【現地視察】CES 2026で感じた、PR視点で押さえておきたい最新テックトレンド

毎年1月、米ラスベガスで開催されるCES(Consumer Electronics Show)は、世界最大級のテクノロジー展示会として60年以上の歴史を持ちます。かつては家電を中心としたエレクトロニクスの祭典として知られてきましたが、近年はライフスタイル、モビリティ、ヘルスケア、エネルギーなど、社会全体を動かすテクノロジーの現在地を映し出す場へと進化してきました。

コロナ禍以降最大規模となったCES 2026には、4,100社以上の出展に対し、世界中から14万8,000人以上が来場。約6,900人のメディア関係者が取材に訪れました。


CES会場の広さは約260万平方フィート(約24万平方メートル)、東京ドームにして約5個分!世界最大級のテクノロジー見本市であるCESは、まるで“フェス”のような熱気に包まれていた

本記事ではCES視察を行った電通PRコンサルティングの林、川畑、武内の3人が、現地で学び感じた世界の最新テクノロジートレンドの“今”をPR視点で整理し、トレンドキーワードとともにお伝えします!

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目次[非表示]

  1. 1.AIありきの時代「あるかどうか」ではなく「どう使われているか」
  2. 2.DXの時代から「IX」の時代へAI技術を前提とした社会インフラの再設計
  3. 3.ロボティクスと注目キーワード“フィジカルAI”実験から「配置」を前提とした段階へ
  4. 4.モビリティの最前線展示されていたのは完成車ではなく、車を支える基盤技術
  5. 5.プラットフォームとしての家電生活全体を最適化する発想へ
  6. 6.進化が止まらないライフテックロンジェビティ(Longevity)は医療だけではなく日常全体を支えるメガトレンドだった
  7. 7.ポストスマホを探る新デバイス群
  8. 8.スタートアップ企業が集まるEureka Park示されるのは、「近い未来の新たなスタンダード」
  9. 9.おわりに CES 2026を読み解くためのキーワード

AIありきの時代
「あるかどうか」ではなく「どう使われているか」


今年のCESはどこに目を向けてもAIだらけ。会場を歩き回った4日間で強く印象づけられたのは、AIが特別な追加機能としてではなく、当たり前に存在するものとして語られていたことです。家電、ロボット、モビリティ、医療、製造、スタートアップのプロトタイプに至るまで、AIは当然のサービスとして組み込まれていました。

CES 2026のメインテーマは「innovators show up」。イノベーションの主役は「行動を起こす当事者」であることが強調された。そんな中、CESの主催者であるCTAが発表した今年の重要トレンドの一つは、もちろんAI。AIエージェントやデジタルツインに加えて、デバイス上のAIの活用がさらに進み、生産性、顧客体験、医療が向上することを予想しており、今回のCESのキービジュアルにもその見方が反映されていた。(写真:©Consumer Technology Association (CTA)®)

CESの注目コンテンツの一つとして業界リーダーたちによる基調講演がありますが、そのステージでもAMDのCEOリサ・スー(Lisa Su)氏、NVIDIAのCEOジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏、LenovoのCEOヤンチン・ヤン(Yuanqing Yang)氏といった大手グローバルテック企業のトップらにより、これからAIネイティブな時代が到来することが明確に語られていました。

展示に目を向けても、家庭や医療、工場、移動手段や街といった生活全体が、AIを前提に構造転換期を迎えており、今後AIありきのサービスや商品、それを支える技術がテック業界のPRでも最注目のトピックスになっていくという印象を受けました。

毎年注目が集まる基調講演。そのうちの一つとして、今年はLenovoがラスベガスの観光名所にもなっている球体型の施設「Sphere」で、まるでショーのようなプレゼンテーションを実施。「Freeing humans to do what humans do best(人間が得意なことを自由にできる未来)」とAIと人間が共存するビジョンを提唱。また、米半導体メーカーのAMDは「AI is Everywhere, for Everyone (誰もがどこでもAIを活用できる社会)」と掲げたことも印象的だった。(写真下:©Consumer Technology Association (CTA)®)

DXの時代から「IX」の時代へ
AI技術を前提とした社会インフラの再設計


CES 2026では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の次の段階として、インテリジェント・トランスフォーメーション(IX)という概念がメガトレンドとして度々使われていました。

