社内リソース ×「ちょいズラし発想」=良質PRコンテンツに変身!?
社内には、話題になる可能性を秘めた情報がたくさん眠っています。 ブランドとしての特徴や「らしさ」を大事にしながらも、 それを ちょっとだけ変えてみる ことで、メディアが紹介したくなるPRコンテンツに大変身!今回は、この 「ちょいズラし発想」 に ついて、当社組織横断型プランニングチーム「PRX Studio Q」がご 紹介します。またこれに加えて、「社内に眠る情報を掘り起こすヒント」について、下記の記事でご紹介しています。併せてご覧ください。(電通PRC-PRX事務局)
「うちの企業やブランドでは社外向けに発信できる情報があまりない。大掛かりなプロモーション費用もないし…」
「従業員に対して、最近は新しい取り組みや福利厚生を提供できていない。満足度などエンゲージメントが下がってしまっているのでは…」
企業/ブランドの広報やPR、人事に関わるご担当者の方から、よくお伺いする悩みの声です。
なにか新しい取り組みをしなくては…という一方で、これまで大切に育ててきたブランドや社内の資産は簡単に変えることはできない…。そんな想いとの葛藤もあるのではないでしょうか。
目次[非表示]
- 1.「ちょいズラし」発想
- 2.定番の「ストロー状のお菓子」の“ちょいズラし”事例
- 3.「自社リソース」×「ズラし方」で多様なコンテンツに
- 4.①「ルール」をズラす
- 5.②「カタチ」をズラす
- 6.③「名称」をズラす
- 7.➃「役割」をズラす
- 8.⑤「立場」をズラす
- 9.⑥「場所」をズラす
- 10.⑦「とき」をズラす
- 11.⑧「使い方」をズラす
- 12.⑨「伝え方」をズラす
- 13.⑩「範囲」をズラす
「ちょいズラし」発想
そこで提案したいのが「ちょいズラし」。
すべてを大きく変えなくても、むしろブランドとしての特徴やらしさを大事にしながら、できることを“ちょい”と変えて新しくチャレンジすること。企業やブランドのリソースを活用し、世の中の文脈にあわせることで、新しい発見や成長につながったり、その結果ニュースになって再注目されたりすることがあります。
すでにあるものを、世の中の文脈に合わせてちょっとズラす試み。
そうすることで、自社の取り組みをバリューの高い情報に変身させられるかもしれません。今回は、そんな“ちょいズラし”の考え方を具体的な事例を交えながらご紹介します。一緒に見直してみませんか?
定番の「ストロー状のお菓子」の“ちょいズラし”事例
これは、とある製菓会社の事例です。この会社の代表的な定番商品は、筒状の細長いクッキー。その形状がストローに似ていることから、世界環境デーに合わせて少し改良を加え、「食べられるストロー」として発表しました。
すると、「究極のエコ」としてテレビやウェブニュースなどで注目を浴びることに。当時はプラスチックごみを減らす解決策として、プラスチック製のストローの提供を廃止する動きが広がっていたという背景がありました。
新しいトピックを生み出しにくい定番商品であっても、「ストローに似てるから、いっそストローにしてみては?」という柔軟な発想から、社会の関心や課題に合わせて見方や使い方を変え、新鮮な話題をつくり出した事例です。子どもから大人まで愛されている定番クッキーという身近な存在を活用したからこそ、世の中に対して環境問題を考えるきっかけを与えられています。
このように、企業が広報/PR活動をする中で、発信する情報がない時期や、商品やサービスと社会との接点が限定的だと感じる場合でも、”ちょいズラし”は救世主になる可能性があります。
「自社リソース」×「ズラし方」で多様なコンテンツに
“ちょいズラし”をするときに押さえておきたいポイントは自社リソースとズラし方の掛け合わせです。その組み合わせによって、コンテンツを多様に発展させることができます。
自社リソースとは、商品や自社サイト、ソーシャルメディア、さらには組織、制度、システム、オフィス、人的資源、福利厚生など社内のあらゆるリソースを指します。
▼社内リソース例 組織、部署、役職、社長、社員、社内イベント 自社サイト、採用サイト、公式Twitter、公式note 自社ビル、オフィス、店舗、キャラクター 福利厚生、研修、社内制度、社内報、イントラ 自社商品/サービス、技術、自社プロジェクト、自社調査 など |
