トップコミュニケーションで注意することは?元記者が解説する「3つのポイント」
リーダーシップにおける「トップコミュニケーション」の重要性が今、改めて注目されています。
多くの組織において、リーダーが明確なビジョンを伝えられない場合、その影響が大きく出ることも。特に、リーダーシップの欠如やコミュニケーションの不備が組織全体に与える影響は計り知れません。
今回は、トップコミュニケーションに必要な「3つのポイント」について、元記者でもある、電通PRコンサルティングの小野真世が解説します。
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重要性が増す「トップコミュニケーション」
2024年夏の米国の大統領選。現職大統領が選挙戦から撤退するという新しい局面を迎えました。各種報道によると現職大統領が再選出馬を断念するのは1968年のジョンソン大統領(民主党)以来56年ぶりだそうです。
断念のきっかけとなったのは、候補者同士のテレビ討論会でした。バイデン米大統領が討論会中に言葉に詰まったり、うまく反論できなかったりしたとして発言やふるまいを不安視する声が急増しました。
世界の行く末を左右する米国大統領はもちろんのこと、リーダーにとって大事なのは自分が組織をどう引っ張っていきたいのかという考え、ビジョンを示し「安心感」を与えることでしょう。「この人に未来を任せたい」「この会社に投資をしたい」と思ってもらうためには、「明確なビジョン」を自分の言葉でしっかりと語ることが欠かせません。
電通PRコンサルティングの「企業広報戦略研究所」の企業魅力度調査で、企業に魅力を感じる項目を聞いたところ、約半数の生活者が「ビジョンを掲げ、業界をけん引している」「チャンレジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる」を挙げました。調査は過去複数回行われていますが、これらの項目は常に上位にランクインしています。
ビジョンを明確に伝えるリーダーがいることは、生活者がその企業を魅力的に感じる、つまり、企業が良いレピュテーションを獲得する大事な要素です。
「自分なりに伝えているつもりだが、なかなか手応えがなくて……」
新たに就任した企業の社長や人事異動でリーダー職に就かれた方の中には、同じような悩みを持つ方もいるのではないでしょうか。
リーダーが押さえておくべきトップコミュニケーションの基本的なポイントは、3つあります。
トップコミュニケーションに重要な「キーメッセージ」
意識すべきはなんといっても「キーメッセージ」です。見出しに立ちやすいような端的で分かりやすいキーメッセージは、そのままメディアに取り上げられる傾向がありますし、従業員などステークホルダーにも伝わりやすくなります。
メディアからの取材を受ける前の準備事項として、キーメッセージの作成も検討してみましょう。もちろん、作成したメッセージは他の場面でも活用可能です。
また、尋ね方は異なっても、トップの記者会見やインタビューで必ずと言ってよいほど聞かれる質問があります。
回答を準備する際には、トップご自身の
●「過去」(どういう分野で仕事に取り組んできたのか、何を学んできたのか)
●「現在」(就任の感想、企業の課題感)
●「未来」(この組織、会社をどうしていきたいのか)
に分けて考えてみると、イメージしやすいかもしれません。
就任時には、「未来」「現在」は広報担当者含めて入念に準備されることがほとんどですが、「過去」もよく聞かれるのが特徴です。これまでご自身が大事にしてきたことを会社経営にどう生かしていくか、「その人らしさ」を出すのがポイントになります。
そして、就任後は通常、「現在」と「未来」が中心となります。特に「未来」はメディアにとっても関心の高い事項です。この会社をどうしていきたいのかをしっかりと伝えなければなりませんが、よく考えているトップであればあるほど、言いたいことが山ほどあるはず。そういう思いをあれもこれもと詰め込んでも、残念ながら相手には伝わりにくいことが多いです。目指すのは端的に言い表す「一言」「一文」です。
前述の「明確なビジョン」とは、聞いている相手にイメージが明確に伝わらないといけません。思い描く未来を一言で表現できるような分かりやすいメッセージを自分の言葉で言えるようにぜひ準備してみてください。
