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【考察:株主総会2023】「非財務価値」説明ストーリーのミスマッチを考える

#あわや取締役再選が否決

#非財務価値を語る説明ストーリーとは



目次[非表示]

  1. 1.2023年3月の株主総会にて
  2. 2.反対票を投じるきっかけ
  3. 3.「非財務価値」説明ストーリーの重要性
  4. 4.電通PRC‐PRX事務局からのご案内





2023年3月の株主総会にて



今年2023年3月の株主総会において、「非財務価値」の説明ストーリーの重要性を実証する出来事がありました。日本を代表するグローバル企業において、30年近くトップに君臨しているCEOの取締役選任議案の賛成率が50.59%にとどまり、あわや否決という事態となったのです。

その理由として、同社の取締役候補が全員男性で多様性に欠けるとして、米国の議決権行使助言会社が反対を推奨した影響があるとの報道もありました。

ちなみに、同社の個人持株比率は46.6%。そのうち約半分が議決権のない自己株式であるため、実質的には金融機関37%、外国人23%、個人30%程度の割合。つまり、広義の機関投資家が60%を占めており、大きな影響力を持っていたということになります。


今回は、こうした事案を契機に、今後の株主総会に向けて、企業の「非財務価値」を語る「説明ストーリー」の重要性や注意点についてご紹介したいと思います。







反対票を投じるきっかけ



昨今、「社外取締役の数」「女性取締役の有無」や「議決権行使助言会社の推奨」など、表層的な基準で賛否を判断する機関投資家もいるため、それを覆すためにも、「ガバナンス」や「ダイバーシティ&インクルージョン」「人的資本経営」をはじめとした会社の実質的な非財務価値を理解してもらう必要が高まっています


一方、同社の「有価証券報告書」では、いち早く、直近版で新たに「気候変動対応」や「人的資本」に関する情報を網羅しておりました。しかし、反対票を投じた機関投資家たちが懸念するような、「後継者計画」や「女性経営者登用計画」に関する記載はなく、人的資本も「同社の競争力の源泉である技術力にどうつながっているか」については読み取りにくい内容でした。


つまり、残念ながら、せっかく迅速に開示した「非財務情報」が、株主・投資家が求める企業の持続的な成長力に結び付く「説明ストーリー」とミスマッチがあったのでは?と、言えるかもしれません。



(ご参考)


内閣官房(非財務情報可視化研究会)「人的資本可視化指針」資料から抜粋
同研究会でも、開示された「非財務情報」を企業の経営戦略、人材戦略に関連付けて説明することの重要性と共に、「投資家」との対話、フィードバックによる磨き上げといった、循環的な取り組みの必要性を示しています。(電通PRC‐PRX事務局)





「非財務価値」説明ストーリーの重要性



上記でご紹介した通り、今年(2023年)3月に開催された、ある「株主総会」事例を見るに、今後、こうした「非財務価値」説明ストーリー発信側の思いと受け手の期待とのミスマッチが、企業経営に強い影響を与える可能性が高まってくるものと、思われます。


特に、東京証券取引所が株価水準改善の具体策開示を求めている、「株価純資産倍率(PBR)」1倍割れの企業については、「配当増」や「自社株買い」といったテクニカルな手法だけでではなく、「賃上げを筆頭とした、人的資本への投資が、中長期的にどう業績の成長につながるか」について、株主・投資家の支持を得られるような、「ストーリーの設計」が強く求められているのです。


今年も5〜6月に、数多くの企業が「株主総会」を迎えます。ぜひ、総会での株主との建設的な対話の場として捉え直し、「企業価値」ならびに「非財務価値」説明ストーリーをブラッシュアップする、絶好の機会であると考えてはいかがでしょうか。


電通PRコンサルティングでは、ステークホルダーに応じた、「企業価値」説明ストーリーの設計や「情報流通デザイン」の設計に、数多くのノウハウと実績を有しています。IR領域においても、個人投資家獲得・育成のための企業コミュニケーション活動提案を通じて、企業価値の向上に貢献しています。「企業価値」説明ストーリーづくりにお困りの際には、ぜひご相談ください。


※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。




電通PRC‐PRX事務局からのご案内


❶企業メッセージ開発とIR/PRコミュニケーション

電通PRコンサルティングでは、お客さまの「企業価値」が、安定的、継続的に、適切な評価を獲得し、円滑で個性的な企業成長を支援する事を目的に、企業メッセージの開発や発信のお手伝いしています。詳しいサービスプログラム(2023年3月更新版)については、こちらからダウンロードしてご覧ください。



❷トップコミュニケーション・プログラム

電通PRコンサルティングでは、企業リーダーの為のコミュニケーション・プログラムをご用意しています。様々なステークホルダーやメディアを想定した「スピーチライティング」支援から、「パブリック・スピーキング」や「メディアトレーニング」など、メディア出身者、演出家、心理学者など、実績豊かで多彩な講師陣がチームを編成して、企業リーダーのコミュニケーション力向上をお手伝いします。



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松本 太
松本 太
株式会社 電通PRコンサルティング  ステークホルダー・エンゲージメント戦略局 エグゼクティブ・チーフ・コンサルタント 1991年 山一証券株式会社入社。 同社の顧客向けIRサポート業務の立ち上げに携わった後、営業としてベンチャー企業のサポートに尽力する。同社の自主廃業を経験し、危機管理の重要性を思い知る。1998年に京セラ株式会社に入社。情報機器マーケティング担当としてメディア対応に従事。三田工業の会社更生法申請に伴い同社(現・京セラドキュメントソリューションズ株式会社)の再生プロジェクトに参画。経営問題を抱える企業へのコンサルティング経験を磨く。 2001 年に株式会社電通入社。IR、コーポレートコミュニケーションを軸に、財務格付け、株価下落、敵対的M&A、民営化対策、行政処分、企業再生、製品リコール、個人情報漏えい、SNS炎上といったさまざまなリスク・危機管理対応を手掛ける。2014年4月に電通子会社として危機管理広報専門のコンサルティング会社、K&Dコンサルティング株式会社を立ち上げ、取締役コンサルティングディレクターを務める。2021年9月、電通PRコンサルティングとK&Dコンサルティングの経営統合により、現職。 (公社)日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) 【著書(翻訳)】 『コーポレート・レピュテーション』 2005年 東洋経済新報社

 


 

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