広報戦略研究所は生活者1万人を対象に「ESG/SDGsに関する意識調査」を行いました。企業のESGに関する取り組みの中でも、特に企業広報が生活者などステークホルダーへ伝えるべき項目について、「積極的に取り組んでいる」と感じられているか、の調査ですが、その結果、「E」「S」「G」の各項目の取り組みに大きな差は無かったものの、「G」の取り組みの伝わり方が比較的低めにとどまっていました。
自社や業界の「非常識」に「これって、いいのか?」と疑問を抱いた時点、つまり、可能な限り早いタイミングで通報(共有)し、早期に対応することが、結果として重症化を防ぐことにつながるでしょう。



ミスターマックス様事例ご紹介

企業による取り組みの事例を、一つご紹介します。
福岡県に本社を置く、総合ディスカウントストアの株式会社ミスターマックス・ホールディングスは2004年に、独立した組織としてコンプライアンス委員会を設置しました。以降、外部の窓口に寄せられる事案について、法律事務所や弊社のような広報コンサルタントを外部メンバーとして、調査、対策、結果の共有等を行っています。

同社総務部の豊村雅子さんは「最初は“こんなこと相談してもいいのでしょうか”と相談窓口で相談をちゅうちょする従業員もいましたが、継続して社内報や掲示板を通じてヘルプライン(相談窓口)の案内を啓発したことにより、従業員の意識も変わり気軽に相談できる窓口として定着してきております。また、従業員本人の相談にとどまらず、職場環境の改善を目的とした相談も増えてきており、良い意味で職場内の自浄作用が働き、改善点の早期発見につながっております」とおっしゃってくださっています。



弊社のソリューションについて

企業のみならず、これを構成する従業員にも「インテグリティ(誠実さ)」が求められる今日、組織としての「自律性」を意識と体制の両面から高めることは必須といえるでしょう。
取り組むべきことに「誠実に」取り組み、誤りや不足している点は早期に是正し、これを社会に伝えることで「まっとうな会社である」と認められ、社会と共に持続的な成長を目指す環境を整える結果につながります。弊社の知見を貴社の未来にお役立てください。



リスクマネジメントに必要な5つの力



弊社のソリューションについて

◎危機管理広報体制診断
保有するさまざまな企業の活動データと比較することにより、企業としての強み・弱みを洗い出し、計画的な対策の検討をご支援いたします。

◎リスクアセスメント等平常時活動支援
起こり得るリスク事象を可視化することで組織としての方向性を定め対策を建てる助けとなります。リスクを低減することができます。

◎危機管理広報セミナー
緊急時の広報対応に必要な知識、準備物、メディアの特性、事例などについてリスクコンサルタントが講演いたします。

◎インテリジェンス活動

【ご参考】https://www.dentsuprc.co.jp/servicemenu/crisis-risk


※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

稲 東士雄
稲 東士雄
株式会社 電通PRコンサルティング ステークホルダー・エンゲージメント局 1990年、株式会社電通PRセンター(現・株式会社電通PRコンサルティング)入社。 メディア部門を経てディレクション部門に勤務し、2008年4月第1ディレクション室部長、2015年4月第3ディレクション局次長、 2017年4月コミュニケーションデザイン局次長、2018年7月第3プランニング&コンサルティング局局長を経て2020年1月から現職。 レジャー、メーカー、金融、運輸、流通、官公庁、地方自治体等の窓口としてPR作業のディレクション業務を担当。 製品・サービスのパブリシティ等マーケティングコミュニケーション領域の他、コーポレートコミュニケーション領域で、企業広報体制構築、調査、危機管理広報等の経験を持つ。

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