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テレビ報道が注目する社会課題とは?【日本テレビ報道局 大野伸さんに聞く】

マスメディアだけでなく、個々人が日々情報発信を行い「1億総メディア時代」と呼ばれる現代。従来の「4マス」と呼ばれるメディアに位置付けられる「テレビ報道」の在り方はどのように変化しているのでしょうか?

電通PRコンサルティングでは、2023年1月に「情報洪水時代の歩き方 ―メディアを賢く消費する『情報リテラシー』」(DO BOOKS)を上梓(じょうし)された、日本テレビ報道局経済部 担当部次長兼解説委員の大野伸さんをお招きし、「情報洪水時代にテレビニュース報道はどう変化したのか?〜企業事件報道を事例に」と題した社内勉強会を開催。企業の有事を巡る取材報道事例から危機管理に関するお話、そして、これまでとこれからのテレビの役割等について、ご紹介頂きました。

今回の電通PRコンサルティングWebマガジン「PRX」では、その勉強会の中から、「テレビニュースが注目する『これからの社会課題』」をはじめとした、一部内容を抜粋してご紹介します。

日本テレビ放送「news every.」の元統括プロデューサーとして、日々情報が目まぐるしく変化するSNS時代にテレビ報道の最前線で活躍されてきた大野伸さんならではの視点に触れて、日常の企業経営や企業広報活動にぜひお役立てください。

なお、聞き手は電通PRコンサルティング 統合コミュニケーション局ソリューションデザイン部 部長の今井慎之助が務めました。




〈プロフィール〉

大野 伸 日本テレビ放送網(株)報道局経済部 担当部次長 兼 解説委員          
「news every.」元統括プロデューサー


早稲田大学パブリックサービス研究所研究員、早稲田塾講師、日本メディア学会会員、sweet heart project(障がい者自立支援プロジェクト)アドバイザー。1996年に日本テレビ放送網入社。報道局に配属になる。2008年から経済部デスク兼ニュース解説者として「news every.」「スッキリ」「NEWS ZERO」などでスタジオ解説、ラジオ日本の朝の番組「岩瀬惠子のスマートNEWS」での解説など。2013年に営業局へ異動。2016年より報道局にて「Oha!4 NEWS LIVE」プロデューサー、2018年12月から2022年5月まで「news every.」統括プロデューサーを務める。早稲田大学大学院政治経済学術院公共経営研究科修了(公共経営修士)。



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目次[非表示]

  1. 1.デジタルの普及とともに「マルチタスク化」する報道の現場
  2. 2.企業が伝えたい活動を、視聴者目線に置き換えて切り口を考えてみよう
  3. 3.世代を超えて「リンクしていくもの」を生み出していくのがテレビの役割
  4. 4.報道局が注目する「これからの社会課題」とは?


デジタルの普及とともに「マルチタスク化」する報道の現場


今井:著書でも書かれていますが、「情報洪水時代」といわれる昨今、メディアに求められることにも多様化の動きはあるのでしょうか?

大野:この働き方改革の中で十分ケアしつつではありますが、正直、仕事量が増えているとは思います(笑)。まず求められているのが「速報」です。ネット時代になる前から速報は重要でしたが、当時はテレビ画面の上に速報の文字を出すという形だけでした。しかし今はスマホで各社が配信した記事を見ることができます。ですので、テレビ局としても「まずはデジタルで見てもらうこと」を考えています。デジタルと地上波というのは同じ目線で見るべき、走っていくべきという認識です。

また、速報とともに重要になってくるのが、「経済ニュース」における「民放的なテーマの深掘り」です。テレビのニュースで求められているもののひとつは、「世間で話題になるもの」だと考えているからです。

このようにテレビとデジタルの両立、そして速報と深掘りをしていくテーマの設定、こういうことを含めて、テレビニュースの活動自身がマルチタスク化しているなという印象があります。


企業が伝えたい活動を、視聴者目線に置き換えて切り口を考えてみよう


今井:その「民放的な」というところについてです。ここからは、当社が実施した「ソーシャルイシュー100調査」をご覧いただきながら、お話を進めてまいります。




今井:こちらは世の中にあるさまざまなソーシャルイシュー(社会課題)を抽出して、生活者の解決優先度と、生活者が企業に解決を求めるイシューをランキング化したものです。これらを見ると物価や老後問題、労働環境といった自身と距離の近いテーマが上位に来ています。一方、日々クライアントから相談されるPR会社という立場にいると、企業として能動的に発信したいテーマとのズレを感じることがあります。例えばSDGs関連の情報などがその典型でしょうか。このようなズレについて、大野さんはどのようにお考えですか?

