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技術広報とは? 必要な理由と成功事例、始め方のポイント

技術力があっても、それが伝わらなければ企業価値として十分に評価されません。
今、注目される「技術広報」とは、BtoB、BtoCを問わず、自社の研究開発や技術情報を社内外に発信する広報活動です。
重要なのは、技術が分かりやすくキチンと伝わる情報にし、その技術情報がキチンと届く手段を使うことです。

本記事では、技術広報が求められる背景、効果的な発信先、先行企業の事例、実践のポイントを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ今、技術広報が必要なのか
  2. 2.技術情報は、どこで受け取られているのか
  3. 3.先行企業は、技術広報をどう実践しているのか
    1. 3.1.メルカリ:技術者の発信を生かし、相手に応じて編集する
    2. 3.2.KDDIアジャイル開発センター:コミュニティー起点で信頼を築く
    3. 3.3.アイシン:社会課題との接点から、技術の意味を伝える
  4. 4.事例から見える技術広報のポイント
  5. 5.技術広報に取り組むなら、どこから始めるべきか
  6. 6.まとめ

なぜ今、技術広報が必要なのか


技術広報が必要とされる背景には、技術そのものの不足ではなく、技術が伝わっていないことに課題があることがあります。

電通PRコンサルティングが2025年に実施した『技術広報に関する実態調査』では、技術者の約7割が、技術情報を効果的に“発信できていない”と回答しました。

「研究開発力や技術力への世間の評価は、実績以上に発信のうまさが決め手になると思う」「研究開発力や技術力はあるのに、発信の仕方が拙くてもったいないなと思う企業がある」「研究開発力や技術力はあるのに、情報発信していなくてもったいないなと思う企業がある」といった認識も見られます。

つまり、課題として浮き彫りになっているのは、「発信内容」と「発信の仕方」です。

Q.企業の研究開発や技術に関する情報発信について、下記のそれぞれについてそう思う度合いをお答えください。


出典:「技術広報に関する実態調査」(電通PRコンサルティング、2025年)

さらに、研究開発や技術情報の発信が「以前よりも積極的」と答えた企業の約7割で「契約増、売上増につながった」と実感。また、技術部門と広報部門が連携し両部門の親和性が高まることが、技術者の自社への誇りや、就労意欲につながることが示唆されました。

技術広報は、経済的価値への寄与だけでなく、組織内のエンゲージメントにもよい影響を与える取り組みなのです。

技術情報は、どこで受け取られているのか


技術広報では、「何を発信するか」と同じくらい、「どこで発信するか」が重要です。

同調査では、技術に関わる決定権者が参考にしている情報源として、同業者のコミュニティー、取引先などと構築したリレーション、展示会や勉強会などのイベントを挙げる人の割合が高くなっています。また、オウンドメディアでは企業ウェブサイト、アーンドメディアでは学術誌や科学誌、専門紙・誌の記事、専門性の高いウェブメディアの記事を情報源としている人が多くなっています。一方で、ビジネス紙・誌、TV、一般ウェブメディアも決して低い数値ではなく、アーンドメディアを活用した多様なメディアへのアプローチは重要です。

Q.あなたは企業の研究開発や技術に関する情報を、どのような情報源から知ることがありますか。
(※自社の製品・サービスに、他社技術を採用する権利を持つ技術部門の決定権者)

出典:「技術広報に関する実態調査」(電通PRコンサルティング、2025年)

この傾向から分かるのは、技術広報では、まずはターゲットとなるコミュニティーにその技術情報が届く手段を使うことが重要だということです。その上で社会へと展開していく考え方が求められます。

先行企業は、技術広報をどう実践しているのか


技術広報のやり方は一つではありません。企業の規模、事業、届けたい相手によって、適した方法は変わります。ここでは、技術広報に積極的に取り組んでいる3社の事例を見ていきます。共通しているのは、技術者本人の専門性や熱量を生かしながら、広報や組織がそれを支え、必要な相手に届くようにしていることです。

