【調査PR 徹底攻略03】事例とともに考える「データコンテンツ発信術」
「『調査PR』徹底攻略」シリーズでは、「調査PR」(PRにおけるデータコンテンツ活用)のメリットや、モーメントを活用したタイミングの設定などについて解説してきました。第3回となる今回は、データコンテンツの情報発信や情報流通デザインの手法について紹介します。
プランニングのポイントは「PESOメディア」をニュートラルに組み合わせた、情報流通を考える事。調査結果をニュースリリースで発信するだけでなく、PESOメディア全体を活用することで情報発信の効果を最大化し、社会的承認の獲得や合意形成につなげていくことができます。今回はこの具体的な手法について、電通PRコンサルティング データストラテジー部の伊澤 征が紹介します。
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「起点づくり」「拡散づくり」が調査PRの主戦場
―データコンテンツを開発したら、いよいよ情報発信ですね。
調査PRを実施する場合、一般的に多くの企業が活用する手法は「プレスリリース」です。しかし、PESOメディアをニュートラルに考え、全体をうまく活用することでさらに大きな効果を発揮する事が可能になります。今回は、「調査PR」の情報発信に関するプランニングのコツについてご紹介します。
改めてですが、「調査PR」=PR視点のデータコンテンツの得意分野は「世の中の兆しや課題を明らかにすること」。
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その上で「解決策の提示」として、自社の商品やサービスに落とし込んでいきます。「世の中の兆しや課題を明らかにしていく」ということは、すなわち新しいニュースが生み出されるということ。また数値データは非常に分かりやすく、内容や伝え方によって多くの方に関心を持ってもらえます。これらのことから、データコンテンツは、「情報流通構造®」における「起点づくり」「拡散づくり」フェーズにおいて大きな効果を発揮できると考えています。
起点づくり
まずは起点づくりです。ここでは発信内容を自社でコントロールできる「O(Ownedメディア)」「P(Paidメディア)」を活用しましょう。ここで調査によって生み出された「世の中の兆し・課題」、それに対して自社が提供できる「解決策」を提示・宣言するのです。特に「O(Ownedメディア)」は、次ステップの「拡散づくり」フェーズにおいてニュースやソーシャルメディアなどを見たユーザーが詳細を調べるために訪れる可能性もあるため、必ず押さえておくべきと考えています。
拡散づくり
その後、「拡散づくり」につなげていくため、「E(Earnedメディア)」と「S(Shared メディア)」を活用していきます。
「Earnedメディア」対策は「信頼性」「社会性」「画作り」から
―「Earnedメディア」に対するPR活動では、どのような工夫をすればよいのでしょうか?
調査においてもほかのPR施策同様、メディアの関心を捉えた情報発信が重要です。特にデータコンテンツを発信する際に重視したいのは「信頼性」「社会性」「画作り」の3点になります。
「信頼性」
メディアにとって、企業の宣伝文句ではなく、信頼できる情報であることの裏づけは必要不可欠です。そこで、
■KOL(Key Opinion Leader:キーオピオニオンリーダー)による、調査データを裏付ける解説や、その背景にある社会動向の紹介
■「白書」のような形式で、調査データを包括的かつ継続的に提供
などの方法が効果的です。さらに、KOLはインタビュー対象となるので、メディアが取材しやすくなるという効果もあります。
「社会性」
メディアの特集記事や、リリース転載にとどまらない署名記事などを獲得するためには、データが世の中の「トレンド」や「現象」の裏づけになることが求められます。そのため、明らかになったデータをより世の中に分かりやすく「ネーミング」し、コミュニケーションを行っていくことなどが効果的です。
「画作り」
TVでの露出を目指す場合は「画作り」が必要になります。そのためにはさまざまな工夫が考えられますが、調査ではメディア向けの「説明会」や「座談会」「イベント」など、調査結果を発表する場を作ることが最も効果的です。
事例:「こども気温」
ここで一つ事例を紹介します。今年7月に発表された、サントリー食品インターナショナル(以下サントリー)とウェザーマップによる共同検証「こども気温」の取り組みです。
今年の夏は連日猛暑が続き、「熱中症」というワードが社会的な関心事となっていました。特にお子さんにとって、この暑さは非常にこたえます。そのような状況の中、大人から子どもまで安心して飲める、心とカラダにやさしい水分補給飲料「DA・KA・RA」を展開しているサントリーにとって「暑さ」「子ども」というキーワードは非常に親和性が高いです。
この企画では「真夏日、地面に近い子どもの高さの気温は大人よりも7℃高い」という調査結果に加え、リリースの中にKOLとして気象予報士のコメントが盛り込まれています。
また自動販売機にラッピングを施し、「高さが低いほど気温が高くなる現象」を自販機の下半分が溶けたようなビジュアルで表現した『「GRREN DA・KA・RA」の「こども気温 お知らせ自販機」』を設置。それに合わせたイベントも実施しました。
このように、「こども気温」という社会性のあるキーワード・ストーリーを生み出したことに加え、実際に取材・撮影可能な場所や機会を提供することによって、多くのメディアによって報道されました。
「Sharedメディア」対策のポイント ❶共感を呼ぶ
―次に、「Sharedメディア」です。ここでは、どのような工夫をすればよいのでしょうか?
