2023年「変わる株主総会」の対応と、膨らむ「広報PR部門への期待」~個人株主エンゲージメント強化へ~
今回のPRXマガジンでは、3月期決算会社の「定時株主総会」集中期を6月後半に控える中、2023年に「変わる株主総会」のポイント、そしてこれに伴って拡大する「広報部門への期待」についてご紹介します。
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2023年、株主総会変化の背景
まず、予想される「今年の株主総会」における変化のポイントです。本年5月、新型コロナウイルスの感染症法上分類が「5類」に移行する事を受け、過去3年にわたるコロナ禍における「(実質的な)入場制限下での実施」から脱却しつつあります。
そして、これに伴い、株主総会開催の、本来の目的の一つである「『個人株主とのコミュニケーション』も、いかに充実させることができるか」に関心が集まってくる事が考えられます。
その背景として、二つの要因が挙げられます。
① 「個人株主」数の大幅な増加
企業の政策保有株式の売却やNISA拡充期待などによって、個人株主数が大幅に増加しています。2022年7月に東京証券取引所等が発表した「2021年度株式分布状況調査」において、個人株主数が479万人増の6,460万人と、過去15年で最大の増加を果たしました。特に、「新規上場」や「株式分割」等の特殊要因がない会社だけでも、412万人増えていることからも、多くの企業で個人株主が増加していることがうかがえます。
② 増加する「株主提案」
昨年6月に総会を開いた企業では過去最高の77社に株主提案がありました(三菱UFJ信託銀行調べ)。今年もより多くの株主提案が予想されており、それに伴い浮動票とされることの多い個人株主への支持獲得に注力する企業も増えています。
ルール変更に伴う影響と個人株主の増加
さらに上記に加えて、株主総会における、個人株主とのコミュニケーションの充実に貢献するような法改正も進んでいます。
① 2022年9月に施行された「改正会社法」により、この3月以降の株主総会では「開催の3週間前までに、サイト上に招集通知などを載せること」が義務付けられました。これにより個人株主の議決権行使を促すために、従来の紙面では表現できなかったような、「動画」でのコミュニケーションをはじめとした、様々な仕掛けでの働きかけが期待されています。
② 今年は株主総会自体も、来場制限をかけない「リアル開催」に加えて、より多くの個人株主の参加が見込める「バーチャル開催」とのハイブリッド開催が見込まれています。そして多くの企業が「バーチャルオンリーの株主総会」開催のための定款変更を総会議案として諮ることが予想されています。
膨らむ広報PR部門への期待
ここまで紹介してきたように、社会環境の変化や法改正などの動きを受けて、企業においても「個人投資家とのコミュニケーション」の充実に向けた対策が期待されています。つまりそれは、外国人や国内の機関投資家対策を中心とする「IR担当部局」はもちろん、常に社会にむけた企業コミュニケーションを担い、様々なステークホルダーとのエンゲージメント強化を通じた、企業ブランドのレピュテーション・マネジメントをつかさどる「広報担当部局」のノウハウや活動への期待が、これまで以上に高まっていると言えます。
中でも特に、大手流通や食品、外食、テーマパーク運営会社など、自社顧客を個人株主として取り込んでいる(またはその潜在性が高い)企業においては、企業ブランド価値そのもののPR活動、そして、事業やマーケティング活動、これらを包括的に推進することにより、自社への理解・賛同・参画意向の高い個人株主数を、育成、拡大することがますます求められます。(※)
電通PRコンサルティングでは、ステークホルダーに応じた企業価値の説明ストーリー文脈の設計や情報流通デザインの設計に、ノウハウと実績を有しており、IRにおいても個人投資家獲得・育成のための企業コミュニケーション活動提案を通じて、企業価値の向上に貢献します。
(※)一般的に、企業の商品やサービスに魅力を感じている個人株主は、株式保有期間が長く、市場全体の株価下落時においても、これを下支えしてくれる存在として注目されています。さらに、電通PRコンサルティング内シンクタンク「企業広報戦略研究所」の調査によると、企業価値に魅力を感じている生活者は、同企業の商品購買金額においても、約1.3倍の効果がある事が、発表されています。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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