【企業広報力】「PBR(株価純資産倍率)」と「広報活動」との関係性
企業の広報活動は「財務的指標」に寄与するか――。
広報ご担当の皆様なら、このテーマに一度は悩まれたご経験があるのではないでしょうか。
今回、「企業広報戦略研究所(株式会社 電通PRコンサルティング内)」が保有している「企業広報力調査2022」における企業の広報活動に関する実態データと、現在話題となっている企業価値を評価する指標の一つ「PBR(株価純資産倍率/ Price Book-value Ratio)」との関係性を分析しましたので、ご紹介します。
「企業価値向上」に向けた広報活動を考えていく上で、ご参考にして頂けますと幸いです。
PBR(株価純資産倍率 )とは
株価が割安か割高かを判断するための指標。株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)という。純資産から見た「株価の割安性」。株価が直前の本決算期末の「1株当たり純資産」の何倍になっているかを示す指標。(日本証券業協会「投資の時間」より ※詳細下記リンクご参照下さい。)
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企業広報力調査とは
「企業広報戦略研究所」(株式会社 電通PRコンサルティング内)では、日本における企業の広報活動の実態や課題意識を把握することを目的に、2014年から隔年で企業広報力調査を実施しています。
「企業広報力調査2022」では、「価値づくり広報モデル」をベースに、Strategy、Activity、Managementの3領域 と、「課題把握力」「目標設定力」「ファクト力」「クリエイティブ力」「PESO活用力」「エンゲージメント力」「インパクト評価力」「リスクマネジメント力」「広報組織力」の計9つの広報力で整理し、上場企業450社にアンケートを行っています。
「PBR1倍割れ」について
2023年3月、東京証券取引所が、上場企業の企業価値を高める基盤を作ることを目的に、PBR1倍割れ企業に改善策の開示するよう異例の要請を行いました。また、10月26日、「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』に関する開示企業一覧」を2024年1月15日から公表開始すると表明し、「PBR 1倍割れ」への注目がますます高まっている状況です。
PBR(株価純資産倍率)とは、株価を総資産から負債を差し引いた「BPS(1株当たりの純資産)」で割った値で、株価が純資産の何倍かを示し、純資産に対して株価が割高か割安かを判断する指標です。
PBRが1.0倍という場合は、株価と純資産が同額ということ、PBRが1.0倍未満の場合は株価( ≓ 投資市場の評価)が純資産である株主の資産よりも安いことを意味し、投資家などに、「その企業の経営環境では利益を創出しにくい」「その会社の事業に成長する余地が少ない」あるいは「現経営陣が事業を成長させるのは難しい」と判断されていると考えられます。
企業活動とPBRの関係性
当研究所では、PBR向上を支える一要素として、企業の広報活動があると考え、「企業広報力調査2022」のデータを活用し、PBR1倍以上の企業群と1倍未満の企業群とで、どのように広報活動の実施率のスコアが変化するかを分析しました。
分析➀:PBR1.0倍以上・未満企業の広報力別の分析
PBR1.0倍以上・1.0倍未満の企業の広報力を分析したところ、PBR1.0倍以上と1.0倍未満の企業では、明確に広報活動の実施率が異なることが確認できました。(総合)広報力で、36.4:28.7、7.7pt差となっています。
また、9つの広報力の中でも特に、「課題把握力」「クリエイティブ力」「広報組織力」で差が顕著に見られました。
分析②:PBR1.0倍以上・未満企業の各項目別の分析
特に差が顕著だった「課題把握力」「クリエイティブ力」「広報組織力」の項目別に深掘りしてみます。
(1)課題把握力
課題把握力においては、1.0倍以上・未満企業において、10項目のうち、6項目の実施率で差が認められました。差があった項目第1位は「生活者・顧客からの期待や不安を把握・分析している」、次いで「株主・投資家からの要望や不満を把握・分析している」となり、ステークホルダーの要望・不安に関する項目で大きな差異が確認できました。
(2)クリエイティブ力
クリエイティブ力では、10項目のうち、7項目の実施率で差が認められました。その上位は、メディアの興味・関心、PRメッセージ・ストーリーの策定、生活者・顧客の共感や信頼を高めるコンテンツ設計に関する項目で大きな差異が確認できました。
(3)広報組織力
広報組織力では、1.0倍以上・未満企業において、10項目のうち、5項目の実施率で差が認められ、その上位は、経営層との情報交換や広報戦略の共有など経営との距離感に関する項目で差異が確認できました。
企業価値向上に向けた広報活動のポイント
上記結果より、企業価値(PBR)向上を支えるための広報活動のポイントは、下記3点が考えられます。
➀ステークホルダーからの期待やニーズを把握・分析すること
②ステークホルダーのインサイトを踏まえた伝え方、伝わるための工夫をすること
③経営層と情報交換し、広報戦略の共有を行うこと
いずれも、株主や社員を含むさまざまなステークホルダーごとの“期待”や“不安”を把握し、その期待に応え、不安を払拭するための情報を“分かりやすく”伝える工夫を凝らすことが、企業価値を向上させる上で、重要な広報活動であると考えられます。
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今回は、これまでひもとくことが難しかった投資市場における「企業価値評価」と広報活動の関係性についてまとめました。
企業価値向上に向けた広報活動を考えていく上でご参考になれば幸いです。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
電通PRC-PRX事務局からのご案内
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「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)」10年間の活動を俯瞰(ふかん)し、これまで実施してきた、「企業広報」活動の発展に貢献する各種調査・分析・提言を1冊のファクトブック資料(抜粋版)にまとめました(2023年11月20日発行)。下記リンクよりダウンロードいただき、皆様のコーポレート・コミュニケ―ション活動にお役立てください。
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