「OTEMOTO」編集長インタビュー “情報が残る時代”の価値観発信「怖くもあるが大事」
電通PRコンサルティングでは、各著名メディアの編集長やプロデューサーにメディアとしての関心事や興味、課題感、問題意識、また新たに取り組まれていることなどをお伺いし、広報担当者のメディアリテラシー力を高めることを目指しています。
今回は、「OTEMOTO」創刊編集長の小林 明子氏にインタビューしました。
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小林 明子 元BuzzFeed Japan編集長。1977年岡山県生まれ。毎日新聞社に入社、結婚・出産後、フリーライターを経て、朝日新聞出版に入社。AERAの記者として「ワークインライフ」をモットーに、ご自身の生活の中にもある働き方や子育てなどのテーマを主に取材。2016年BuzzFeed Japan入社後、「国際女性デー」「#metoo」「国際ガールズデー」「Sustainable」など、さまざまな特集企画を実施。夫が単身赴任の中、2児(当時10歳、4歳)を育てながら「18時に帰るニュースデスク」にも挑戦。ニュース編集長を経て、2020年BuzzFeed Japan編集長就任。「社会課題とビジネスの接点や矛盾にも向き合いつつ、情報を生み出すことに挑戦したい」という強い思いのもと、企業理念と事業内容に引かれ、2022年にハリズリー入社。同年8月、ウェブメディア「 OTEMOTO [オ・テモト] 」を創刊。 |
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企業メディアから“ニュース”を発信 OTEMOTOが掲げる理念
―編集長視点で「OTEMOTO」の媒体紹介をお願いします!
「OTEMOTO」は、2022年8月10日に創刊した、株式会社ハリズリーが運営しているメディアです。オウンドメディア/オウンドコンテンツではなく、社会性のある記事を掲載し、Yahoo!やSmartNewsなどにも配信しています。
カテゴリーは「つくる」(=ものづくり)、「つなげる」(=ダイバーシティ、サステナビリティー、次世代につなげる、人と人がつながる)、「はぐくむ」(=子育て)の3つがあります。
関連会社である土屋鞄が「長く愛される価値をつくる」を提唱しているように、“モノを長く大事に使う”や“職人の技のものづくり”には重きを置いています。ランドセル事業でも「子どもたちの豊かな成長を願って」という思いで製作していることから、子どもたちの成長を応援する意味を込めて、子育てに関連する記事を掲載しています。
また、大きな理念としては、①「人もモノも大切にされる」(=人権、サステナビリティー)、②「自分らしさを自由に表現できる」(=多様性、クリエーティビティー)の2つを設定しています。これは私たちが50年先に目指したい社会を表現していて、この範囲内で自由に記事を制作しているのが「OTEMOTO」の特徴です。
―BuzzFeed時代との違いを教えてください。
BuzzFeed時代から得意としてきたニュース系の記事はOTEMOTOでも人気があります。OTEMOTOでは、ものづくりや子育ての要素を入れていくことを意識しています。
例えば、3月の「国際女性デー」に関しても、ものづくりを通して多様な価値観を育んでいる人や性の概念を刷新することを製品を通して実現している人を取材するようになりました。(例:経営は「なで肩」の自然体で。奄美の黒糖焼酎を世界と未来につなぐ4代目 )
情報が残る時代…スマホに届くものが “資産”に
―自社ブランド(土屋鞄など)があるからこその強みを教えてください。
「土屋鞄」への信頼を感じる機会は多いです。ものづくりに関連する取材において、「土屋鞄の~」と取材依頼をすることで、安心して取材を受けていただけます。
また、グループ企業のジュエリーブランドでは、ジェンダーフリーのラインの販売や、成人ダイバーが採集した海底ダイヤモンド(児童労働の抑止)、人工ダイヤモンド(カーボンニュートラル)の活用など、ブランドのビジネス自体でサステナブルを推進しているため、誇りを持って記事制作に取り組めるところもあります。
― “価値観”や“考え方”を発信する上で気を付けていることはありますか。
「いつも視点は、手もとから」というコピーのように、情報を手元のスマートフォンから収集することも多いと思いますが、情報は、正しくても、正しくなくても永遠にネット上に残ってしまいます。
これは、怖くもありますが、大事なことでもあります。「この情報から感じたことって10年後・30年後はどうなるんだろう」と想像したとき、手元に流れている情報は全て資産になると考えています。
あまり難しく考えず、手元に情報を届け、明日の行動をひとつ変えたり、誰かとシェアしてもらったり、そんなことを意識しています。
取材前に広報担当のSNSをチェック「より熱い情報に触れられる」
―記事をより多くの読者に届ける上で工夫していることを教えてください。
企業自ら情報発信できる時代だからこそ、メディアの存在意義をよく考えていますが、メディアとしては“読者ファースト”の情報を発信していく必要があります。
例えば、豆腐メーカーを取材した記事では見出しに当初、“若者の豆腐離れ”という表現を使用していたのですが、若者の豆腐離れを懸念するのはメーカー視点であり、読者には届きづらいです。代わりに「豆腐を食べるのが面倒くさい」としたらよく読まれました。
また、職人技を取り上げる場合も、どんな仕事をしている人も絶対にぶち当たりそうな壁や気付きを1つの柱として記事を制作し、明日の仕事に役立つと思ってもらえるように工夫しています。
―最後に、取材先の選定方法と広報担当のみなさまに伝えたいことをお願いします!
取材先の選定基準は、①「新しいことに挑戦しているか」、②「新たなニュースになりそうか」、③「取材のタイミング」です。
広報担当の方の事業理解やそれを伝えようとする熱量はいつもリスペクトしています。
取材前のリサーチなどで広報の方が担当しているnoteやSNSをよく拝見するのですが、コーポレートサイトだけでは収集できない、より生っぽい、より熱い情報に触れることができるので参考にしています。
インタビュー担当:電通PRC 山下奈々
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