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【事例】LION「『ゾンビ臭』をやっつけろ」に見るマーケティングPR企画の極意


2021年12月1日、株式会社電通PRコンサルティングでは、オンラインセミナー「テレビCM無くても売上拡大! LIONの事例に学ぶマーケティングPR」(協力:株式会社宣伝会議)を開催。第1部では、当社「PRX Studio Q」のPRプロデューサー/プランナー根本陽平とライオン株式会社(以下、LION)のプロジェクトマネジャー内田佳奈さん出演のもと、LIONのキャンペーン「洗っても蘇るイヤなニオイ『ゾンビ臭』をやっつけろ」を事例として紹介しながら、テレビCMの出稿がなくても製品の売り上げ拡大に成功した舞台裏についてお話ししました。このキャンペーンはGlobal SABRE アワード2020で「世界のPRプロジェクト40選」にも選出された企画となります。

 洗っても蘇ってしまうという洗濯物の”ニオイ悩み”の特徴から、その現象に「ゾンビ臭」という愛称をつけた本プロジェクト。第2部ではプランナーの松尾雄介が、洗濯の困りごとに着目しゾンビ臭というアイデアが生まれたように、生活者の悩みや課題などの“鬱憤(うっぷん)”に着目することでインサイト(生活者の無意識的な欲求や不満)を発掘するメソッド「WARPATH」などについてご紹介しました。

 今回は、当日お話しした内容からポイントを抜粋して整理しました。また、セミナー動画もダイジェスト版として編集しました。期間限定で公開いたしますので、ぜひご覧ください!(現在、当サイトでは公開終了しております。申し訳ありません。)




【事例概要】洗っても蘇るイヤなニオイ「ゾンビ臭」をやっつけろ


 LIONは2019年、洗濯物の三大ニオイ悩み(部屋干し臭・干し忘れ臭・戻り生乾き臭)に有効な洗剤「トップ クリアリキッド抗菌」を開発。しかし、洗剤市場はすでにコモディティ化(競合製品との差別化要因がなくなっていくこと)していたため、優位性を訴求するのが難しいという課題を抱えていました。

 そこで、三大ニオイ悩みに共通する「洗ったのに蘇る」「ニオイがうつる」という特徴を「ゾンビ」になぞらえ、「ゾンビ臭」という愛称で呼ぶことで生活者の親近感や当事者意識を引き出し、ニオイ悩みについて議論が活発化することを狙いました。

 LIONマスコットキャラクター「ライオンちゃん」がゾンビ臭と闘うという内容のWebムービーを公開。企業資産を活用することで話題化を図るコンテンツづくりのほか、専門家の監修によるゾンビ臭対策をTwitterで発信するなど多角的に施策を展開。テレビCM未出稿でもソーシャルメディアを中心に話題となり、ゾンビ臭という新たな「社会記号」が世の中に流通した結果、液体洗剤市場での「トップ クリアリキッド抗菌のシェア拡大に成功したものです。



目次[非表示]

  1. 1.【第1部】LION事例に学ぶ、成果を上げる「マーケティング戦略×PR」
    1. 1.1.‟PRドリブン”なコミュニケーションプランニングのオリエン
    2. 1.2.洗濯にまつまわる”鬱憤”に着目したアイデア発想 
    3. 1.3.「世の中(世間)の本音」と「ブランドらしさ」のマッチング
    4. 1.4.テレビCMに依存せずに話題化する仕掛けづくり
  2. 2.【第2部】今日から使えるプランニング・メソッドのご紹介




【第1部】LION事例に学ぶ、成果を上げる「マーケティング戦略×PR」



‟PRドリブン”なコミュニケーションプランニングのオリエン

 洗剤市場が成熟し、コモディティ化が進む中、製品特徴をただ伝えるだけのCMや広告で、生活者の行動様式を変えることは容易ではありません。そういった状況下で、製品の単純なメディア露出ではなく、ブランドと生活者の接点をつくるような施策を行いたいとご相談(オリエン)を頂いた本件。「PRとは、社会との合意形成である」という共通理解を持った上で進められたことで、、当初からPRを施策の中心に置いた”PRドリブン”のプランニングが可能となり、企画の自由度・幅が広がりました。