IXとは、DXによって整備されたデジタル基盤やデータを前提に、AIが自ら考えて判断・最適化・自律制御までを担うことを前提とした社会・産業構造への転換を指す言葉です。例えば、製造、モビリティ、エネルギー、ヘルスケアなどの多くの分野で、AIがリアルタイムデータを基に最適解を導き出し、現実世界に即座に反映させる取り組みがすでに進んでいます。この各社の取り組みは単なるトレンドではなくパラダイムシフトとなり、今後はDXに代わりIXがテック業界の主要キーワードとなり、企業活動や社会変革を語る上で頻繁に用いられるようになると考えられます。


スマートファクトリーやスマートヘルスケアなど、あらゆる情報がデータ化されAI活用される様子が展示

この構造転換をとても分かりやすく説明したのがSIEMENSです。同社はCES開催初日に基調講演のステージに登壇。今後データとAIの活用を前提に産業構造自体が変わることでAI産業革命が起きるだろうと、AIの社会実装による産業転換を印象づけました。


SIEMENSがNVIDIAと語ったのは、産業用AIが自律的にオペレーションする未来。例えば、ロボットがロボットを作り、そのロボットが製造工程を管理する…といったSF映画のような世界についても語られ、未来の産業界のビジョンを示した。(写真:©Consumer Technology Association (CTA)®)

ロボティクスと注目キーワード“フィジカルAI”
実験から「配置」を前提とした段階へ


これまではCES 2026を通して感じた共通トレンドをご紹介してきましたが、ここからはいくつかの分野を抜粋して分野ごとのテックの最前線をご紹介します。

ロボティクスは、CES 2026の象徴的なテーマの一つでしたが、その見せ方は大きく変化しています。各展示では近未来的な目を引くデモンストレーションよりも、その技術がどの現場に置かれ、どの業務を担うのかが具体的に語られていました。このロボティクスの社会実装を支えるのがフィジカルAI(Physical AI)です。フィジカルAIとは、AIがカメラやセンサーを通じて現実世界を認識し、デジタル情報として理解して、ロボットや自動運転車などを物理的に動かし自律的な行動を実行させる技術やシステムのことです。

現地で特に印象的だったのは、農業、建設、鉱業といったブルーカラー産業の現場でフィジカルAIの実装が先行している点です。そこには人手不足や安全性といった切実な課題があり、展示の評価軸も「どこまで自律的に機能できるか」という未来性よりも、「どれだけ正確に、安定して機能するか」という実用性に置かれていました。CES Innovation Awards 2026(※)でも、人と協働するロボットや、自律的に判断・移動するシステムが評価されており、ロボティクスが夢の技術では無くなっていることが明確になりました。
※CES出展製品の革新性を評価する年次アワード。デザインとエンジニアリングの観点から優れた製品が選ばれ、業界動向を占う指標として世界的に注目されている。


アワードを受賞したフランス企業のAIロボット。付加価値の高いブドウ等の畑を、風雨や高温といった特定の自然環境から自動で保護し、作物の収穫量を大幅に向上させる。

日本国内の報道を振り返っても、各社が注目したのは現実世界で自律的に働くフィジカルAIの存在。「フィジカルAIに熱視線」「フィジカルAI元年」など各報道機関が大きく取り上げていたのが印象的でした。

どこに目を向けても人混みの先にはロボットが。夢のような未来の光景がもうすぐ日常にもやってくるのではと期待させてくれる。

モビリティの最前線
展示されていたのは完成車ではなく、車を支える基盤技術


CES 2026における注目テーマでもあったモビリティの展示で目立っていたのは、完成車そのものよりも、それを成立させるための基盤技術でした。自動運転や次世代モビリティを支えるソフトウェア、センサー、半導体、地図、OS、そしてデジタルツイン(Digital Twin)というデジタル空間上に現実世界と同じ状況をつくり実行するシミュレーション技術など、今後のモビリティを支えるテクノロジーが集結していました。

特にデジタルツインを用いた事前検証はAIによる走行・製造プロセスの最適化を通し、安全性や信頼性を担保できることで、今やモビリティ業界以外も含め開発現場で不可欠な技術となっています。アワードでも、派手な完成形よりも、こうした基盤技術が高く評価されており、モビリティの主戦場もAIネイティブな時代において見た目のインパクトから実用性、安全性に確実にシフトしていることが読み取れます。

ちなみに多くの人がモビリティ×テクノロジーで想像するような近未来の定番、「空飛ぶ車」の実用まではまだまだ遠いとか…。一方で農業重機のAIネイティブ化は着々と進んでおり、自律的に判断し作業を行う農業重機やPCでの遠隔操作によって畑に行かない農家がすでに実在しており、働き方もAIを通して大きな変革期を迎えています。

