【目標達成のための情報流通デザイン術】C→PESOと情報クリエイティブを考える
PRXではさまざまな形で広報活動に関する記事をお届けしています。その中で多く語られている現代のコミュニケーション環境の特徴が、「情報流通量の増大」。マスメディアに加え、Webニュースや生活者自身が発信することのできるソーシャルメディアの台頭により、そのボリュームは右肩上がりになっています。
このような時代、従来のプレスリリースや広告といった活動での効果に疑問を持っていたり、日々ソーシャルメディアを運用していても「何がゴールなのか?」とモヤモヤしていたりする人も多いのではないでしょうか?そんな課題を持つ方にぜひ取り組んでいただきたいのが、今回ご紹介する「C→PESO」モデル。このモデルを活用して、数多くの企業・団体のPR活動を手掛ける電通PRコンサルティング、ソリューションデザイン部 中川が解説します。
※本記事の続編はこちらからご覧ください。
【ご参考】「C→PESO」基本編はこちらの記事をご覧ください。
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広報活動の変化~「対応する」から「仕掛ける」へ
―最近の広報活動の課題について教えてください。
「情報流通量が飛躍的に増えた」ということに尽きると思います。マスメディアに加えてWebメディアが乱立し、TwitterやInstagram、LinkedInといった、一般生活者が自ら発信できるソーシャルメディアも年々増え続けています。プラットフォームの数、そこで飛び交う情報の量共に膨大な現代社会は、広報担当者がその動向を把握することだけでも手いっぱいになってしまいそうな環境です。
一方これまでの広報部署といえば「報道対応チーム」といった名称に代表されるように、「メディアからの依頼・問い合わせに対応すること」が主業務として捉えられていました。しかしこのような社会環境になったことで、この「対応する」という意識から、積極的に「仕掛ける」という意識をチームとして持ち、行動していかないと目標の達成が難しくなっているのではないでしょうか?
―とはいえ最近の企業は公式アカウントを運用するなど、取り組みを広げているところもあります。
はい。ただ「Twitterをやらなきゃ」「若い人に向けてInstagramも始めなきゃ」といったように、トレンドに乗り遅れないよう、「とりあえず手を出す」というような形で取り組んでいる企業も多いように感じています。
このような形でそれぞれの活動をバラバラに捉えてしまうと、報道対応では「何件取り上げられた」、Webサイトでは「PV数が伸びた(伸びなかった)」、SNSでは「フォロワーが何万人になった」「エンゲージメント率が上がった」など、それぞれの数値を増減だけで判断し、本来目指した効果について把握できないままになってしまう可能性があります。結果、実際に取り組まれている広報活動自体が、その目的から乖離してしまうということも少なくありません。
情報流通デザイン手法「C→PESO」モデル
ーそういった中、情報流通デザイン手法として「C→PESO」モデルを提唱されています。
情報発信活動は、最終的には情報の受け手の「行動変容」を促すことが目的です。にもかかわらず、先ほどご説明した通り、生活者の情報環境の変化に伴って、これまでのように「報道されるだけ」「広告出稿するだけ」では、行動に移してもらえることは難しくなってきたのではないでしょうか?
そのために、自ら積極的に「仕掛ける」という意識が必要になってきているのです。この「仕掛ける」ということは、「どのようなメッセージを開発するか」、そして「メディアの特性を理解した上で、どう組み合わせることで行動変容につなげるか」ということを常に考えながら、情報流通をデザインすることに他なりません。
つまりそれは、「行動変容」のための動機付けとなる情報や体験を、認知~理解~共感等、それぞれのフェーズに相応の施策をデザインし提供することであり、これを「受け身」ではなく「仕掛ける」意識で取り組むことが、現代の広報担当者には期待されているのかもしれません。
そこで私たちが推奨し、常に取り組んでいるのが、この情報流通デザイン「C→PESO」モデルです。情報を「つくる(C)」ことと、情報を「届ける(PESO)」ことをセットで考え、最終的な行動変容を目指したコミュニケーション活動を企画・実践することを提唱しています。
情報流通デザインにおける「Creative」
―それではまず、「C(Creative)」について教えてください。クリエイティブの重要性はすでに理解されている方も多いかと思いますが、なぜこれをあえて盛り込んでいるのですか?
