共創思考の「ナラティブ」で企業ブランドをデザインする(シリーズ「今なぜ企業ブランドなのか」その2)
今、注目の「企業ブランディング」。PRXマガジンでは、関連キーワード(※1)紹介や「企業ブランディング」実践の考え方について(※2)、紹介しています。
今回のテーマは「ナラティブ(narrative)」。情報流通構造が多次元化するメディア環境において、 企業発信による情報は、受け手視点での文脈変換と再発信 を余儀なくされ、予期せぬパーセプションを形成する事もあります。だからこそ、受け手の「ナラティブ」に寄り添ったアプローチに注目が集まっていると考えました。「ナラティブ」アプローチによる「企業ブランド」の在り方について、「企業広報戦略研究所(C.S.I.)」副所長の末次が紹介します。
なお電通PRコンサルティングでは、このたび新たに「『ナラティブ』化に向けた企業ブランディング・プログラム」を開発しました(※3)。お客様の企業ブランド育成を支援し、新しい企業成長へといざなうプログラムです。当記事と併せてご覧ください。
(電通PRC‐PRX事務局)
(※1)「パーパスは『人々が手を取り合うための合言葉』」
(※2)シリーズ第1回「企業ブランドでモノを売る!」
(※3)「『ナラティブ』化に向けた企業ブランディング・プログラム2.0」
その他関連記事のご案内
目次[非表示]
最近、企業ブランドを「ナラティブ」で構築することに注目が集まっています。またもや“コンセプト”とか“コンセンサス”とか“アカウンタビリティ”とかいった業界特有のカタカナかと思いきや、「ブランド・マネジメントにおける手法」につけられた言葉のようです。もともと「ナラティブ(narrative)」とは、「ナレーター」とか「ナレーション」の語源であり、日本語では、「物語」とか「語り」と訳されます。
元来われわれが使っている企業PRの「ストーリー」という言葉と使い方が似ているようですが、何が違うのでしょうか?
「ナラティブ」と「ストーリー」の違い
そもそも、PRコミュニケーション・コンサルティングを生業とする企業がよく使う「ストーリー」とは、「物語」という意味合いで、企業(や商品・サービス)が自身を語る際に、起承転結を持って、物語性を付加して伝えていくことを指します。コミュニケーションのターゲットに理解いただきやすくするために、企業のパーパスから歴史・変遷を経て、企業目標、未来像までを紡いでいくものであり、企業自身の口から語られるものと言っても良いでしょう。
対して「ナラティブ」とは、企業自身の視点だけでなく、企業にまつわる第三者視点も含めて語られるもの。すなわち、情報の発信者(企業)視点と受け手(生活者、メディア、ステークホルダー等)視点との「共創」が織りなすクリエイティブなアプローチ手法だと言えます。また、情報の受け手側からすると共感性を刺激するコミュニケーション領域でもあります。
つまり、それぞれのステークホルダーの立場や利害関係性から生まれる「文脈」を通じて、企業が有する「ファクト」に対する共感性、共鳴性を語る手法と言っても良いでしょう。
経営と広報PRの接点、それが「コーポレート・ナラティブ」
ここまでご紹介してきた「ナラティブ」。
ではこのナラティブ手法を導入する事で、企業ブランドにおいては、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?
それは、例えば、
「企業ブランドへの高い共感性を生みやすくなる」
「日常的な企業広報活動との連動性が高まる事で、効果的な広報活動が実現しやすくなる」
「主要なステークホルダーという外部視点からのレピュテーションを立体的に把握、マネジメントすることで、企業経営に有益な社会視点を導入できる」
などが挙げられます。
一方で、広報パーソンは日常的に、メディアやステークホルダーという第三者的視点や社会視点をもって、「自社の常識/文脈」を相対化し、客観的に物事を捉え、語るべき文脈を創出・提案する能力を育み、発揮しています。つまり、この「ナラティブ」は、日常的な広報PR業務領域の延長にある活動であることがわかります。
「ナラティブ」アプローチの企業ブランディング、それは「経営機能」としての「企業広報」活動のひとつと言っても良いかもしれません。例えば、近年、社会に様々な話題を提供している、スタートアップ企業の活動事例を見てみましょう。
かれらは、「ルールメイク/ルールチェンジによる新市場創造」に取り組みながら、大きな成果を生み出しています。こうした企業は、まず、自社が解決に貢献できる社会課題領域を定める為に、独自の社会的なアジェンダ設定をおこない、社会との接点、ステークホルダーとの接点をデザイン。これらを支えるファクト情報を武器に、情報の語り手(共感の生み手)を生み出し、育成に挑戦しています。こういった企業の場合は、既に、経営機能と広報PR機能が「ナラティブ」を通じて一体化していると言っても過言ではありません。(※)
なお、この点については、下記の記事で事例とともに詳しく紹介しているので、是非、下記リンク先の記事をご覧ください。
(※) 「新市場創造の為のルールメイキングと企業成長」
企業ブランディング事始め~ナラティブ・アプローチ
企業ブランディングにおいては、自社の社会における存在意義を明確にし、社会との関わり方を対外的に強く宣言することが重要であり、現状では企業広告やオウンドメディアを通じたアプローチも数多く見られます。各社広報部門においては、各種の企業活動をファクトとして、社会課題を切り口にしたコミュニケーションなども数多くみられるようになりました。
が、残念ながら、いずれの分野においても、企業自身が選挙活動さながらに、「われわれは皆さんのためにこんないいことをやっています」と自ら声をあげるような情報発信が多いのも事実。結果、社会の声に応える姿勢、社会の一員として寄り添う姿勢を表現できておらず、社会やステークホルダーとの共感獲得に至らないという事も少なくありません。
そこで、改めて、企業経営に資する広報PR・コミュニケーション活動の一つとして、「ナラティブ」アプローチの導入を検討してみては如何でしょうか?多様なステークホルダーに対応しなければならない現代社会に適応したアプローチ手法として、当手法を採用する価値は大いにあろうかと思いますし、併せて、ステークホルダーと共に歩む企業姿勢を伝えることを通じて、共感性を高めることができる、効果の高い企業ブランディング手法と言えるのではないでしょうか。
なお、この「ナラティブ」を導入するにあたり、最も重要な事は、「語る人の言葉」が実際の「企業パーパス」とリンクし、共感されるものでなければならないということ。私たちは、この「企業パーパス」に基づいた「ナラティブ」アプローチを推進するヒントこそが、これまで取り組んできた、「企業価値づくり広報」研究の中にあると考えています。この点については、ただいま、様々なケース事例研究や調査を進めていますので、詳細については、また折を見てご紹介していければと考えています。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
電通PRC‐PRX事務局よりご案内
関連記事:「PR志向のナラティブで、パーパス経営の実装へ」
「『ナラティブ』化に向けた企業ブランディング・プログラム2.0」初公開
電通PRコンサルティングでは、このたび新たに、お客様の企業ブランドや商品ブランドのコミュニケーションを支援する、「『ナラティブ』化に向けた企業ブランディング・プログラム」をご用意しました。上記より、ぜひご覧ください。
加えて、ブランド・コミュニケーションや情報流通構造のハブ機能として注目される「企業のメディア化」に対応したお役立資料、「企業ブランドの為のオウンドメディア戦略 」もご用意しております。併せてご覧ください。