ほかの企業がどのようなキーワードを使っているのかを参考にするのもよいでしょう。もしくは、ご自身がよく読む書籍の中に出てきた言葉にヒントがあるかもしれません。広報部門など社内で考えたキーメッセージを社長が代表して広めていくのも方法の一つです。
どの場合もまず一度、ご自身の中でしっかりかみ砕く作業をすることで、ご自身の言葉、メッセージとして発信できます。簡単な作業ではありませんが、ぜひチャレンジしていただけたらと思います。
トップコミュニケーションでは「ノンバーバル」にも注意
キーメッセージ作成についてお伝えしてきましたが、言葉以外の表現、つまり「ノンバーバル」も忘れてはいけません。むしろ、「ノンバーバル」が伝える要素の方がコミュニケーションに大きく影響する場合もあります。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによって提唱された「メラビアンの法則」によると、人と人がコミュニケーションを図る際、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で、相手に影響を与えるそうです。
例えば、インタビュー時の服装です。ご自身によく似合う服装であることが一番ですが、スーツやシャツにしわがないか、ネクタイの色は適切かなどを第三者(広報担当者など)に必ずチェックしてもらいましょう。
ちなみに、メディアのインタビューであってもカメラマンが同行するとは限りません。記者も普段からインタビュー写真なども含めて撮り慣れていることが多いですが、ストロボなど専門的な機材の用意がない場合もあります。誰が来ても良い写真がある程度撮れるように、インタビューの実施場所、背景など写る要素の構図を検討しておくのをお勧めします。
逆光にならないように配慮するのはもちろんですが、トップが座るソファは深過ぎると撮影の仕方によっては尊大なイメージにつながります。背景がカラフルな色だったり、派手な模様が入っていたりするとトップ自身の顔が暗く見えてしまう可能性もあります。一度インタビュー予定の部屋でシミュレーションしておくとよいでしょう。
また、自社の商品やロゴが室内にある場合は、どこに置けば写真に写り込みやすいかなどを広報担当者から提案すると喜ばれることもあります。
トップコミュニケーションに求められる”デジタル化”
ここ最近の報道を見ていると、企業の事業に関する取り組みと世の中の関心領域とのつながりを意識しながら発信をしているトップが多いように思います。
デジタル化やAIへの取り組み、SDGsなど世の中のスピードに合わせて企業の注力領域を変えていくことも求められます。自社が現在の世の中に存在する意義をどのように捉え、どう貢献していくのかについても言語化できると理想的です。
もう一つ忘れてはいけないのが、「動画」への対応です。YouTubeなど動画メディアはトップのコミュニケーションにおいて欠かせないツールとなって久しいです。
YouTubeなどでは、企業の会見をノーカットで手軽に見ることができるようになりましたが、生活者が会見などを自らじっくり見て、企業やトップに魅力を感じるということはなかなか期待できません。トップのメッセージをより多くの人に見てもらうには、短く分かりやすい言葉やチャレンジ精神にあふれた姿勢を魅力的に伝え、キャッチーなコンテンツに作り上げることがますます重要になってきます。
当然語り口は、先述のキーメッセージに基づき、自分の経験や知識をベースに自分らしい言葉で語っていくことが求められます。
実際の事業活動の中での言葉を使えるのがベストですが、特徴のある言い回し、いわゆる「バズるキーワード」を作ることができるとより良いかもしれません。
そして、動画は新聞やテレビと違い、インターネット上にアーカイブとして残せるというのもメリットと言えます。
キーメッセージにしろ、動画でのキーワードにしろ、自分の言葉でそれらをつくり出していくには「戦略」と「練習」が必要です。
電通PRコンサルティングではその両方をサポートするプログラムをご用意しています。また、各企業の新社長就任時のコミュニケーションと、その報じられ方を独自分析した事例レポートも販売しています。トップコミュニケーションについて、お悩みの部分あればぜひご相談ください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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