「C+PESO」モデルとは?世の中に「語られる」メディア視点のフレームワーク
情報が溢れかえる現代、生活者が自ら得たい情報を能動的に取捨選択する中で、単に製品やサービスを伝えるだけの広告では、ますますメッセージが届きにくくなっています。こうした状況下で、企業やブランドが伝えたい情報を、生活者が知りたいと思う情報に変えて届けるには、ターゲット(=直接的な消費者)視点を知り、その関心に合わせた情報発信が必要です。
さらに、ターゲットの意識変化を後押ししたり、将来的なターゲットを増やしたりするためには、あらゆるステークホルダーを含む社会全体と合意形成をする、という「PR思考」を取り入れたコミュニケーション設計が有効です。
今回は、電通PRコンサルティングが、情報流通デザイン設計の際に実際に活用している、企画段階からPR思考を取り入れたメディア視点のフレームワーク「C+PESO」についてご紹介します。
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コミュニケーション設計に欠かせない「PESO」
「C+PESO」の説明の前に、コミュニケーションの媒介になるメディアの変化について少しお話させてください。
私たちを取り巻くメディア環境は、日々変化しており、いわゆるマスメディアと呼ばれるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の影響力は相対的に低下しています。オンラインメディアの台頭とともに、「マスメディア」そのものの定義も見直されつつありますし、また、生活者も多種多様にグループ化され、ソーシャルメディアが普及する要因にもなっています。
このような変化を背景に、近年のPRや広報活動では、生活者が接触するメディアを四つに分類し、その頭文字を並べた「PESO(ペソ)」(※)を用いてコミュニケーションを設計することが増えてきています。
P ペイド(Paid)
広告などの「買う」メディア
E アーンド(Earned)
ニュースで取り上げられるなど「獲得する」メディア
S シェアード(Shared)
ソーシャルメディアやブログなど「共有される」メディア
O オウンド(Owned)
コーポレートサイトや自社のソーシャルメディアアカウントなど
「所有する」メディア
PaidとOwned は自社発信で直接ターゲットに自ら「語る」のに対して、EarnedとSharedはマスメディアやソーシャルメディアで第三者に「語られる」コミュニケーションといえます。この「PESO」それぞれの特徴を理解した上で、課題に合ったコミュニケーション戦略を立てなければなりません。
※「PESO」の説明は、「日本パブリックリレーションズ協会」公式ウェブサイトに基づく。
「語る」だけではなく、「語られる」ためのフレームワーク「C+PESO」
企業やブランドがコミュニケーションを行う際、この「語る」メディア(=PaidとOwend)と「語られる」メディア(=EarnedとShared)を両輪で設計することが大切です。すなわち、自社がどう語るか、だけではなく、どう語られたいか、を考えるということです。
「C」とは、「クリエイティブ(Creative)」の頭文字を取ったもので、「語る」と「語られる」両方の核となるアイデアを指します。このCと、PESOを統合して考えるフレームワークが「C+PESO」です。
なぜ私たちが「C+PESO」の活用を始めたかというと、多くの場合、語りたいことを優先的に考えがちになるため、社会にどう語られるかという「PR思考」が抜け落ちたままアイデアが固まってしまうからです。
実際、施策が全て決まった後に「ニュースやソーシャルメディアで話題にするためのPRをしてほしい」というご相談をいただくことも多々あります。しかし、「語りたいこと」を軸にすでに決まったアイデアや施策に、あとからPR思考を盛り込むことは簡単ではありません。結果、広告やCMなどをつくったはいいものの、メディアやソーシャルメディアで話題にしてもらえず、せっかくの熱量が世に届かずに終わってしまうということもあります。
このようなことを防ぐためにも、電通PRコンサルティングのプランニングチーム「PRX-studio Q」では、「自分が何を語りたいか」というOwnedと Paid、「他者にどう語ってほしいか」というEarnedとSharedの両視点の最適バランスを常に考え、成果へ導くアイデアをつくり上げていく「C+PESO」を活用するようにしています。つまり「どんなアイデアが必要か」と「どう届けるか」を同じタイミングでプランニングし、目指すゴールへ到達させるいう考え方です。
EとSからの逆算で、プランニングの精度と速度をアップ
では、実際どのように、企画段階からEarnedとShared視点を盛り込めばいいのでしょうか
EarnedとSharedから考える上で必要なことは、ニュースメディアとソーシャルメディアの分析です。電通PRコンサルティング「PRX-studio Q」では、ニュースメディアは「報道論調分析」、ソーシャルメディアは「ソーシャルハンティング」という独自の分析を行っています。
報道を分析することで、社会で既に顕在化、話題化しているトレンドを把握します。一方、ソーシャルメディアを分析することで、まだ顕在化していない、でも実は多くの人が潜在的に持っている意識(=インサイト)を見つけ出すことができます。企業やブランドが伝えたいことと、トレンドや生活者インサイトをマッチングさせることが、アイデアを社会的な文脈に乗せていくためのポイントです。
一過性の話題づくりとは違い、社会との合意形成をしていくためにはこうしたPR思考での戦略的な積み上げが不可欠です。Cをどう届けるか、ということだけではなく、PESO視点でどんなCが必要か。両者を行き来しながらプランニングしていくことで、アウトプットの精度を上げていくというのが「C+PESO」の考え方です。
また、「C+PESO」はプランニングの速度も上げることができます。アイデアが本当に社会的な文脈に乗っていくか根拠のないまま進めると、バックアップとしてBプラン、Cプラン…と複数の方向性を用意しなくてはならず、チーム全体で一つのアイデアに集中することができません。しかし、EarnedとSharedを事前に分析し、インサイトを踏まえた課題設定ができれば、チーム全員が納得した上で同じ方向を向くことができるので、作業効率も高まります。
すでに電通PRコンサルティング「PRX-studio Q」では、「C+PESO」をクライアントとの共通言語として活用しながら、幾つかのプロジェクトを実施しています。企画段階で、ブランドの語りたいことだけではなく、EarnedとSharedの分析から課題とアイデアを導き出すプロセスを共有することで、「そもそも課題はそれで合ってるんだっけ」といったプランニング時の認識の食い違いを最小限に抑え、効率的にプロジェクトを推進しています。
この「C+PESO」の考え方は、PRや広報だけではなく、経営戦略やトップメッセージ、製品開発などビジネスのあらゆる場面で活用できるのではないでしょうか。
出典:https://note.prx-studio-q.com/n/na28d42d90117
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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