米農業機械大手のJohn Deereは、自動運転技術を搭載した巨大なコンバインを展示。GPSとカメラによる自動制御で効率的な収穫を可能にし、人手不足の解消と生産性向上を目指す次世代農業機械として注目を集めた。

プラットフォームとしての家電
生活全体を最適化する発想へ


家電分野では、単体製品の性能競争から明確に距離を取り、生活全体をどう設計するかという提案が中心になっていました。

家庭内の家電、エネルギー、ロボットをAIで統合し、人が意識せずとも快適な状態が保たれる環境をつくる。その思想は「便利」という言葉を超え、労働や家事の在り方そのものを問い直すものです。CES Innovation Awards 2026でも、家庭内AIハブやエネルギーマネジメントシステムが評価されており、家電はもはやモノではなく、生活を制御するシステムの一部として再定義されつつあります。

例えば非常に注目を浴びたLGは、AI搭載ホームロボット「LG CLOiD」を公開し、「Zero Labor Home(家事ゼロの家)」という生活ビジョンを提示しました。CLOiDは冷蔵庫から食材を取り出して調理機器に渡す、洗濯物を畳むといった家事動作を実演し、AI家電と連動しながら日常タスクを代行する未来像を示していました。

  
AI搭載ホームロボット「LG CLOiD」


洗濯にも対応する「LG CLOiD」

このほか、Amazonは単体のスマート家電やAI技術を見せるのではなく、生活全体を統合するためのスマートホームの提示に重きが置かれていました。AlexaやFire TV、Ringといった既存プロダクトに加え、生成AIを組み込んだAlexa+を軸に、家電、スクリーン、アート、セキュリティ、ウェアラブル、さらには車載システムまでを一つの生活コンセプトとして接続。今年のCESの特徴を踏襲し、AIを前面に押し出すのではなく、日常のあらゆる接点を滑らかにつなぐプラットフォームとしての家電を体現する展示でした。

進化が止まらないライフテック
ロンジェビティ(Longevity)は医療だけではなく日常全体を支えるメガトレンドだった


IXに並ぶCES2026のメガトレンドとしてメディアデーで説明されたのが「ロンジェビティ」です。ロンジェビティは単なる健康管理や疾病予防にとどまらず、長期的な身体・精神・生活の質を維持・向上させることを目的とした考え方で、無意識の計測やデータ統合を通じて、「より長く、よりよく生きる」ことを目指します。

例えば顔を見るだけで健康状態を可視化する技術や、衣服や家具そのものをセンサー化する試み、脳の健康状態を図る持ち運び型の検査機器など身の回りで人の健康な生活を支える技術が多く、特に超高齢社会を迎えている日本にとっても、ロンジェビティは今後もトレンドの一つになる可能性が高いです。


CES Innovation Awards 2026を受賞したデバイス。頭を入れるだけで2分で脳の健康状態を計測することができる。


同じくアワードを受賞した次世代の治療型ワイヤレスイヤホン。「聴く」と「治す」を一体化し、生活の中で睡眠の質やストレス軽減等をサポートするウェアラブル端末。


リハビリテーションでのサポートを行う着用型ロボット。大人用、子ども用とバリエーションも豊富で、こちらも今年のアワードを受賞した。

ポストスマホを探る新デバイス群


スマートグラスやリング、ペンダント型デバイスなど、体に近い場所で使われる新しいデバイスも引き続き存在感を示していました。新デバイスは人の認知や行動をAIなどの技術がどう拡張するかに焦点が当てられており、まさに今回のCESで多くの企業が口にした「Human Centered AI(人間中心のAI)」という考えが強く反映されていたように感じます。

例えばアワードを受賞したリトルバードという小さなウェアラブル端末は、完全に子ども用に設計された次世代見守りデバイス。リアルタイムで子どもの居場所を把握するだけでなく、行動や生活リズムをAIが学習し、異常を検知するとアラートを鳴らします。


真ん中の鳥のデザインが特徴的なリトルバード。単なる見守り時計ではなく、AI予測型の次世代端末としてアワードを受賞した。

また、多くの人を集めていたのがスマートグラスのブース。コンパクトなメガネですが、ナビやリアルタイム翻訳、カメラ撮影やAIとの会話などスマホのようにあらゆる機能を搭載しており、体験するために多くの人だかりができていました。工場での活用を想定された製品もあり、作業経験が浅くてもスマートグラスがサポートしてくれるなど、すでに現場で使われる準備は万全であるように感じさせます。