メルカリ:技術者の発信を生かし、相手に応じて編集する

メルカリは、フリマアプリを中心とする大規模なサービスを展開するテック企業です。開発組織の規模も大きく、扱う技術領域も広いため、技術広報は求人情報だけでなく、技術力そのものを社外に示す役割を持っています。メルカリは、社外技術者からの評価も高く、一般社団法人日本CTO協会が実施する「開発者体験ブランド力調査」でも上位に定着しています。

同社は、「発信そのものが業界に対する還元につながる」という思想を共有しつつ、メンバーやチームの自発的な活動を広報が支援して発信を取りまとめる体制を敷いています。企業、技術者、外部コミュニティーの三方良しの状態を目指している点が特徴です。

具体的には、公式ブログの「Mercari Engineering」や「Mercari Analytics Blog」は技術者自身が執筆し、社外の技術者や経営層、技術コミュニティーなど幅広い読者に向けて発信する場合は、専門性や熱量をそのままコンテンツに反映させています。

一方で、「Mercan」や「メルカリ新卒採用note」では、専任の編集チームが社員を取材し、第三者的な視点で深掘りすることで、技術の再解釈や分かりやすいコンテンツづくりを行っています。広報は、散らばった情報を集約する情報集約機能を果たしているともいえます。

また、発信は記事だけではありません。膨大なアウトプットを公式ブログやSNSアカウントに集約しながら、大小さまざまなイベントへの参加・協賛、年次カンファレンス、YouTubeなども組み合わせています。イベントの告知から開催後のレポートやSNS発信までを継続することで、技術コミュニティー全体に対する企業のスポンサーシップを印象づける発信にもつなげています。

KDDIアジャイル開発センター:コミュニティー起点で信頼を築く

KDDIアジャイル開発センターは、アジャイル開発を強みとする開発会社です。KDDIからの分社化後、社名認知と開発者同士のコミュニケーションが課題として顕在化していました。そのため、技術広報は会社を知ってもらうことと、社内外の技術者をつなぐことの両方を担うようになります。

同社の技術広報の特徴は、オープンプラットフォームの技術情報発信コミュニティー「Qiita」のOrganizationアカウント活用です。初期の投稿を主導した御田稔氏を中心に全社的な投稿促進を展開し、アウトプッターを急増させる成果がありました。

分社化後、コミュニケーションターゲットを明確化して事業ターゲットに定め、その手段としてQiitaをフル活用した結果、社名認知向上、アウトプット文化の定着、部署や案件またぎの社内交流の活性化、新人や中途入社者とのコミュニケーションのきっかけとしても機能しています。

Qiitaで築いた信頼性を武器に、その後はイベント、Podcast、コミュニティー勉強会、社外講師活動、書籍、note運用などへと多角展開しています。社外技術者にも開放したオンライン勉強会や、技術者個々のアウトプットの場としてのnote運用など、コミュニティー同士をつなぐ役割も果たしています。限られたリソースの中で、ターゲットと手法を明確化する戦略の好例です。

アイシン:社会課題との接点から、技術の意味を伝える

アイシンは、自動車部品を中心に幅広い事業を展開するメーカーです。その中でYYSystemは、社内開発していた音声認識技術を、コロナ禍を機に聴覚障がい者向けの支援ツールとしてリリースした取り組みです。低予算の新規事業の位置付けながら、開発リーダーのXでの活動を起点にユーザーコミュニティーを形成し、聴覚障がい者の要望から企業・団体への普及が進む共創サイクルを確立しました。

YYSystemは、発話や環境音を可視化して聴覚障がい者の意思疎通を支援するスマートフォンアプリです。もともとは業務の会話をナレッジとして蓄積するための音声認識システムでしたが、障がいのある社員の声を受けて開発方針を変更しました。当初は自社工場での使用を念頭に開発し、複数話者の混在や騒音といった高負荷環境でも高い認識精度を実現。31言語の翻訳機能も搭載しています。さらに、利用者の要望を基に、シンプル版や環境音の可視化ツール、受付向け字幕装置などへとラインナップを広げています。