大野:私はテレビ局の人間として、「視聴者が見てよかったなと思えるもの」を報道するという視点がとても大切だと考えています。値上げとか値下げとか、直結してお金の問題につながる内容も、もちろん見てよかったとなるでしょう。

一方で、SDGsのような内容に関心がないのかといえば、そうでもないと思うんです。もし地球環境保全のために何兆円規模の予算が必要になってくるなど大きなテーマとして取り上げようとすると、視聴者にとって関心事になりにくいかもしれません。しかし、例えばあるファストファッションの企業が「自分の着なくなった洋服を持って行くと値引きになる」というテーマにしてみると、それは一人一人の消費者にとってもお得な情報であり、環境にも優しくなる。そういう社会貢献もあると思うんですよ。

だからこれは関心が「ある」「ない」で分けるのではなく、企業の皆さんが能動的に伝えたいことが、どのようにすれば消費者目線になっていくのかを考えることが重要です。同じ社会貢献活動、社会問題でもあっても、切り口を変えてみる、事例を分かりやすくしてみるといった工夫をして伝えていければ、十分成立するものだと考えています。



世代を超えて「リンクしていくもの」を生み出していくのがテレビの役割


今井:これも同じ調査結果からになりますが、世代別に解決優先度が高いイシューをランキング化してみました。



左側が60代、右側が10〜20代の解決優先度が高いイシューになります。60代はどちらかというと「自分の身の回りのこと」が多く、10〜20代の若者はもう少し「社会が良くなるための視点」が強いようです。テレビは一般的にやや中高年に視聴者が多いという形になっていますが、このランキング内容と、実際に報道しやすい内容、しづらい内容など、関連するところはあるのでしょうか?

大野:前提として、私はこの「問題意識」って本当は年代での違いはないと思っています。確かに結果だけ見ると、今井さんのおっしゃった通りと感じますが、中高年の方は経験を積んでいるのでどんどん細かいことが見えてくるし、具体例が必死に、切実になっていく。だから、目先のことを論じているように見えてしまう。調査となると、より現実に近い回答をしてしまうんじゃないでしょうか。逆に、若い人は社会に大きな不安を持っているんじゃないかと思うんです。だから大きな答えになる。

私は、最近まで「news every.」の統括プロデューサーだったのですが、コロナ禍でそこが交わったと感じた時がありました。藤井貴彦キャスターが番組の終わりにいろいろな呼びかけをしたんです。「今日の自粛が誰かの故郷を救います」「医療従事者にありがとうを伝えましょう」など、放送ではたった15秒。この言葉が、これまでテレビを見ていた世代にももちろん浸透していくんだけれども、さらに若い人が「この言葉は刺さった」といって、どんどんSNSで拡散してくれたんですよね。それによって藤井キャスターの言葉を聞きたいと思ってテレビを見に来てくれた。このことは「人に寄り添おうという当たり前の目線」が中高年だけでなく、若い人にも伝わった事例だと思うんです。

このように、調査では見えない「世代を超えてリンクしていく」というものが必ずある。それがテレビが果たすべき役割であり、チカラだと思っています。



報道局が注目する「これからの社会課題」とは?


今井:最後にズバリなのですが、今回のトークテーマのひとつでもある「テレビニュースが注目するこれからの社会課題」についてお聞かせください。

大野:これはもう「若い人が生きやすくなる」です。「news every.」は「みんなが生きやすくなる」というテーマを掲げているのですが、この「みんな」の中でも特に若い人、やはりその世代が元気になれる社会をつくっていかないと、いろいろとある問題は解決していけないと思うんですよね。若い人が夢を持って、日本に誇りを持って活動をしていける、そのための報道をしていくというのが、私たちの大きな役割だろうなと感じています。


※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。


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PRX編集部
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