日本のPRは海外で通用するのか?広報・マーケ担当者が海外PRで押さえるべき4つのポイントを解説

海外でPRを始めようとすると、多くの日本企業はまず言語の壁を課題に挙げます。しかし実務で本当に重要になるのは、言語以上に、日本とは異なるPR環境を正しく理解することです。

海外PRと一口に言っても、その進め方はターゲットとする国・地域だけでなく、業界やコミュニティ、ステークホルダーによっても大きく異なります。従って、どこでも通用する万能の正解があるわけではありません。

そこで本稿では、海外でPRを実施する際にまず押さえておきたい基本の視点を、4つのポイントに絞ってご紹介します。

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目次[非表示]

  1. 1.メディアとの関係構築
  2. 2.重視する情報
  3. 3.リスク対策
  4. 4.商習慣の尊重

メディアとの関係構築


メディアと関係を構築するときの考え方の大前提として、日本では多くの場合メディアを組織として捉える傾向があるのに対し、海外ではメディアをジャーナリスト個人と捉えることが多いという違いがあります。背景には、日本企業がジェネラリストを育てる傾向があるのに対し、海外ではスペシャリストを重視する文化が強いことが影響しています。

日本では大手メディアを中心に、記者がキャリアの初期に地方に配属されることも多く、配属や担当分野を比較的短いスパンで入れ替えながら、幅広い分野で経験を積む環境が整っています。加えて、日本の報道現場には記者クラブが置かれ、会見・発表・レクなどがニュースの重要な入り口になってきたという独特の慣習もあります。こうした構造の中では、記者個人との関係性に加えて、組織としてのメディアとの間で関係を築き、記者の異動を前提に、継続的に企業から情報提供できる状態をつくっておくことが重要になります。

一方、特にアメリカなどでは、長く同じテーマを追い続けてきた専門性の高いジャーナリストが取材現場の中心となることが多く、ジャーナリスト個人とのリレーションを軸にPR戦略を設計する必要性が高まります。そのため、「どのメディアにアプローチするか」だけでなく、「どのジャーナリストに、どのような情報を添えて、どの角度から伝えるか」を設計することがより重要になります。ジャーナリストの専門性・関心領域・過去の論点に合わせて、データ、事例、第三者の見解などの材料を最適化していく姿勢が求められます。

さらに、「Financial Times(FT)」など、国境をまたいで読まれるグローバルメディアを相手にする場合は、編集拠点が複数地域に分散している点も留意すべきポイントとなります。オンライン版では、読者のアクセスが多い時間帯を意識して記事公開を行うため、「どの地域の編集チームに、どのタイミングで届けるか」まで設計できるとより効果的です。

重視する情報


続いてのポイントは、発表内容における「Why」の重要性です。ジャーナリストがまず確認したいのは、「それは何か(What)」だけではなく、読者にとって「なぜ重要なのか(Why)」という点です。

この点を理解する上で示唆的なのが、Financial Timesアジア編集長のロビン・ハーディング氏の発言です。同氏は2021年2月9日、日本パブリックリレーションズ協会主催の講演で、オンライン記事の読まれ方について次のように語っています。

「現在、FTのオンライン記事では、短い記事か長い記事のいずれかでないと読まれません。読者はなるべく早く重要なニュースを得るか、特定の問題を深く考察したいと考えています。そのため、われわれは500ワードほどの短いニュースか、1800から2000ワードのフィーチャー記事を書こうと試みています。800から1000ワードの記事は好まれないのです。この手の長さの記事は、深く考察するには短過ぎ、ブラウジング(拾い読み)する読者には最後まで読み切れないのです」

この言葉は、海外メディアがストレートニュースを素早く報道するか、あるいは背景まで含めて深く掘り下げることを強く意識していることを示しています。

もちろん日本でも、背景情報や文脈の説明は大変重要です。ただ実務上は、新商品・新サービス・提携といった発表内容を正確に整理し、その事実を支えるデータを細部まで求められる場面も多く、まずは「何が起きたか(What)」を過不足なく整えることに力点が置かれやすい傾向があります。

一方で海外メディアでは、PR担当者との対話を基に、「ファクトを端的に伝える“アーティクル”ではなく“ストーリー”を書きたい」という志向がより前面に出やすくなります。従って、「市場や社会の変化の中で、その情報が読者にどう関係するのか」を明確に説明することが、ジャーナリストとの会話の出発点になりやすくなります。言い換えれば、海外PRでは“事実を伝える”だけでなく、事実に意味を与える文脈を設計することが重要になるのです。

また、これは日本にも当てはまることですが、情報発信の文脈を検討する際には、各国の主要アジェンダを意識することも欠かせません。例えば、ターゲット国の政府が失業率の改善や雇用創出を重要課題として掲げているのであれば、発表内容を「雇用拡大」や「人材育成」といった文脈に接続して説明する、といった設計が有効です。

さらに、単発の出来事や一時的なトレンドとして提示された情報は埋もれやすく、より大きな文脈——市場の構造変化やグローバルな社会課題(ソーシャルイシュー)——と結びつけて語られた情報ほど、理解されやすく、議論の土台にもなりやすいという点も押さえておきたいところです。