広報/PRを生業とする私たちが考える「クリエイティブ」は、単に「美しいものを作ろう」「ワンメッセージで伝わるものだけを作ろう」というものではありません。PESO時代の「C」を考えるとき、大切なポイントは二つであると考えています。
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①「何を伝えるか」、つまり強度のあるコアアイデアを考え抜くこと
②「PESO」メディアそれぞれの特性に合わせて、マルチコンテクストを設計すること
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です。
① については活動の軸になるもので、企業として最も伝えたい重要な部分を明らかにすることです。これがないと情報発信量としては十分だったものの、結局のところ何が伝えたかったのかがあいまいになり、生活者の行動変容にまでは至らなった、という結果になってしまう恐れがあります。
なお、この伝えるべきメッセージは、企業ブランドや商品の社会的存在価値を反映したものでなければなりません。つまり、企業や商品・サービスと、社会との濃厚な接点を掘り起こすことと言っても良いでしょう。社会や生活者が気が付かなかった課題や諦めてしまった問題の解決につながるアプローチを通じて、初めて、人々は企業発信のメッセージに共感を抱くのです。
この点については、PRXマガジンに掲載している「エクリプスモデル」に関する記事にて詳しく紹介されています。
②についてはコアアイデアを軸としながらも、ターゲットとする層や活用するメディアの特性などを踏まえながら、より伝わりやすい文脈や表現形式にアレンジを加えていくことです。ターゲットのペルソナに沿ってコアアイデアの文脈を変換することはもちろん、例えば、「ソーシャルメディアのプラットフォームに合わせてどのように短文で表現するか?」「タイムラインの中でパッと目に留まるビジュアル表現は何か?」といったことも含まれてきます。
つまり、ここで最も重要な視点は、情報流通のその先にある「(ターゲット層の)獲得したい行動変容/意識変容」から逆算して、②PESO全メディア・ニュートラルな情報設計が可能なだけの、①“強度”を持ったコアアイデアを生み出すことであると言えます。
―なるほど。コアアイデアの“強度”を武器に、あらゆるメディア環境に合わせてコンテンツを最適化しよう、ということですね。
メディアプランニング新時代の「PESO設計」
ーでは、いよいよ本論に入ります。その大きく変化したメディア環境におけるPESO設計のポイントについて教えてください。
PESOモデルは、そもそも2014年に米国のPRプランナーであるジニ・ディートリッヒ(Gini Dietrich)氏が提唱したもの。それぞれPaid Media(広告)、Earned Media(パブリシティ)、Shared Media(生活者のSNSやブログ)、そしてOwned Media(企業Webサイトや公式SNSアカウント)を指しています。
どれも皆さんになじみの深いメディアですし、多くの企業・団体では取り組まれているものです。しかし、広告はマーケティング部で、報道対応は広報部で、さらにSNSは別の部署が行うなど、バラバラに取り組んでしまっているケースが多いのも事実です。私たちはこの状況を問題視しています。
PESOはそれぞれ独立したものではなく、密接に関係し合っています。テレビを見ていて、SNSで生活者がつぶやき、それがトレンドワード化し、Webニュースで取り上げられるといったようなことは数多くありますよね?
例えば、以前は、テレビで人気のバラエティー番組やドラマが放映された翌朝は、その話題でもちきりといったことがよくある時代でした。そういう環境であれば、最初からマスメディアで取り上げてもらう方法を考えるということになりますが、今では、たとえ視聴率が高くなくても、Twitterのトレンドワードで1位になって話題化するというケースも珍しくありません。そのため、常に「PESOは密接に連携している」ということを意識して企画を検討していく必要があるのです。
―それがPESOメディアを横断した「組み合わせ」ということですね。それでは、この「PESO」をどうやってデザインしていくのがよいのでしょうか?
そこで間違ってはいけないのは、「それぞれに対して、単純に活動リソースを振り分けることではありません。そこに必要なのは、時間軸の概念、そして「情報流通構造®」の展開とともに変換される文脈理解だと考えます。つまり、「どのようなメッセージを、どのタイミングでPESOそれぞれに乗せていくか?」ということを俯瞰的、かつ有機的に考えていく必要があるとも言えます。
さらにかみ砕いてご説明します。「PESOメディア」にはそれぞれ特技があります。
例えば「O(Owned Media)」や「P(Paid Media)」では、自分のビジョンやチャレンジを伝える「宣言」や自社が発見した問題を伝え、社会課題に対する問題提起をする「意見」などが得意です。話題を深めたり相対化したりして、情報価値の向上を目指すのであれば「E(Earned Media)」。より多くの人に話題を広げるのであれば「S(Shared Media)」を使うのが効果的です。
このように、各メディアの特性を踏まえながら、
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①「起点作り」(コアアイデアを最初にどのようなメディアに宿すか)
②「拡散作り」(起点メディアからどのような順序と方法で、拡散・最大化を図るか)
③「終点作り」(広がった話題を、最後にどう行動に結びつけるか)
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こうした3ステップを念頭に置いて計画していくことが必要になるのです。
なお、現実的にこれを実践しようとすると、企業内でも関連各部局が連携して、俯瞰的な共通の青写真を描きながら、推進する必要があります。ただ、コミュニケーション活動の目的が明確であれば、連携も図りやすくなるのではないでしょうか?この機会に、ぜひメディアプランニング新時代の情報流通デザイン「C→PESO」モデル設計に取り組んでみて下さい。
電通PRコンサルティングでは、お客様の情報流通デザイン提案はもちろん、お客様ご自身のメディアプランニング力向上のための「C→PESO」ワークショップ、コアアイデア開発のためのワークショップ等もご提供しています。
※本記事の続編はこちらをご覧ください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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