世界が注目する台湾のAI動向。PR視点で「AI EXPO Taiwan 2026」をレポート

生成AIの進化・普及により、企業の価値は「自社がどんなAI技術を持っているか」から「社外パートナーを含めてどんなプロダクトエコシステムとAIがつながっているか」へと移行しつつあります。その中で、今改めて注目すべき存在が台湾です。

世界で突出した半導体集積地として半導体エコシステムの中心にいる台湾は近年、半導体と関係が深いAI領域においても存在感を高めています。特に台湾は半導体と同様にAIでも官民を挙げた大規模プロジェクトを推進しており、普及や次世代の教育も含めて、最終的には開発から実装までを一気通貫で回せる産業構造の確立を目指しています。

本レポートでは、2026年3月25日~27日に台北で開催された「AI EXPO Taiwan 2026」の視察を通じて、台湾AIエコシステムの成り立ちや活用可能性などを整理していきます。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ今、台湾なのか
  2. 2.「AI EXPO Taiwan 2026」の主催者DIGITIMESの異色性
  3. 3.PR視点で見る日本とは違う「AI EXPO Taiwan 2026」の特徴
  4. 4.「AI EXPO Taiwan 2026」に出展した日本企業の感想
  5. 5.PRにもつながる「つながることへの寛容さ」を示すEXPO

なぜ今、台湾なのか



「シンギュラリティ前夜」をテーマとして、AIと量子科学、限界計算力の分野でそれぞれの世界を代表するプロフェッショナル同士のディスカッションの様子。

台湾は、2023年に「台湾AI行動計画2.0(2023~2026年)」を制定し、「半導体の島(シリコンアイランド)」から「AIの島(AIアイランド)」へと進化させる動きを活発化させています。この行動計画では、AIに関する人材育成、技術開発、産業振興、倫理・法規制の整備を推進していくことを明記しています。

また、台湾には世界的な企業であるNVIDIAやAppleなどのAI向けの最先端半導体チップ製造を担うTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)があり、今や世界でも独占的な地位にあります。それらの半導体の強みを起点に、ハードウェア、ソフトウェア、最終製品までが地理的にも産業的にも密接に結びついており、この基盤を基にAIでも新技術の社会実装までを実現しています。さらに、グローバル企業との連携も緊密で、AIチップ、エッジデバイス、クラウド連携といった領域が有機的につながり、AIの実装ハブとして機能しているのが、現在の台湾なのです。

「AI EXPO Taiwan 2026」の主催者DIGITIMESの異色性


「AI EXPO Taiwan」は2022年に第1回が開催されて以降毎年開催され、今年で5回目となる展示会です。AI技術の産業応用を促進し、企業・研究機関の連携を通じてAIエコシステムの構築と国際的なビジネス創出を目的として開催されています。

「AI EXPO Taiwan」は、台湾のITメディア企業DIGITIMESが主催し、AI関連団体や政府機関などが共催しています。

DIGITIMESは、ニュース配信機能を中心にラジオやYouTubeに至るまでマルチメディア事業を展開している企業で、テクノロジー産業のリサーチ/シンクタンク機能とセミナー・イベント機能を有し、世界中に顧客が存在しています。

1998年に設立された比較的若い企業ですが、創業者がメディア業界ではなく、台湾のIT・通信産業のトレンド分析を担う資訊工業策進会(III)傘下の産業情報研究所(MIC)の元所長で、さらに設立のための出資者には、前述のTSMCや台湾の電子機器メーカーのパイオニアであるACERの創業者など、台湾の半導体・電子部品業界を代表するメンバーが名を連ねています。

もともとは、台湾の情報通信(ICT)、電子部品、半導体、新興テクノロジーなどテクノロジー産業のサプライチェーンに深くフォーカスした地元メディアでしたが、現在は世界中から有料のユーザーを集め、産業リサーチレポートも世界中から注文が入る企業として発展しています。