海外PRにおける「Why」とは、読者にとっての重要性を説明し、理解の枠組みを提供するための要となるのです。

リスク対策


PRにおいて批判や論争が起きること自体は、日本でも海外でも珍しいことではありません。ただし、同じ情報であっても、議論がどのように立ち上がり、どの程度の速度で広がるかには違いがあります。海外では特に、宗教、人種、文化といった発信を取り巻く社会の前提が複雑になりやすいため、より慎重にマーケットを理解した上で情報を設計する姿勢が重要になります。

海外では、ニュースが人権・多様性・環境・労働・文化・地政学といった社会的論点と結びついたときに、議論が「個別の問題」から「企業の姿勢や説明責任」へと広がりやすい傾向があります。さらに、生活者の反応にとどまらず、専門家やNPO・アドボカシー団体など、複数のコミュニティがそれぞれの観点で意見を表明することも多く、発信側は最初から多面的な見え方を想定しておく必要があります。

こうした前提を踏まえると、リリースやコミュニケーション・ツールは単なる直訳では足りません。重要なのは、相手の国・地域の文脈に照らして、伝えるべき論点と表現を組み替える「メッセージのローカライズ」を行うことです。

また、言語についても英語だけで完結させない姿勢が重要です。地域によっては英語が通じるケースもありますが、ステークホルダーの理解と信頼を得るためには、可能な限り現地の言語で丁寧に伝えることが、相手への敬意としても実務上の有効策としても意味を持ちます。

加えて、国や地域によっては、日本より厳格な個人情報保護規制や、特定領域(医療・ヘルスケア等)に関する広告・表示規制など、事前に把握しておかなければならないルールも存在します。こうした論点については、現地の法務・規制・コミュニケーションの専門家の見解を早い段階で取り入れることが肝要です。

また、「現地」と一口に言っても、地域内には多様なコミュニティがあります。人種・民族、宗教、ジェンダー、世代、政治的・文化的背景などによって、同じ表現でも受け取り方が変わることがあります。必要に応じて、ローカルの多様な視点を取り入れながら、どの点が誤解や反発につながり得るのかを学び、発信に反映していくことが重要です。

商習慣の尊重


海外というと、「とにかくスピードが命」「早ければ評価される」というイメージを持たれがちです。たしかに、対応の遅れが機会損失につながる場面もありますが、スピードは“速ければ速いほど良い”という単純な話でもありません。国や地域によって商習慣が異なり、連絡のタイミングを誤ると、かえって逆効果になることもあるからです。

例えば、国によってはビジネスアワー(勤務時間)を強く意識する文化があります。イギリスのように、仕事と私生活の線引きを重視する傾向がある地域では、クライシス発生時を除き、業務時間外の連絡が「緊急でもないのに私生活に踏み込んできた」と受け取られ、関係構築の観点ではマイナスに働く場合もあります。だからこそ、適切な時間帯に、相手の働き方を尊重して連絡するという基本姿勢が信頼につながります。

国や地域によって、メディアとのコミュニケーション手段や“好まれる距離感”も異なります。ソーシャルメディアやチャットで密接なやりとりを望まれるケースもあれば、ビジネスの連絡はプライベートと切り分け、メールのみで進めたいというジャーナリストもいます。海外PRでは、相手のスタイルを尊重しながら、適切な手段と頻度でコミュニケーションを設計することが大切です。

なお、リリースについても、国や地域によって好まれる体裁は大きく異なり、推奨されるタイトルの長さや見出しの付け方もさまざまです(メディアによっては、多様性の観点から、取り上げる人物の男女比に注意を払っていることがあります。そのため、リリース内の引用コメントの発言者の属性に偏りがないよう配慮することが、結果的に取り上げられやすさにつながる場合もあります)。

冒頭でもお伝えした通り、海外PRに絶対的な正解はありません。ターゲットとする国・地域、業界、コミュニティ、ステークホルダーを丁寧に理解し、その土地の前提に合わせて設計し直すことが何より重要です。そのために、ローカルの視点は必要不可欠で、中でも多様な人種・民族、宗教、ジェンダー、世代、障害の有無、政治的・文化的視点でチェックをしていかなければなりません。

こうした視点を手間暇かけて積み上げられれば、海外PRは「不確実で怖いもの」ではなく、設計して成果を積み上げられるものへと変わります。まずは各国のPRの専門家に相談しながら、現地で通用する“型”を磨き、自社の資産として蓄え、更新も怠らないようにしましょう。

世界は広く、同時に驚くほど近い時代です。広い視野でこの世界を見渡し、変化するグローバルの潮流の中で、伝えるべき価値を確かな形で届けていきましょう。丁寧に設計された言葉は、きっと国境を越えて受け入れられます。
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※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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PRX編集部
PRX編集部
電通グループ内のPR領域における専門会社「電通PRコンサルティング」が運営するオウンドメディアです。1961年の創立以来、国内外の企業、団体をサポートしてきた経験・実績をベースに、電通PRコンサルティングならではの視点で、PRの基礎から最新PRトレンドやソリューションまで幅広くお届けします。

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