「Sharedメディア」において拡散されるためには、「面白い」ということはもちろん、調査結果に「共感できる」要素を盛り込むことが重要です。「今まで気付いていなかったけど、言われてみれば確かにそうかも」「自分だけかと思っていたけど、みんなもそうなんだ」という感情を生み出せるもの、また自身の意見を表明しやすい内容であるとよいでしょう。そのため、できれば調査プランの中にこれらを意識した質問案を入れることをお勧めします。
事例:「白米と一緒に食べるもの」に関する調査
ここで再度事例を紹介します。「ホットペッパーグルメ外食総研(リクルート)」が実施した「白米と一緒に食べるもの」に関する調査です。この調査では、そばやお好み焼き、うどんなどを選択肢として提示し、白米と一緒に食べる習慣の無いメニューについてアンケートを行ったものです。
こちらの調査結果はライブドアニュースのTwitter公式アカウントから記事が投稿され、それに多くの人がマイルールや自分の習慣をコメントし、多くの拡散につながりました。「白米とおかず」という解りやすいテーマの調査であったこと、かつ年齢や地域別に意識の違いが生じるなど、意見が出やすいテーマであったこと等が、活発な情報流通を生み出したと考えられます。
「Sharedメディア」対策のポイント ❷一瞬で伝える
また「Sharedメディア」の場合、「スマホで見る」ことを意識する必要もあります。一瞬で興味を持ってもらい、何を伝えたいかを理解してもらえるような見せ方を、工夫しなければいけません。その際に有効なのが「インフォグラフィックス」と「動画」です。
「インフォグラフィックス」は数字を分かりやすいイラストにして見せる手法ですが、調査結果を表やランキング、フローチャートなどで表現しましょう。ただ、スマホの画面で見ることを踏まえると、1枚の画に多くの要素を入れてしまうと見にくくなってしまいます。あくまでシンプルに1枚に1メッセージ。複数のコンテンツを見せたい場合は複数枚で表現するのが効果的でしょう。
調査PRにおける「動画」活用については、以前から、実証実験成果などを解りやすく伝える事を目的に採用されてきましたが、昨今のメディア接触状況を踏まえると、TikTokをはじめとしたソーシャルメディア「ショート動画」での発信も重要です。データコンテンツのグラフやランキングなどはシンプルですが説得力が高く、インフォグラフィックス同様、一目でインパクト・共感性を狙うことができます。また「自分は○○派」などと閲覧される方々がコメントを添えながら再発信し易いのが特徴です。こうした特徴から、「調査PR」と「ショート動画」の相性は抜群だと我々は考えています。
―ありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。
いわゆる「調査PR」、すなわち「データコンテンツを活用したPR活動」ではリリースだけでなく、さまざまな情報発信手法があることがご理解いただけたかと思います。せっかく開発したデータコンテンツですから、多くの方に知っていただけるよう、PESOメディア全体をニュートラルに見渡して、積極的な情報発信にご利用ください。
電通PRコンサルティングでは、年間で数百件のデータコンテンツ設計と情報発信を実践する、プロフェッショナルチームが存在します。日々多くの企業様のニーズに合わせた調査設計・情報発信手法を提案・実施しています。お気軽にお問い合わせください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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