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【脱!思いつきアイデア】効果的PRアイデア着想の起点となる「イシュー」発見法


日々さまざまなPR事例を見聞きしていると、「その手があったか…!」と思わず膝を打つような、「世の中の困り事を解決するアイデア」や、これまでの意識や行動ががらりと変わってしまうような、「多くの人にシェアされ、社会に広がる『新常識』を生み出すアイデア」に出合うことがあります。

こうしたアイデアは、「単なる思い付き」ではなかなかたどりつけません。

私たちも、アイデアを出し続けることに日々苦悩しています。一方で、世界中の事例を見ていく中で、優れたアイデアがどうやって生まれているのか、その構造を分解・分析していくと、ある共通点が見えてきます。

それは、“よいアイデア”とは、“「なるほど!」なイシュー(問題)”から生まれているということ。

「なるほど!」なイシューとは、まだ世の中に大きく表出していない“発見感”がありながらも、生活者が抱える問題として、「言われてみれば確かに!なるほど!」と“共感”できるイシューだと、私たちは考えています。

そうしたイシューが設定された上で、それを解決するためのアイデアになっているかどうか、ということがポイントです。

今回は、特に広報/PRの仕事を最近始めた人や、広報/PRの仕事をこれから志す人に向けて、“よいアイデア”をつくる上で最初の一歩にあたる、“よいイシュー”を設定するコツについてご紹介します。




目次[非表示]

  1. 1.問題→課題→アイデアの3ステップ
  2. 2.【事例】ハウス食品「レシピ語超解説辞典」
  3. 3.「なるほど!イシュー」設定のための3カ条
    1. 3.1.①新奇性
    2. 3.2.②共感性
    3. 3.3.③相応性
  4. 4.よいアイデアは、よいイシューから
  5. 5.電通PRC‐PRX事務局からのご案内




問題→課題→アイデアの3ステップ



まず、優れた事例の多くは、下図のような構造に整理できます。





世の中からなくしたい、人々の困り事など=イシュー(問題)が起点となり、次に、そのイシューを改善・解消するために取り組むべき課題があります。最後に、課題を解決するために具体的に何ができるか、その解決策として「アイデア」があるのです。

この構造を意識することで、単なる思い付きではなく、誰の、どんなイシューを解決するためのものなのか、ということを念頭に置きながらアイデアを考えることができます。

必ずしもイシューから考えなければならない、ということではなく、そのアイデアが何を解決するものなのか?が明確になっていることが重要です。




【事例】ハウス食品「レシピ語超解説辞典」



例えば、ハウス食品株式会社は新型コロナウイルス感染拡大中の2021年、料理のレシピに載っている言葉を解説する「レシピ語超解説辞典」を作り、多くの生活者から共感を得ました。





このアイデアを分解してみると、下図のようになります。






同社は、コロナ禍で料理が苦手な人も自炊する機会が増えている状況に着目。「料理における負担を少しでも減らす」というミッションを掲げました。

ミッションを達成するためのアイデアを考えるため、料理初心者や苦手な人が抱える問題を、下記のように「なぜ?」を深掘りし、仮説を立てていきました。


・料理にはレシピがあるのに、料理が苦手な人がいる


↓ なぜ?

・苦手な人や初心者は、レシピ通りに作ることが難しい

↓ なぜ?

【仮説】
・レシピの説明は、基本的な手順がわかっている前提で書かれている問題
・レシピに記載された料理用語の意味が分からない問題


この仮説を基に、ソーシャルメディアで声を拾っていくと、


・「飴色ってどんな色?キツネ色とはどう違うの?」
・「しんなりするまでってどういう状態?」
・「ひとつまみってどのぐらい?」

といったレシピの言い回しに対する疑問の声が実際に存在し、「レシピには初心者には分かりにくい独特の言い回しや表現がある問題」があることが分かりました。

まさに、まだ世の中に大きく表出していないけれど、「言われてみれば確かに!なるほど!」と共感し得る「なるほど!イシュー」です。

そして、このイシューを解決するためにやらなければならないことを考え、「レシピを初心者でも解読できるようにする」という課題を設定をしました。

こうして生まれたアイデアが、「レシピ語超解説辞典」です。




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イシューと、それを踏まえた課題がしっかりと設定できていれば、その時点でアイデアはほぼ出来上がっているといえます。イシューを見つける力は、アイデアを生み出すための武器になるのです。




「なるほど!イシュー」設定のための3カ条



では、こうしたイシューを見つけるためには、どうすればいいのでしょうか。重視したいポイントは①新奇性 ②共感性③相応性 の3つです。





①新奇性

まだメディアで大きく取り上げられていない、世の中であまり認知されていないこと。または、一部の界隈(かいわい)では関心が高いが、一般的には珍しいもの。メディアに「“New”s」と思ってもらい、広く社会に届けるためには欠かせない要素です。


②共感性

意識していなかったことでも、言われてみれば「確かに!」「そうそう!それが言いたかった!それ思ってた!」など、「解決する理由がある」と納得できること。共感性が高い話題は、多くの人が自分ゴト化しやすく、シェアしたくなります。UGC(ユーザーが生み出すコンテンツ)にもつながりやすく、拡散されやすくなることは、重要なポイントです。


③相応性

設定したイシュー自体が、企業/ブランドに相応しいサイズ感かどうか、という観点。例えば「海洋汚染」「いじめ問題」「貧困」といった抽象度が比較的高いテーマにすると、企業/ブランドによっては解決することが難しく、イシューにマッチしたアイデアを出すことが困難になります。逆に、イシュー設定が小さ過ぎても、社会的なインパクトに欠けてしまい、情報が広く伝わりにくくなります。