そして「ズラし方」はさまざまですが、今回は10種類に分類しました。What(何を)、Who(誰が)、Where(どこで)、When(いつ)、How(どのように)の4W1Hに分けてみました。
既存のリソースを見直してズラすとき、社内外のステークホルダーが抱く「身近な問題」も大切な着眼点です。ステークホルダーの課題解決のために動くことは、より良い関係づくりにつながりますし、結果として、企業のレピュテーション(評判)を向上させたり、他企業のお手本となる事例としてニュースになったりすることもあります。
何と何を掛け合わせれば、社内外にある課題の解決策となるのか。そして、世の中が反応してくれるような企画になるのか、柔軟な発想でコンテンツを開発していきましょう。
次からは、掛け合わせのアイデアを事例を交えながら、それぞれ解説していきます。
①「ルール」をズラす
例:社内制度 ×「ルール」をズラす
働く人が新しい情報やスキル、趣味に触れる時間をなかなかとれないという課題は、きっと多くの企業が抱えていると思います。あるゲーム会社では、注目のゲーム作品の発売日を、その新作ゲームを集中してプレイするための日とする「ゲーム休暇」を導入して話題になりました。
他の企業でも、既存の有休制度を見直し、その企業ならではのユニークな制度を導入することで従業員に寄り添うケースを目にする機会が増えています。そうした社内制度は、社内だけに留めずに社外に発信することで、就職/転職希望者からの関心も生み出します。
②「カタチ」をズラす
例:キャラクター ×「カタチ」をズラす
熊本県の人気キャラクター・くまモン。そのくまモンのチャームポイントでもある“赤いほっぺ”が突如無くなった「くまモンほっぺ紛失事件」を熊本県が展開しました。これは「おいしいものを食べるとほっぺが落ちる」という慣用句の通り、いつもと違う「ほっぺを落としたくまモン」を通じて、熊本県のおいしい赤い食べ物(トマト、スイカ、牛肉など)を知ってもらうキャンペーンでした。
このように、商品の形状やパッケージデザイン、ロゴ、キャラクターなど、これまでとは異なり、“一時的に”カタチを変更するアプローチです。いつもの見た目に変化があることで「なぜ?」と関心を持ってもらい、その背景にあるメッセージを伝えるという狙いです。
③「名称」をズラす
例:組織名 ×「名称」をズラす
沖縄県宮古島市は「観光資源課」をもじった名称の「観光“試練”課」を設置しました。同市で活発だった「トライアスロン」や「100km ワイドーマラソン大会」「脱出ゲーム」は、それぞれ別の課が担当していましたが、「“試練”を観光“資源”にすることでより多くの方々に宮古島を来訪してもらいたい」との想いから、”試練”をキーワードに観光振興に取り組む統括部署が設置され、“組織名変更”を対外的コミュニケーションに活用した事例です。
「名は体を表す」というように、(中身は大きく変わらなくても)取り組みに合わせてその呼び方を変えてみることで、企業や組織の思いを伝えたり、話題づくりに活用することもできます。
➃「役割」をズラす
例:自社物件(オフィス/ビル/店舗) ×「役割」をズラす
時計メーカーの事例では、街のシンボルになっている自社ビルの時計を、「時を休もう」というメッセージが書かれた布で隠しました。正しい時間を告げるという時計や時計メーカー本来の役割を変えるキャンペーンを展開。「働き方改革・時間の効率化」が問われる現代において、もっと時間を自由に感じ、より良い時間の過ごし方について考えるきっかけを提供したいというメッセージを伝えました。既存の時計を隠す行動を、時計メーカーが自ら行うことで世の中に考えるきっかけをつくった事例です。
社内リソースとして商品/サービスや従業員、組織が担っている「役割」を見直し、世の中にあわせて変えられることはないか、考えてみましょう。
⑤「立場」をズラす
例:研修制度 ×「立場」をズラす
「子育てや家事と仕事の両立について、社内の理解を深めたい」という課題に対し、ある企業では、若手社員が子育てをしている社員の自宅に出向き、子どものお迎えや夕食づくりなど家事や育児を体験する“立場を入れ替えた社内研修”を導入しているそうです。異なる立場を体験することで相互理解を深め、働きやすい環境づくりにつながっていきます。
