
<徹底解説>「情報流通デザイン」プランニング活用法~起点/拡散/終点~
情報流通量が爆発的に増大するなか、情報が届いている実感がない…。
そんな課題を持つ方にお勧めの、電通PRコンサルティングのメディアプランニング手法である情報流通デザイン「C→PESO」モデル。
今回はこの「C→PESO」モデルの具体的な活用方法について、電通PRコンサルティングのソリューションデザイン部 中川が紹介します。
※情報流通デザイン「C→PESO」モデルの概要や、その中でも主に「C(Creative)」部分のプランニング手法に関しては、コチラの記事をご覧ください。
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企画時点で「起点/拡散/終点」までデザインする
―今回は、新時代のメディアプランニング「PESO」モデルの具体的な活用法について、紹介していただきます。
前回「【メディアプランニング新時代:01】情報流通をデザインする!」(2023年7月公開)では、PESOメディアの特性を理解しつつ、情報流通デザインに最適化した「コアアイデア」や「コンテンツ」の作り方の注意点や、時系列を意識しながら「起点作り」「拡散作り」「終点作り」を全て俯瞰(ふかん)した形でコミュニケーションを設計することの重要性についてご紹介しました。
起点作り(1):宣言する
―では、「PESO」モデルの実践的な活用方法を教えてください。
まずは情報の起点作りです。ここで意識しなければいけないのは、取り組みやキャンペーンに関する「宣言」。初期段階で、どのような思いでその取り組みを始めるのかを表現する必要があるということです。これを定め、打ち出しておかないと、どれだけ話題になろうが、その取り組みに込めた意図や企業姿勢、また活動の全体像が伝わりません。結果として行動変容につながりにくくなってしまいます。
そのときに活用できるのは、自身で発信内容をコントロールできるメディアです。内容をコントロールでき、発信力のあるメディアといえば「P(Paid Media)」=広告が代表的です。特に業界、取引先における「宣言」という意味では、依然「新聞広告」の役割も全く衰えたわけではありません。ただ一方で、大きなコストがかかってしまうため、誰もが取り組めるわけではありません。
そこで私たちが「P」とともに推奨しているのが「O(Owned Media)」=オウンドメディアの積極活用です。オウンドメディアというと企業Webサイトだけをイメージされるかもしれませんが、それだけではありません。例えば、自社商品のパッケージや自社オフィス、店舗、名刺やノベルティといったツール、そして社員までも含めて、企業が持つあらゆるアセット(資産)を「広義のオウンドメディア」として活用するという発想を持つと、一気にコミュニケーション活動の幅が広がると思います。ぜひ、ご活用いただきたいポイントです。(※)
(※)社内のさまざまなツールやリソースをオウンドメディアとして捉えて活用するポイントについては、下記の記事でも紹介しています。ご参照ください。
社内リソース ×「ちょいズラし発想」=良質PRコンテンツに変身!?
起点作り(2):最小公倍数に点火する
―オフィスや社員までもがオウンドメディアという発想を持つのは面白いですね!
たとえ予算が潤沢でなくても、その発想で考えてみると実はたくさんの可能性があり、いろいろとアイデアが出てくるのではないかと思います。
起点をつくった上で取り組むのが、次の「拡散作り」につなげるための火種をどのように点火させるかです。情報があふれ返っている今、一つ一つの情報への注目度は薄まってしまっています。そのため、何の引っかかりもない情報を出しても埋もれてしまうことは、全ての広報、コミュニケーションに関わる方に共通する課題と言っても良いかもしれません。
だからこそ、一足飛びに社会全体を見るのではなく、まずは、最小公倍数で考えること。つまり、社会に情報を届けることを、一緒に後押ししていただける「特定コミュニティー」をあぶり出し、そこに点火することが大切です。企業/団体の取り組みに対し、少数ではあっても熱狂的に推薦してくれる人たち、すなわち「企業活動に特別な共感を抱いていただける人たち」に届き、声を上げてもらえる(上げたくなる)ことを意識してはいかがでしょうか(だからこそ、コミュニケーション活動の核となる「コアアイデア」には特別な強度が求められる(※)わけですが、この点は前回記事をご覧ください)。
また、コミュニケーションの速度を上げるために、特定層のファンを抱えるWebメディアやインフルエンサーを巻き込むこともアイデアの一つです。
(※)電通PRコンサルティングでは、強度のあるコアアイデア創出手法として、「ソーシャルハンティング」や「鬱憤(うっぷん)構文ワークショップ」の提案などを行っています。下記記事をご参照ください。
n=1の声から生活者インサイトに潜む「ペイン/ゲイン」を狩り取る!「ソーシャル・ハンティング」
”「世の中の問題」発掘”に役立つ「鬱憤構文カード」できました
なお、エンターテインメント・ビジネスの業界においては、こうした発想・アプローチはSharedメディア台頭以前からポピュラーなことです。いきなり広く、大勢の皆さんに支持されるコミュニケーションプランを描くのではなく、強度のある「世界観」をもって、まずは小さくとも熱狂的なファンコミュニティを形成する。その熱狂的ファン層のクチコミ(話題)はそれ自体が起点となって、全く別の「コミュニティー」に対して、全く別の文脈で、新たな熱狂を点火する。その輪は徐々に広がり、いつしか社会現象になっていく。例えば後に国民的アイドルグループとなったAKB48が、2005年に秋葉原で開催した最初のライブは観客が7人だったといいます。そうした例からも、その意義を感じていただけるのではないでしょうか。