3カ条を満たすイシュー発掘の糸口の一つが、ソーシャルメディア上のn=1の声です。

生活者が抱えるイシューは本来、心の中にあって見えないため、アンケート調査の結果や報道分析、有識者へのヒアリング、そして自分自身や周囲の気付きや疑問などから仮説を立てることが多かったと思います。

しかし、誰でも気軽に本音を吐露できるようになった今、ソーシャルメディアは生活者のイシューの兆しとなる声があふれている、情報の宝庫といえます。

こうしたソーシャルメディアにあるn=1の声から、世の中の関心・問題を見つける方法の一つとして、私たちは「ソーシャルハンティング」を実践しています。



  「n=1の声から生活者のペイン/ゲインを刈り取る~ソーシャルハンティング 企業やブランドが信頼を得るためには、「生活者の課題=イシュー」に向き合い、これを解決していくことが重要ですが、そのためにはまず、ブランドが取り組むべきイシューを探さなければなりません。本記事では、年間250件以上の分析を行うハンターの私が、どのようにソーシャルメディア上のインサイトを見付けているのか、生活者のインサイトが表出しやすい「鬱憤」に着目したアプローチとは?について紹介します。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング




よいアイデアは、よいイシューから



「イシュー設定→課題設定→アイデア」という構造を理解することは、PRプランニングの基本であり、よいアイデアを生み出すための初めの一歩といえます。

自分が「良い!」と思ったプランニングについて、この構造を活用して事例研究を行うと、そのアイデアがなぜ素晴らしいと感じたのか、深い考察を得ることにも役立つと思います。また、事例やアイデアを人に説明することが苦手という人も、この構造を基に説明をすると伝わりやすくなるはずです。

思いつきでなく、世の中のイシューを可視化することで生まれたアイデアは、世の中の“新常識”になったり、多くの生活者に気付きを与え、行動に変化を起こすきっかけとなり得ます。まさにPRの本質である、「世の中とのよい関係づくり」につながります。







今回は、よいアイデアを生むための「なるほど!イシュー」の見つけ方をご紹介しました。

PRX Studio Qでは、ソーシャルメディアを活用した企画など、企業やブランドのコミュニケーション設計を行っています。もし興味がございましたら、お気軽にご相談ください。




出典: https://note.prx-studio-q.com/n/n656918ad8290
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。




電通PRC‐PRX事務局からのご案内


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広報/PRによる、お客様の課題解決。近年では、企業ブランド、事業ブランド、商品ブランドなどの「話題づくり」はもちろん、「価値づくり」による課題解決を期待されることも少なりありません。電通PRコンサルティングでは、「PR X:全てのビジネスにPRの技術を」という考えの元、企業価値向上/事業価値向上/商品価値向上に貢献できる「パートナープログラム」をご用意しました。お客様の課題や戦略に応じて、最適なチームを編成し、コンサルティング、プランニングサポート、さらには効果的なソリューションの提供、効果測定とKPIマネジメントまで、一元的にご提供。お客様の企業成長に貢献してまいります。


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❷当社プランニングチーム「PRX Studio Q」関連資料のご案内

■PR文脈開発の糸口を見つける「鬱憤構文」ワークショップのご案内
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  「ファクトブック制作・活用術」徹底解説|PR X マガジン|電通PRコンサルティング 商品や企業の取り組みについて、メディアに新しい情報を簡潔に伝える「プレスリリース」に対し、「ファクトブック」は、プレスリリースや企業活動・商品特徴を補完するファクト(事実)を多面的にまとめた資料を指します。「PRX Stusio Q」が、ファクトブックを作ることで得られるメリットに加え、“読まれる&使える”ファクトブックを作るためのポイント、その使い倒し方について解説します。 ファクトブックとは ファクトブックの基本的な活用法(対メディア/対メディア以外) メディアの方に重宝されるファクトブック ファクトブックをまとめる4つのポイント 当社でのファクトブック制作に関して 「PRX Studio Q」について 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング
  企業価値をあげる周年プランニング「3つのシンカ」|PR X マガジン|電通PRコンサルティング どの企業やブランドにも定期的にやってくる「周年」。私たちは、これを企業や商品ブランド価値向上のチャンスであると考えました。企業やブランドが抱える課題の解決に向けて、周年を契機に、「誰と」「どのような関係性」を構築するのか?そして、その内容はどのように考えるべきなのか?企業に新しい成長をもたらす「周年」企画の「3つのシンカ」について、当社組織横断型プランニング専門チーム「PRX Studio Q」がご紹介します。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング










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その熱量を、世界を動かす力に変える。電通PRコンサルティングのプランニング専門部署から生まれた組織横断型チーム「PRX Studio Q」。Qが約束するのは、これまでのPR会社の枠を越えた「PRトランスフォーメーション」。経営・R&D・マーケティングやブランディング・人事や採用など、あらゆる領域に世の中視点を取り入れ、手段を問わずプロジェクトをデザインすることでビジネスに新しい成長をもたらします。https://prx-studio-q.com/ ーーーーーーー その熱量を、世界を動かす力に変える。 いつだって、世界を変えてきたのは、熱い想いをもった人たちだ。/私たちは、その熱を、社会に届けきるためにいる。/自信があるのに、広まらない。/良いことをしているのに、届かない。/でも、この世界を少しでもよくしたいと心から思う。/そんな人と同じ目線で、ともに挑戦していきたい。/その熱は、人々の感情を動かし、やがて大きなうねりとなって、/人や、企業や、社会を前に進めていくはずだから。/「Q」は、物理学で熱量を表す記号。/いつも熱い想いのそばに。/PRX Studio Q

 


 

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