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【コーポレート・コミュニケーション最前線】企業広報は「価値づくり」の時代へ



「企業広報(コーポレート・コミュニケーション)の発展」を目的に、株式会社電通パブリックリレーションズ(現:電通PRコンサルティング)の社内シンクタンクとして、2013年12月に設立された「企業広報戦略研究所」。

設立以降、企業の広報力を8つの軸で分析した「企業広報力調査」をはじめ「危機管理力調査」「魅力度ブランディング調査」「ESGレピュテーション調査」といった数々のモデルの構築、調査研究発表のほか、定例研究会の実施や出版・寄稿などの活動を行ってきました。

前編ではこれまでの10年間を振り返り、企業広報活動の変化について取り上げてきましたが、後編となる今回は「これからの企業広報」について、設立メンバー3人が、高度化するコーポレート・コミュニケーションの在り方をご提案します。


■ 研究員のプロフィール
本記事末尾をご覧ください。


■ 「企業広報戦略研究所」について
大学の研究者や企業経営・広報の専門家と連携し、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析を行う電通PRコンサルティング内のシンクタンク。従来は広報担当者の経験を通じて蓄積されることが多かった広報分野の知見において、当研究所では広報活動や危機管理に関する実証的な研究を行い、データに基づく客観的な分析による知識創造を試みています。広報の基礎理論から応用までの研究を通じて広報の発展に寄与することを目的とし、「話題づくり」のみならず、企業の「価値づくり」を通じて、企業の皆様の新たな成長を支援します。
詳しい調査、研究内容については、下記リンクよりファクトブックをダウンロードしてご覧ください。


  C.S.I.ファクトブック概要版 2013年12月に設立した、企業広報戦略研究所2023年12月に設立10周年を迎えます。 設立以来、学術機関や企業の広報セクションと連携しながら、企業広報の発展に寄与すべく調査・研究活動を行ってまいりました。 企業広報戦略研究所のこれまでの軌跡と、現在実施している調査・研究をまとめたファクトブックの概要版です。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング

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目次[非表示]

  1. 1.企業広報は「話題づくり」から「価値づくり」に
  2. 2.「価値づくり」のための「広報戦略」策定とは?
  3. 3.企業広報担当者は「『企業価値』創造プロデューサー」
  4. 4.電通PRC-PRX事務局からのご案内



■ 前編記事はこちら

  【企業広報10年の変遷を考える】「データドリブンな企業広報」へ 「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)」設立10周年企画。今回は、2013年からの10年間を通じて、社会・経済情勢の変化と企業広報や当研究所の変遷や現在地を振り返り、「企業広報」のあるべき姿を提案します。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング


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企業広報は「話題づくり」から「価値づくり」に



――「価値づくり広報」について、詳しく教えてください。



阪井:社会や経済環境の変化に伴い、商品広報に代表される「話題づくり」から、企業全体の「価値づくり」を目指す方向に企業広報活動は大きく変化してきています。その理由として大きく3点挙げられます。


① 情報量の爆発的な増加

10年前と比較して流通する情報量が爆発的に増加し、話題の賞味期限が短くなってきている。またフィルターバブルといわれるように自分好みの情報ばかりが集まる情報環境下で発信者の信頼性を高めないと、そもそも接触が難しくなってきている。

② これからの重要ターゲットであるZ世代の意識

これからの時代を担い、企業にとっての重要ターゲットとなるZ世代はほかの世代と比較し、社会課題・環境問題への関心が顕著に高くなっており、企業としての社会価値を高めないと、情報への接触をキャンセルされてしまう危険性がある。

③ 脱・株主第一主義/非財務価値の向上

株主にとどまらずステークホルダー全体を見て経営していくことが、世界の経営トレンドになっている。社会価値と経済価値の両立が求められる中、財務諸表には出てこない価値、いわゆる「非財務価値」を高めていくことが必要になってきている。一方で実態が伴わないコミュニケーションが批判される時代になり、価値ある事実(ファクト)づくりが求められている。


このような背景から、企業全体の「価値」を高めていかないと、これからの経営は成り立たなくなっており、それに合わせて「企業広報」の活動も変化が求められてきているのです。