この事例のポイントは、ユーザー一人一人の「こんな機能が欲しい」「こんなことで困っている」といった要望をXで積極的に吸い上げ、柔軟かつ迅速に反映していることです。無償で使用したユーザーが、所属する企業・団体・自治体・学校などに対してサービス導入を要望するプル型のサービス展開にもつながっています。

さらに、2025年1月には東京2025デフリンピック協賛を発表し、「世界に字幕を添えるプロジェクト」を展開しました。これを契機に、これまでの対顧客やコミュニティーを超えて、開発背景や技術優位に切り込む良質な露出が一挙に増加しています。親和性の高いトレンドを活用しながら、広報が開発背景をストーリーテリングすることで、アーンドメディアをはじめ幅広くリーチする情報発信を実現した事例といえます。

事例から見える技術広報のポイント


これらの事例を通して見えてくることは、大きく3つあります。

1つ目は、技術広報における強力なコンテンツは自社の技術者であるということです。技術者やコミュニティーに対しては、技術者本人の専門性や熱量をそのままコンテンツに反映させることが望ましいと考えられます。

2つ目は、ターゲットを意識したコンテンツ設計が必須だということです。学生や求職者に対しては、広報が社会的な視点を持って、内容を分かりやすく整えることが重要です。広報セクションと技術セクションの連携施策も、社会価値を訴求するストーリー設計において重要な意味を持ちます。

3つ目は、コミュニティーへのアプローチを意識したオウンドメディアやプラットフォームでの発信が非常に重要だということです。求職者や学生、顧客向けには「note」「X」が有効であり、技術者やコミュニティーへのアプローチにおいては、「note」「X」に加え、「Qiita」「zenn」を併用した使い分けが望ましいと考えられます。

技術広報に取り組むなら、どこから始めるべきか


自社で技術広報を考えるとき、出発点として重要なのは、誰に届けたいのかを先に決めることです。自社の製品・サービスに他社技術を採用する権利を持つ技術部門の決定権者なのか、広く社会なのか、求職者や学生なのかによって、伝えるべき内容も手段も変わります。

次に必要なのは、技術者本人の専門性や熱量をどう伝えるかを考えることです。技術者向けやコミュニティー向けには本人の言葉を生かし、学生や求職者向けには広報が第三者的な視点で深掘りし、分かりやすいコンテンツへと整える。この役割分担が重要です。

そして最後に、広報をリリース作成やファクト・表現チェックだけの機能にとどめないことです。広報主導で技術部門と連携し、技術者に前に出てもらうことで、技術者本人の自己成長、離職率低下、コミュニケーションの活性化など、組織のエンゲージメント向上にも寄与できる状態をつくることができます。メディアに情報提供を行う際には、技術やサービスに「逆説的言い回しはできないか」「出せる数字はないか」「社会的な視点を付与できるか」「相性の良いトレンドはないか」といった視点を持つことも有効です。

まとめ


技術広報とは、技術をただ紹介する仕事ではありません。技術を、届けたい相手に伝わる情報に変換して届け、その結果として事業や組織によい循環を生み出す仕事です。技術が優れていることと、技術が伝わることの間には大きな隔たりがあります。その隔たりを埋めるのが技術広報です。

実際、技術広報が機能している企業では、広報が情報のハブとなり、技術者の発信を活かし、コミュニティとの関係が育っています。そこで生まれるのは単なる情報の露出ではなく、技術が理解され、信頼され、選ばれる状態です。技術があるだけでは評価されにくい時代だからこそ、技術をどう伝えるかは、企業価値そのものに関わるテーマになっています。

電通PRコンサルティングでは、技術や研究開発の強みを、誰に・どのように伝えるべきかという設計から、伝わる形への編集、発信先・発信方法の検討まで一貫して支援しています。技術広報の方向性や進め方に悩まれている場合は、ぜひ一度ご相談ください。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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PRX編集部
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電通グループ内のPR領域における専門会社「電通PRコンサルティング」が運営するオウンドメディアです。1961年の創立以来、国内外の企業、団体をサポートしてきた経験・実績をベースに、電通PRコンサルティングならではの視点で、PRの基礎から最新PRトレンドやソリューションまで幅広くお届けします。

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