拡散作り:「可視化」「マス化」は掛け算で設計
―では次のステップである「拡散」について教えてください。
局所的な熱狂を生み出すことができたら、次は話題の「可視化」から「マス化」へとつなげていくステップに入ります。ここで重要なのが「コンテンツの最適化」です。
このステップでは、「情報の相対化」「情報の自分ごと化」を促進する、「E(Earned Media)」=報道や「S(Shared Media)」=ソーシャルメディアの活用が有効です。ただし、報道・情報メディアでもそれぞれ取り上げたいテーマは異なります。テキスト要素が強い「Twitter」、ビジュアルがメインの「Instagram」といったように、ソーシャルメディアの間でも特徴は大きく異なります。
話題の拡散をもくろむ際には、「さまざまな切り口で」、そして「さまざまなメディアで」取り上げられることが必要です。コアメッセージはしっかりと残しながら、各メディアやコミュニティーの特性、世の中のトレンドなどを踏まえ、コンテンツや登場人物などをアレンジしていきます。
このとき、取り組みのメインターゲットはもちろんですが、幅を広げて社会を俯瞰することも大切になります。事例で説明します。
以前、「就活生の髪型」が話題になったことがあります。このテーマについては就活生という当事者はもちろんのこと、採用する企業側の視点もあれば、友人や恋人、親という視点もあります。コミュニケーション活動をプランニングするときは、どうしてもメインターゲットそのものに意識が向きがちですが、周囲を見渡して、それぞれの視点で切り口や最適化されたコンテンツを提供し、話題化につなげていくことも重要なポイントだと捉えてください。
このときの方法論として考えられるのが、この「8つの方法論」です。
例えば「立証化」。企業がいくら「この商品は素晴らしいです」とストレートにうたってもなかなか生活者には届きません。しかし、「なぜこの商品が必要なのか?」「この商品が解決する課題はどのようなものなのか?」といったファクトをデータや有識者のコメントを交えて紹介することで、生活者は買うべき理由をより深く理解することができます。また、身近な人や同じ趣味を持つ人からのお薦めは信頼できますよね?そういったコミュニティーをつくり、広げていく「仲間化」を進めることでトライアルのハードルを下げることもできます。
付け加えると、複数生み出されたコンテンツが「足し算」で終わることなく、相互が作用し合って爆発力を生むような「掛け算」となる関係づくりを目指すことが重要です。このような形でコンテンツの最適化を進めながら、デジタルメディアでの露出によって話題を深掘りし、さらにはマスメディアやパワーインフルエンサーを活用しながら、一般層への情報波及を目指すことになります。
終点づくり:行動を生み出す
―そして最終局面の「終点づくり」です。
ここでは、「円滑な行動変容に向けて、いかにアシストするのか」が大切です。そのために最も重要な視点は、広がった話題や高まった熱量をきちんと受け止めることだと考えています。
つまり、安心して行動に移していただくためのアシストとして、再度オウンドメディアを活用した、情報循環を目指してはいかがでしょうか?ECサイトや実店舗の来店へつなげていくことはもちろん、WebサイトのLPやソーシャルメディアに誘導することにより、理解をさらに深め、行動変容につなげることも重要です。
中間指標である「KPI」(Key Performance Indicators)としての「掲載・露出数量」や個別の論調の是非ばかりに目が行きがちな広報活動においても、そもそもの活動目的に対してコミットする姿勢、すなわち「終点づくり」はぜひ意識して設計してほしいと考えています。
チーム共創モデルとしての「C→PESO」デザイン
今回紹介した、情報流通デザイン「C→PESO」モデルは、一つ一つのソリューションを点で見ると、それほど新しい話ではないように見えます。が、本当に必要なのは「俯瞰して、チーム一体となって共創プランニングすること」。
そのためには、社内での部署の壁を越えたチームをつくることです。そして「C→PESO」全体のグランドデザインを共に描けるパートナーの起用を検討してみてはいかがでしょうか?
電通PRコンサルティングでは、あらゆる業界、企業規模、さらには、企業ブランドデザインから商品販促のPR設計に至るまで、さまざまな課題解決に向けたプランづくりに携わってきました。
さらに、企画初期段階より、お客さまと共に「プランニング・ワークショップ」等を通じて、「C(Creative)」と「PESO」設計を一気通貫でデザインする共創活動もご提案しています。
だからこそ、前回記事でもご説明した通り、共感を生み出しやすく、かつマルチターゲットでの文脈変換に耐え得る、特別な強度を持ったコアアイデアのデザインや、効果的なコミュニケーションの設計図を描くことが可能になると考えています。
本記事をご覧いただき、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお声掛けください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
電通PRC-PRX事務局からのご案内
電通PRコンサルティングでは、本記事にてご説明した情報流通デザインについてまとめたお役立ち資料や、コアアイデアを生み出すワークショッププログラムのご紹介等を行っています。下記よりダウンロードしてご覧ください。