――これに伴い、ステークホルダー・リレーションズが重要になってくるわけですね。



末次:企業における「価値」というものは自分たちではなく、社会が判断するものと考えています。そのため、これまで以上に、多様に存在するステークホルダーそれぞれの価値観をきちんと把握・理解し、適切なコミュニケーションを行うことで、よりよい関係をつくっていく必要が生まれたのです。そして、その価値観をしっかり社内に共有し、行動を促していくことが求められていると思います。


阪井:そのためには各企業において、重要ステークホルダーに向けて取り組む「ソーシャルバリュー(社会価値)」の追求を土台としながら、「顧客エンゲージメント」や、従業員とその家族に向けた「インターナルブランディング」という3つのアプローチに取り組む必要があります。





このような動きに合わせ、企業も徐々に変化してきています。1つ例を挙げると「広報部」という名称が、ある時期から「広報・IR部」となり、株主や投資家とのコミュニケーションも担うケースが増えてきました。そして近年ではさらに「ESG」や「サステナブル」という領域が加えられているようです。これは、重要なステークホルダーである顧客や社員などの気持ちや価値観を捉えて、サステナブルな経営を推進していくことが必要と考える企業が増えてきているためと考えられます。




「価値づくり」のための「広報戦略」策定とは?



――自社にとって重要なステークホルダーとはどう考えればよいのでしょうか?



戸上:自社の経営において、重視すべきステークホルダーを分類し、プライオリティ(優先順位)を設定することを意味しており、決してその他をないがしろにしていい、という意味ではありません。

確かに重視するステークホルダーを設定すると、「それ以外はどうでもいいのか」と抵抗や反発が出るケースもあるでしょう。しかしそれは、各事業部単位から生まれることが多いように思います。ここでは、マーケティング的なターゲット論ではなく、企業経営の方針やパーパスを達成していくために、どのステークホルダーを重視するか、その優先順位も含めて考えるべきであり、それこそが重要な経営判断の1つになってくるのではないかと考えています。

加えて、ステークホルダーごとの相互の関係性などにも注意してください。例えば、就職活動中の「学生」は、未来の「個人株主」になり得る存在であり、「顧客」にも「社員」にもなり得る重要な存在です。こうしたステークホルダー間の関係性も意識することで、より効果的、効率的な企業広報活動を実現できるのではないかと考えています。




――重要ステークホルダーを設定するには、事前の戦略策定が重要になってきますね。



阪井:その通りです。「企業広報」における「戦略づくり」については、以前にも増して、高い注目が集まっています。

では、「企業広報における戦略」とは何か?これは、「経営戦略に基づき、自分たちの『ありたき姿』をどのように描くか」ということにほかなりません。「誰に対して、どのように思われたいか」ということを明文化できていますか?と言い換えることもできます。これを定め、現状と目標の企業パーセプションとのギャップを「広報課題」として設定し、そのギャップ解消を目指すコミュニケーションを設計する取り組みになります。





――具体的にはどのように取り組むのがよいでしょうか?



阪井:まずは「目標設定」です。誰に対して、どう思われたいのか?を定性・定量の両面から目標設定を行うことが大切です。そしてその目標を達成するために企業としての「ファクト(活動実態)」をつくりステークホルダーに伝達し、活動を通じて得られた「インパクト」の評価を行うことが、広報における企業価値創造に欠かせない重要プロセスであると考えています。企業広報戦略研究所では、これを「価値づくり広報モデル」とネーミングしました。

これに伴い、2022年には、同研究所設立時から行ってきた「企業広報力調査」もリニューアルしました。「企業価値」創造の視点で必要な戦略・戦術を棚卸しすることを通じて、根幹をなす「Strategy(戦略)」、それを受けて行う「Activity(活動)」、基盤として押さえるべき「Management(組織)」、これら3つの領域における9つの広報力を設定。上場企業の広報担当責任者に調査協力を依頼し、回答を得られた450社のデータを集計、広報活動の全体傾向や課題について分析しました。





戸上:この調査の中で特にスコアが低かったのが「エンゲージメント力」「ファクト力」「インパクト評価力」です。広報活動において自社の経営や事業だけでなく、社会にどのような影響(インパクト)を与えていけるかを測る「インパクト評価力」は、「企業価値」創造に結び付けていく広報活動にとって、今後ますます必須の項目になると思われます。