筆者も行列を経てついに体験。AR技術を使い視界の中に情報を表示することができる。

スタートアップ企業が集まるEureka Park
示されるのは、「近い未来の新たなスタンダード」


CESは大手企業だけでなく、スタートアップ企業のお披露目の場でもあります。全体で約4,100社の出展企業のうち、約1,400社がスタートアップ企業で、Eureka Parkというエリアに集まります。Eureka Parkでは、華々しい大きなイノベーションでなくても、「こんな製品があれば、もっと生活が豊かになる」という具体的なソリューションのアイデアがあふれ、技術と社会の接続点がより身近な形で示されていました。

スマートアパレル(電子機能を持つ衣類)のスタートアップ企業・Mode Wearables社は、スマートウェアを展示し、CES2026のイノベーションアワードを受賞。ポケットにスマートフォンを入れるとワイヤレス充電できるだけなく、ウェアラブルエッジコンピューター、インテリジェント温度制御、プログラム可能な照明などを備える、ユニークな多機能ジャケットを紹介した。

もちろん、スタートアップ企業が単体で大型イベントにチャレンジするのは、費用面でも言語面でも難しいケースが多いのが現状です。それをサポートするのが、ベンチャーキャピタルや大学、各国の政府など。支援側の団体が数十社分のエリアを確保し、そこで選定されたスタートアップ企業が出展できるというシステムにより、スタートアップ企業が育つ環境が整っていました。

JETRO(日本貿易振興機構)が運営するEureka Parkのジャパンパビリオンの一つ。中国や韓国の存在感が増す中、ジャパンパビリオンのブースには、なんと椅子がない…!積極的にコミュニケーションを図る日本のスタートアップ企業の姿勢が、印象的でした。

おわりに CES 2026を読み解くためのキーワード


CES2026を振り返ると、注目展示のほぼ全てが持つ共通項が見えてきました。それは各展示が誰かの社会課題を解決する策そのもの、もしくはその根幹となる技術であった点です。各出展社は自社の強みを生かし、マイノリティーからマジョリティーまでさまざまな人や業界が抱える課題の解決策を提示しており、今後のトレンドになり得る技術ほどこの特徴を持っていました。この構造は企業が取り組むPRのアイデアに非常に似ており、多くのメディアや企業トップが参加するCESは、まさにPRの絶好の場になり得ると感じています。

最後に、本記事で触れてきた今後のテクノロジートレンドを語る上で押さえておきたいキーワードを改めてご紹介します。

IX(インテリジェント・トランスフォーメーション)
DXの次の段階として語られる概念で、DXによって整備されたデジタル基盤やデータを前提に、AIが自ら考えて判断・最適化・自律制御までを担うことを前提とした社会・産業構造への転換のこと。効率化ではなく、意思決定の在り方そのものが問われる段階に入っています。
フィジカル AI(Physical AI)
AIがカメラやセンサーを通じて現実世界を認識し、デジタル情報として理解して、ロボットや自動運転車などを物理的に動かし自律的な行動を実行させる技術領域。認識・判断・行動が一体となったAIが、社会の中に配置され始めています。
デジタルツイン(Digital Twin)
現実世界で行ってきたシミュレーションを、デジタル空間上でより自由に行うための技術。事故や異常系も含めて検証できることで、社会実装のスピードと安全性を高めます。
ロンジェビティ(Longevity)
単なる健康管理や疾病予防にとどまらず、長期的な身体・精神・生活の質を維持・向上させることを目的とした考え方。無意識の計測やデータ統合を通じて、「より長く、よりよく生きる」ためのライフテックが重要なテーマとして浮かび上がっていました。
ヒューマンセンタードAI(Human-Centered AI)
直訳すると、「人間中心のAI」。AIを技術の中心に置くのではなく、人の行動や判断、感情を起点に設計する考え方。操作させるAIではなく、自然に寄り添うAIが前提となりつつあります。

CES 2026は、これらの言葉が単なる概念ではなく、すでに現実のプロダクトやサービスとして立ち上がっていることを示していました。数年後の当たり前は、すでにこの場で形になり始めています。

執筆者 林紅/川畑芽朗/武内恵理

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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PRX編集部
電通グループ内のPR領域における専門会社「電通PRコンサルティング」が運営するオウンドメディアです。1961年の創立以来、国内外の企業、団体をサポートしてきた経験・実績をベースに、電通PRコンサルティングならではの視点で、PRの基礎から最新PRトレンドやソリューションまで幅広くお届けします。

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