PR視点で見る日本とは違う「AI EXPO Taiwan 2026」の特徴


日本のAI関連のEXPOと比べると会場は大きくないと感じましたが、3万人超の参加者を集めています。人口比で考えても、非常に話題性のあるEXPOだと感じました。

また、推進中の「台湾AI行動計画2.0」に沿った構成になっていることも分かりました。その象徴として、台湾副総統の蕭美琴(シャオ・メイチン)氏が視察・あいさつにも来ていました。

また、普及や教育にも寄与するAI領域で活躍するインフルエンサーを選定するアワードがEXPO内で開催されていたことからも、単純な商談の場ではない役割を担っていることが分かります。


台湾においてAI領域で活躍するインフルエンサーを決定するアワードのノミネートボード。
アカデミアやビジネス領域の専門家はもちろん、AIの実用的なHOWTOTIPSなどを展開するソーシャルメディアで人気のアカウントやクリエイターなどが展示されていた。

EXPO全体として、客層もビジネスパーソンだけではなく、老若男女を問わずさまざまな人が参加しており、台湾の関心度とリテラシーの高さがうかがえました。営業やセールス的な要素もありつつ、今後AI活用をどのように捉えるべきかという講演が多く、思想的な言及が多い印象も受けました。


EXPOの目玉である基調講演、特別講演の様子。各テーマごとに第一線で活躍する登壇者を目当てに各テーマとも立見が出るほど盛況だった。

なお、韓国で開催されている「AI EXPO Korea」とも連携し、世界中にファンがいるボーカルグループ「2AM」の イム・スロン氏がゲストとして登壇していました。クリエイティブデレクターとしてAIテクノロジーにも造詣が深いイム氏は、韓国のエンタメ業界における積極的なAI活用の実情を解説しつつ、「エンタメの本質が人間の感情である以上、AIがアーティストに取って代わることはない」「AIは、アーティストに取って代わることはないが、アーティストの能力を拡張してくれる強力なパートナーになる」など独自の視点を交えながらAI活用に関する考えを現地記者に向けて発信していました。

また、地政学的事情も垣間見られるAI×サイバーセキュリティー領域での展示の多さは目を見張るものがあり、出展者の意見として「クラウドが絶対的に安全とは言えず、物理的なシステム構築も不可欠である」というコメントもありました。

「AI EXPO Taiwan 2026」に出展した日本企業の感想



EXPOエントランスに設置されたウエルカムボード

日本から出展していたGitHouse社長の助飛羅氏に話を聞くと、EXPO参加者については全体的にテクノロジーやAIに対するリテラシーが高い印象があり、日本企業の多くが現場からのボトムアップで導入の検討を行うのに対し、台湾では決裁権限者が判断し、実際の導入が可能かどうかを現場に検証していくプロセスが多いとのこと。さらに、台湾は海外へ留学する人が多いため、母国語ではない英語や日本語ができる人も多く言葉の壁はどうにかなるが、文化の違いに戸惑うこともあるとのことでした。

台湾は完成された市場ではなく、共に価値を創るパートナーが集まる場として、その特性を理解し、段階的に関係性を深めていく重要性についても言及していました。

PRにもつながる「つながることへの寛容さ」を示すEXPO


日本に似た特徴を持つ台湾ですが、EXPOに多くのステークホルダーが一堂に会して、つながっていくことに主眼を置いている点は魅力的です。多様な立場を受けい入れて、ビジネスという視点以前に思想としてAI を正しい方向に進めようとしていることも複数の講演を聞いて感じましたし、そうすることで、産業発展の基盤となるリテラシーの底上げを図っていく意思を感じました。

AI領域は単なる技術競争ではなく、社外パートナーを含めて多彩なリレーションに基づくエコシステム競争へと進化させなければならないという戦略であり、多くのステークホルダーと良好な関係を構築しながら重要なポジションを築いていこうとする台湾の姿勢は、PRの重要性を改めて感じさせるものでもありました。


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※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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PRX編集部
PRX編集部
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