洗濯にまつまわる”鬱憤”に着目したアイデア発想 

 プランニングにおいて、生活者が本当に感じている課題や問題をブランドが解決することが重要ですが、その本音(インサイト)に迫れるかがアイデアを生み出す上では大切です。本件では、ソーシャルメディアの投稿などから、洗濯物を洗っても臭くなってしまう現象やそれに起因する困りごと=‟鬱憤”に着目。「洗っても蘇る」「ニオイがうつりやすい」という悩みの特徴から、この現象を「ゾンビ臭」という愛称で呼ぶことにしました。生活者が「この鬱憤、あるある!」と思わず共感してしまう現象に愛称をつけて可視化することで、ニオイ悩みに関する議論が活発化することを狙いました。 
 また、満員電車と同じ環境を再現し、洗濯物の臭いが10分で他人の服に移ることを実験で証明。客観的かつ科学的なデータとともに「ゾンビ臭」という言葉の拡散を試みました。


「世の中(世間)の本音」と「ブランドらしさ」のマッチング

 世の中(世間)の鬱憤に着目する一方、それにマッチングするようなブランドらしさや強み、本質的価値を整理することも必要です。今回の例で言えば、「洗濯してもニオイが蘇り手抜きだと誤解される」という生活者の鬱憤に対し、三大ニオイ悩みを撃破できる「トップ クリアリキッド抗菌」だからこそ解決できる「ゾンビ臭」という新概念を企画のコアアイデアに据えました。



テレビCMに依存せずに話題化する仕掛けづくり

 「ゾンビ臭」という新概念を訴求するために、LIONの企業資産でもあるマスコットキャラクターのライオンちゃんがニオイと闘うというゾンビ映画風のWEBムービーを制作しました。生活者が、ライオンちゃんが出演していた過去のテレビ番組を懐かしんで思わず反応してしまう仕掛けを用意することで話題の最大化を狙いました。さらに、洗濯物のニオイ悩みに関する調査結果と、専門家の監修による「家庭でできるゾンビ臭対策」を、新たに立ち上げた特設サイトでやツイッターアカウントで公開。企業資産を活用したコンテンツ作りと、専門家を巻き込んだ科学的根拠のある情報提供の両方を多角的に展開しました。ニオイ悩みが1年で最も増える梅雨を狙った本プロジェクトは多くの生活者から支持され、テレビCM出稿がない中で「ゾンビ臭」という言葉が、Twitterトレンド入り、Yahoo!トレンド1位を果たし、関連ツイートは12万件を超えました。さらにその反響により、テレビ11番組を含む400以上のメディアで紹介され、梅雨期には「ゾンビ臭」とその撃退方法が連日取り上げられました。





【第2部】今日から使えるプランニング・メソッドのご紹介


 PRX Studio Qでは、生活者の課題を効率よく見つけるために、ソーシャルメディアの投稿に表出する鬱憤を狙い撃ちで検索していくアプローチ「WARPATH」などのオリジナルメソッドを活用しています。「WARPATH」は、不満やネガティブな感情をまとうワードを整理し、「Want=欲求」「Anti=反感」など7つにまとめたアプローチです。調べるテーマにそれらのワードを掛け合わせて投稿を検索することで、インサイト分析のヒントになる生活者の声を見つけることができます。




出典:https://note.prx-studio-q.com/n/n8cbed8d4afd4

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

PRX Studio Q
PRX Studio Q
その熱量を、世界を動かす力に変える。電通PRコンサルティングのプランニング専門部署から生まれた組織横断型チーム「PRX Studio Q」。Qが約束するのは、これまでのPR会社の枠を越えた「PRトランスフォーメーション」。経営・R&D・マーケティングやブランディング・人事や採用など、あらゆる領域に世の中視点を取り入れ、手段を問わずプロジェクトをデザインすることでビジネスに新しい成長をもたらします。https://prx-studio-q.com/ ーーーーーーー その熱量を、世界を動かす力に変える。 いつだって、世界を変えてきたのは、熱い想いをもった人たちだ。/私たちは、その熱を、社会に届けきるためにいる。/自信があるのに、広まらない。/良いことをしているのに、届かない。/でも、この世界を少しでもよくしたいと心から思う。/そんな人と同じ目線で、ともに挑戦していきたい。/その熱は、人々の感情を動かし、やがて大きなうねりとなって、/人や、企業や、社会を前に進めていくはずだから。/「Q」は、物理学で熱量を表す記号。/いつも熱い想いのそばに。/PRX Studio Q

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