【ESG時代の企業PR戦略フレーム】「統合広報」で企業価値を多面的に向上させる
「自社のアセットや取り組み実績は多数あるものの、世の中にうまく伝わっていない気がする…」
「各ステークホルダーに対して、そもそもどのような広報ネタを作るべきか分からない…」
企業PRのご担当者から、このような悩みをよく聞きます。
また、社内で、
・消費者には事業部/マーケティング部
・投資家/株主にはIR
・社員には人事/総務…
といったように、ステークホルダーごとに広報機能が分散していたり、逆に広報業務が少人数に全て集中してリソースが足りなかったりと、目の前の対応に追われて全体を俯瞰した戦略が立てられない…というケースもありますよね。
本来、「企業PR」とは、企業のパーパスを軸に据え、各ステークホルダーに応じて発信内容を調整しながら関係性を築き、多面的に企業価値を高めていく活動のことです。
別個に対応していたり、視野が狭くなってしまったりすると、全体の企業価値を高めていく上での課題や方向性が曖昧になってしまいます。
今回は、企業の広報活動全体を俯瞰し、財務指標だけでなく、非財務領域も含めて多面的に企業価値を高めていく広報戦略「統合広報」について、ご紹介します。
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まずは、企業全体の取り組みの棚卸を
企業価値というと、どうしても業績や株価など財務指標が重視されがちです。しかし、それだけでは企業の価値は測れません。社員、環境、社会などの非財務領域も含めた「マルチステークホルダーと良好な関係を築けているかどうか」ということも重要なポイントです。この視点は、SDGsやESGがより重視されるいま、一層欠かせないものになっています。
こうした考え方から生まれた広報戦略が、この「統合広報」です。
自社のパーパスを中心に置き、財務指標である①事業、非財務指標である②社員③社会④環境の4つの切り口から企業価値を因数分解し、各ステークホルダーに対してどのようなアクションをとるべきかを検討します。
「統合広報」を実践する上で有用なツールが電通のオリジナルフレーム「統合諸表」です。
このフレームを用いて、まず企業全体で現在行っている取り組みを棚卸しして、プロットしていきます。
取り組みを統合諸表にプロット
統合報告書を参照したり、複数部署の社員と行うワークショップを通じて、①事業②社員③社会④環境の4つの領域で、どんな取り組みがあるかを一枚絵で整理します。
「統合諸表」の詳細は、こちらをご覧ください▼
全体を俯瞰して、強みと弱みを知る
企業行動/活動の棚卸しができましたら、次に、以下の3ステップで今後の広報課題を抽出していきます。
〔Step01〕各取り組みが語られている量を可視化
「語られている量(情報流通量)」をプロット
まず、各取り組みについて、新聞やニュースサイト、SNSといった、各メディアでどのくらい語られているか(=情報流通量)を測定し、赤い円の大きさで表します。
〔Step02〕各取り組みのポテンシャルの高さを可視化
「ポテンシャルの点数」をプロット
次に、各取り組みの「ポテンシャルの高さ」がどのくらいか?という定性的な分析を行い、10点満点で点数をつけていきます。ここでいう「ポテンシャル」とは、その取り組みに対するステークホルダーの評価を指します。ステークホルダーに対し、取り組み内容や実績についてアンケート調査を行い、その評価の結果を点数に反映します。
〔Step03〕課題を抽出
ここまでの分析で、各取り組みの情報流通量とポテンシャルの現状を可視化することができました。ここから今後の課題を抽出するために、縦軸がポテンシャル、横軸が情報流通量のグラフでプロットし直します。
各取り組みをグラフ上のエリアで区分けします。
「ポテンシャルの高さ」と「情報流通量」から各取り組みの課題を抽出
右上:「優等生」ゾーン。 情報流通量も多く、ポテンシャルも高いため、課題が少なく、現状のまま活動を継続すべきと判断できます。
左上:「ダークホース」ゾーン。ポテンシャルが高いのに情報流通量が低い(=知られていない)という課題があります。ここにプロットされた取り組みは活動自体は良いものなので、伝え方や伝える場所など発信方法の見直しが必要です。
下部:「精査」ゾーン。そもそものポテンシャルが低いため、ステークホルダーに伝えても、そのままではポジティブな評価が得にくい可能性があります。活動自体の精査や、今後も投資すべきかどうかの検討が必要です。
さらに、Step01で整理した①事業②社員③社会④環境の4つの領域でのチェックも必要です。
Step01では、事業を黄色、社員をピンク、社会を青、環境を緑の円でプロットしていました。
※一つ前の画像を再掲しています
課題抽出の図(再掲)をみると、社会領域(青い円)つまり社会を良好にするための取り組みは、ポテンシャルの高い取り組みが少ないことが分かります。つまり、社会領域で新しいシンボルアクションを創出することが必要、という課題も浮かび上がってきます。
このように、社内のファクト全体を一枚絵で整理し俯瞰することで、各取り組みの課題を抽出して広報戦略に組み込むことができます。
メディアでの露出量だけでなく、どのような論調で報道されたのか(どのように受け止められたのか)、実際どのようなステークホルダーから評価を得たのか / 得られそうか、という視点も重要なポイントです。
スキルの強化も忘れずに
今回は、「ファクト(取り組みの内容や実績)」を強化するための棚卸しや整理にフォーカスを当てました。
一方で、統合広報を実践する上では、「ファクト」だけでなく、「スキル(ファクトを効果的にステークホルダーに届けるための実務的な技術)」の強化も大切であることは、忘れてはいけないポイントです。
「統合的な視点」で、マルチステークホルダーに寄り添う
ステークホルダーも、企業の価値を測る観点も多様化しているいま、自社の取り組みを統合して俯瞰することはとても重要です。
・このメッセージだとカバーできていない相手はいないか
・届ける内容、届け方、どちらに課題があるか
・財務領域だけに広報リソースが集中していないか
など、統合的な視点を持って各ステークホルダーに寄り添い、よりよい関係を築いていくことが、企業全体の価値の底上げにもつながっていくはずです。
電通PRコンサルティングでは、組織横断型PRプランニングチーム「PRX Studio Q」を中心に、コミュ二ケーション・スキルの強化も含めた「統合広報」の一連のプログラムをご提供しています。是非、お問い合わせ下さい。
出典:https://note.prx-studio-q.com/n/n6f30a92a51f8
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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