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【企業広報戦略】「インテリジェンス活動」活用法


「インテリジェンス活動」

あまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、これは、企業経営において、最適な経営判断に貢献するための情報収集活動を意味します。自社情報、顧客情報、業界・競合情報の収集分析はもちろん、国際情勢の変化や、地域社会や株主等のステークホルダーの環境変化が、自社に与える影響の分析も不可欠です。

特に予測困難なVUCA時代においては、顕在化していない企業の経営課題をも発掘、設定し、いち早く課題解決に向けて対策を講じるためにも、インテリジェンス活動の重要性はますます高まってきていると言えるでしょう。
 
本記事では、この企業インテリジェンス活動を、広報担当者が協働することの重要性や、その役割や機能についてご紹介します。


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目次[非表示]

  1. 1.PEST分析と経営戦略
  2. 2.広報担当者になぜインテリジェンス情報が必要なのか?
  3. 3.企業の社会的価値をマネジメントする「企業広報」とインテリジェンス活動


PEST分析と経営戦略


“マーケティングの神様”フィリップ・コトラーは、企業がコントロールできない「外部環境」により、自社が影響を被る「経営環境のフレームワーク」として「PEST」を考案しました。


Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の各頭文字をとった用語であり、経営のマクロ環境要因分析として外部環境を分析する手法です。企業のインテリジェンス活動は、まさにこのPEST分析が示す「マクロ環境」を把握することで、経営戦略の策定を支援する重要な活動だといえます。


PEST分析のフレームワーク




広報担当者になぜインテリジェンス情報が必要なのか?


このPEST分析が示す「マクロ環境」情報の収集や分析、すなわち、企業インテリジェンス活動が、広報担当者にも期待される理由は主に3点あります。

 
1点目。それは、「マクロ環境の丁寧な把握が広報戦略そのものの質を決定する」という点です。いまや、企業の広報部門は、新商品や新サービスに関する一過性の話題化を図るプロモーション関連の部署ではありません。

企業経営機能の一つとして、企業姿勢そのものを、社会やステークホルダーに示すプロデューサー的役割が求められています。特に、戦略的な企業広報計画においては、中期経営計画との関連付けを行うことが必須です。


そして、2点目。

経営者や事業リーダーは、常に、このPESTを踏まえた自社経営のポジション把握を基に、「経営戦略」を語ることが求められています。

当然のことながら、広報担当者はこのインテリジェンス活動で得られた情報とその分析を踏まえて、自社のメッセージに落とし込まなくてはなりません。

つまり、収集したインテリジェンス情報の質が低ければ低いほど 、周囲のステークホルダーからは「自社の論理」「単なる努力目標で実効性が薄い」と捉えられてしまう危険を伴います。

特に、IR活動における情報発信においては、市場は経営者の発言に対してはとりわけ過敏に反応することが予想されるため特に注意が必要です。 

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3点目はリスクマネジメントの観点です。

企業広報部門では、企業の置かれた経営リスク環境を把握し、 広報対策準備を行うに当たり、経営のマクロ環境を把握することが不可欠になっています。

また、実際にクライシスが発生した局面では、広報担当者には、初動から収束に到るまで「危機管理広報機能」として、社会に対する情報の受発信を一元的にマネジメントすることが期待されています。

特に社会に対して「原因説明」「謝罪説明」などを発信する上で、企業経営と密接に関係するステークホルダーに与える影響はもちろん、社会を取り巻く政治、経済や市民生活環境などの外部環境に対する配慮や影響も含めて、発信しなくてはいけません。

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広報担当者が意識すべきインテリジェンス活動のポイント



企業の社会的価値をマネジメントする「企業広報」とインテリジェンス活動


このように企業経営機能の一つとしての広報担当者は、刻々と変わる「社会の変化」に合わせて、企業の情報発信や情報流通を考える必要があり、この「社会の変化」は広報担当者の“感覚値”や“経験値”のみで把握・分析するものではなく、根拠に基づいた外部環境把握・分析に努めることがこれまで以上に重要になってきています。

また、企業が常に「不確実性」と対峙(たいじ)する上で、こうしたインテリジェンス情報の入手と分析が、「渉外部門」や「経営企画部門」のみならず、広報担当者にも強く期待されています。

しかしながら、現段階では、残念ながら、企業における「広報部門」と「渉外部門」や「経営企画部門」との密接な連携はあまり図れていないのが実情です。


企業広報戦略研究所実施「企業広報力調査」より


2022年に「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング)」が上場企業の広報担当者に向けて実施した調査「企業広報力調査」によると、「規制緩和やルール形成を目指し世論喚起に向けた広報活動を行っているか」という問いに対して、「活動している」と回答した企業は全体のわずか6.7%に過ぎませんでした。

もちろん、各関係部門と連携して、「政府」「業界団体」の動向情報など、外部視点の適時把握に努めていらっしゃる企業広報担当の方々は大勢いらっしゃいます。しかし、それ以上の連携が進んでいない背景として、事業活動を取り巻く規制やルールに対して、経営層が広報と連携する必要性を認識していないことが考えられます。

政府・行政機関、業界、地域社会、株主、機関投資家、取引先など、企業経営の動向に強い影響を与える、さまざまなステークホルダーの方々に対しては、企業はこれまでも直接向き合うことで、情報収集・分析を行い、対策を打ってきました。しかし、スマートフォンをはじめとした情報デバイスの進化と普及によって、世界の情報流通環境は一変。これらの活動に加えて、今や、ステークホルダーの方々を取り囲む社会環境や市民生活の声をも勘案した対策を講じる必要が生まれてきています。2023年「株主総会」において、個人株主とのエンゲージメントに、これまで以上に注目が集まっているのはその表れかもしれません。


つまりこうした現象は、企業の社会的価値をデザインし、それをマネジメントする「企業広報部門」への期待をますます高めています。これに伴い、企業広報担当者は、インテリジェンス活動の重要性をこれまで以上に認識し、経営視点を持って戦略的に活用していくことが求められているのではないでしょうか。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。


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中 憲仁
中 憲仁
株式会社 電通PRコンサルティング ステークホルダーエンゲージメント局 コーポレートコミュニケーション1部 部長/企業広報戦略研究所 上席研究員  コミュニケーションに関する調査、イシューマネジメント部門において、広報効果測定から、各種インタビュートレーニング、メッセージ開発などの企業広報、コーポレートコミュニケーションを中心に、BtoC企業、自治体、官公庁、インフラ企業、メーカー等幅広く手掛ける。調査、広報戦略、企業広報戦略研究所、リスク部を経て現職。 レピュテーション分析、パブックアフェアーズなど調査・分析を起点としたコミュニケーション戦略、広報戦略立案に多く携わるとともに、広報戦略ワークショップ、広報研修、トレーニングのトレーナー、アドバイザーとしても実績多数。

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