国内企業の広報レベルは年々向上していますが、この調査・分析を通じて、「これからの企業広報」を考える際の、重要な課題も明らかになったのではないでしょうか。



上場企業の9つの広報力スコア(全体平均)




企業広報担当者は「『企業価値』創造プロデューサー」



――ありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。



阪井:これからの広報・PR部門の方々には、世界の情報を先読みして活動できる「『企業価値』創造のプロデューサー」としての活躍を期待しています。ステークホルダーの皆様が抱く自社に対する期待や不安を的確に捉え、社内にフィードバックしてさまざまな「社会課題」を、「自社の資産・事業・理念でどのように解決していくか」ということをプロデュースしていく存在になれる貴重な存在だと確信しています。

私たち「企業広報戦略研究所」は、「企業広報の発展」を通して、「企業価値」向上に貢献できる研究機関でありたいと考えています。

今後も社会情勢の影響やメディア環境の変化、企業に対する生活者の不安や期待のメカニズムなどについて、企業の皆様、大学・研究機関、メディアの皆様と共に研究を進めてまいりたいと思います。広報・PRが発展し、明るい未来がつくり出せるよう、真摯(しんし)に努力してまいります。お力添えいただけますと幸いです。




■ 前編記事はこちら

  【企業広報10年の変遷を考える】「データドリブンな企業広報」へ 「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)」設立10周年企画。今回は、2013年からの10年間を通じて、社会・経済情勢の変化と企業広報や当研究所の変遷や現在地を振り返り、「企業広報」のあるべき姿を提案します。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング


※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。




電通PRC-PRX事務局からのご案内



「企業広報戦略研究所」10周年記念ファクトブック発行のお知らせ

「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)」10年間の活動を俯瞰(ふかん)し、これまで実施してきた、「企業広報」活動の発展に貢献する各種調査・分析・提言を1冊のファクトブック資料(抜粋版)にまとめました(2023年11月20日発行)。下記リンクよりダウンロードいただき、皆様のコーポレート・コミュニケ―ション活動にお役立てください。

  C.S.I.ファクトブック概要版 2013年12月に設立した、企業広報戦略研究所2023年12月に設立10周年を迎えます。 設立以来、学術機関や企業の広報セクションと連携しながら、企業広報の発展に寄与すべく調査・研究活動を行ってまいりました。 企業広報戦略研究所のこれまでの軌跡と、現在実施している調査・研究をまとめたファクトブックの概要版です。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング




■出演者プロフィール

阪井 完二(さかい かんじ) 企業広報戦略研究所 所長 
企業PR戦略、経営広報・コーポレートブランディング、パブリックアフェアーズ、イシュー・リスクマネジメント、KPI・効果測定などの研究および実践。政府、通信、IT、交通、食品、サービスなど多くの業界を担当。2013年に企業広報戦略研究所を立上げ、産学連携による調査研究・論文・学会発表等を実践。日本PR協会賞、国際PR協会賞、マーケティング学会最優秀論文賞(ベストペーパー賞)受賞、日本広報学会教育・実践貢献賞受賞など。


末次 祥行(すえつぐ よしゆき) 企業広報戦略研究所 副所長 
飲料、電機、通信、IT企業のマーケティングコミュニケーションや、企業など(大学、自治体を含む)のコミュニケーションも手がける。特に調査を活用したPRや報道の分析、レピュテーション分析、効果測定、など定量・定性の分析や企業リスク/ソーシャルリスクなど、企業戦略やイシュー・リスクに関連したコンサルティングを担当。


戸上 摩貴子(とがみ まきこ)  企業広報戦略研究所 上席研究員
入社以来、主にメディアリレーションズ、リサーチ、ヘルスケアなどの部門を担当。 各部門で、メディアプロモートや調査、ツール制作などを通じた疾患啓発やマーケティングプロモーションを行う。現在はコーポレートコミュニケーション戦略局に所属し、報道論調分析やヒアリング、ネット調査など、調査を起点としたコーポレートコミュニケーションを担当。 


PRX編集部
PRX編集部
広報・PRのトレンド情報や、電通PRコンサルティングが60年以上に渡り培ってきた様々なソリューションなどについてご紹介。

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