立場が入れ替わったり、自分と異なる立場を経験したりすると、新しい気付きが得られたりするもの。社内研修や社内イベントでそうした視点を取り入れると、社内の意識の変化やチームワークにもつながります。さらに社外にも発信されると、世の中全体にも気付きを与えるきっかけになるかもしれません。
⑥「場所」をズラす
例:プラットフォーム ×「場所」をズラす
「場所」をズラす事例としてイメージしやすのは、コロナ禍で普及した「オンライン飲み会」「オンライン結婚式」などではないでしょうか。本来オンラインで実施するものをオフラインにしたり、屋外でやっていたものを屋内でやってみたり、といった、場所のズラし方です。
例えば、企業の商品/サービスの展開場所や情報発信の場を、いつもの場所からあえてズラすことで、より届きやすい情報になったり、既存の方法に対する新たな気付きや発見のきっかけになることもあります。
⑦「とき」をズラす
例:風物詩 ×「とき」をズラす
日本花き振興協議会(花き業界の9団体で構成)は、花き業界最大のイベントである「母の日」を1日だけでなく、5月の1ヶ月間を通じて、お母さんに感謝の気持ちを伝えようと呼びかけ、「母の月」として提案。これはコロナ禍における感染予防を考慮したものでした。
例えば、期間を伸ばしたり短くしたり、恒例の日や季節イベントを真逆の季節に実施するなど、「時期」や「時間軸」をズラすことで、新たなコミュニケーションが生まれることがあります。
⑧「使い方」をズラす
例:社内情報 ×「使い方」をズラす
ある水族館では、館内で起きたささやかなニュースをオープンから10年間分集めた「10年分のハッピーニュース展」を開催。「金魚の便秘なおる」や「スタッフのズボンのお尻破ける」といった従業員しか知らない“身内ネタ”を一般公開し、「ほっこりする」と話題を呼びました。一見対外的には価値がないように思える情報を活用することで、水族館を身近に感じてもらい、コミュニケーションに奏功した事例です。
既存の用途以外に使い道がない/使いづらいと思っていたものでも、新たな活路が見つかるかもしれません。さらに、ソーシャルメディアの生活者の投稿をヒントに、思いもよらない使い方からコミュニケーションに活用できる可能性もあります。
⑨「伝え方」をズラす
例:採用ツール(不採用通知)×「伝え方」をズラす
せっかく企業に興味を持ってくれた就活生に不採用通知を送らなければいけないとき、その時点で関係が途切れてしまうことはとても残念なことですよね。ある食品メーカーでは、就職面接に応募した学生への「不採用通知」として、「自社製品を詰めたギフトボックス」を送付。一般的には合否の結果のみが記載されている場合が多い不採用通知を、自社商品の贈り物をする伝え方に変えています。企業理念の「感謝」の思いを具現化し、就活生と今後もより良い関係を築くきっかけとなる事例です。
伝え方の手段・技法に、企業の思いを込めてひと工夫加えることで、与える印象ががらりと変わります。
⑩「範囲」をズラす
例:社内研修 × 「範囲」をズラす
社内研修は本来自社従業員のためのものです。しかし昨今、自社の従業員向け研修プログラム(例:ダイバーシティ研修、プログラミング研修)を社外向けに無償提供したり、研修資料をオープンソース化したりするなど、社内研修を社外展開する企業が増えています。
本来の情報提供先だけではなく、届ける範囲・相手を変えることで活動が広がり、同じ意思を持つ企業とも連携することで、社会を変えていくことにもつながるのではないでしょうか。
今回はすでにある自社のリソースを”ちょいズラし”で活用する発想術についてご紹介しました。自社にとってすでに存在しているモノ・コトでも4W1Hの視点で見方を変えることで、ステークホルダーにとってバリューのある活動・発信になる可能性があるのです。
出典:https://note.prx-studio-q.com/n/nb5e1fc7e1857
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
■ご参考
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