「鬱憤構文」とは?世の不満を“言語化”する広報戦略のフレームワーク
「企業やブランドが世の中から信頼を得るために、問題を解決することが重要」とはさまざまな場面で語り尽くされていますが、その「問題を探して具体的に設定すること」自体が難しいと思ったことはありませんか?
今回は、世の中に存在する(けど、まだその問題自体に名前が付けられていたり、広く認識されているわけではない)個々人が感じる鬱憤(うっぷん)や不満、違和感などを、文章に当てはめることで問題を見つけやすくする「鬱憤構文」という、広報戦略のフレームワークを紹介します。
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フレームワーク「鬱憤構文」 で問題発見を手助け
こんにちは、PRX Studio Qの鶴岡です。肩書は「ソーシャルハンター」を名乗っています。
別の記事では「鬱憤」(7つの鬱憤)にフォーカスした視点で、生活者が抱える関心・問題やその裏にあるインサイトをソーシャルメディアの投稿から発掘する「ソーシャルハンティング」についてお話ししました。
この記事のように、「検索→気になる投稿を探す→世の中に存在する関心・問題を見つけて言語化する」という「ソーシャルハンティング」をやってみるとそれなりに時間がかかり、短時間でたくさんの仮説を考えるのは難しいものです。
そこで、「ソーシャルハンティング」をせずとも、まずは見聞きした情報や知識、過去の体験からの問題探しをサポートするフレームを開発しました。それが「鬱憤構文」です。
対象のテーマにまつわる鬱憤を連想し、「○○問題」や「○○説」といった世の中や特定の界隈にある関心・問題の仮説(=企業/ブランドが取り組む活動のヒントになるもの)を生み出すことができます。
まだイメージしづらいと思うので、ひとつ例を挙げてみます。
例えば「ゴールデンウイークにまつわる関心や問題を挙げてください」と言われたらどんなことが思いつきますか?いくつかはパッと思いつくかもしれませんが、それより先は止まってしまうと思います。
ですが、もし「この穴あき文章から考えてください」と言われたらどうでしょうか。
なんだか少し考えやすくなった気がしませんか(なってくれていると信じて)。例えば、上の鬱憤構文「~に、ストレスを感じる」につながる事柄を当てはめることで「ゴールデンウイーク」の関心・問題の仮説ができます。
では、次に「接客業で働く人にまつわる関心・問題を挙げてください」と言われたらどうでしょうか。ご自身が接客業で働いていたり、身近な人がいれば、普段見聞きする話や体験でたくさん思いつくかもしれません。そうでない場合、いくつも考えるのはハードルが高いものです。
では、また先ほどと同様に下記の鬱憤構文「~に、不安を感じる」から考えてみましょう。
また少し考えやすくなった気がしませんか? こうした“補助フレーズ”があることで、想像しやすく、考えやすくなります。
商品開発やコミュニケーション施策を考える上で、自分とは距離がある・ないテーマにかかわらず、発想をサポートします。
「鬱憤構文」の開発はソーシャルメディア分析がきっかけ
この「鬱憤構文」開発の経緯を少しお話します。 以前ご紹介した分析(いわゆる「ソーシャルハンティング」)ではソーシャルメディアの投稿から見つけた世の中の関心・問題の仮説を「○○問題」や「○○説」などと名付けて分かりやすく、具体化しています。それらを分類し、一定の型を見いだしました。
「鬱憤構文」は、鬱憤を7つに分類した「7つの鬱憤(WARPATH)」ごとに整理をしており、現在、約100の構文ができています。
「7つの鬱憤」とはー
感情が爆発する一歩手前の鬱憤が表れたソーシャルメディア(7つの鬱憤では特にTwitter)の投稿を狙い撃ちで検索するために、不満をまとうワードを整理し、「Want=欲求」「Anti=反感」「Request=要望」「Problem=困難」「Awful=悲観」「Tired=疲弊」「Hate=不快」の7つの感情をまとめ、それぞれの頭文字から「敵意のある」「けんか腰」の意味を持つ英単語の「WARPATH」で名付けたものです。
例えば、Want(欲求)なら「は、本当は(~し)たくない問題/説」「から、解放されたい問題/説」などがあり、Problem(困難)なら「は、仕方ないと諦めている問題/説」などの構文があります。
では、実際に「鬱憤構文」を使ってワークをしてみたので、どのように機能したのかお話します。
鬱憤構文を使ってワークショップをやってみた
「鬱憤構文」のカードを使って『社会人1年目が抱いているであろう関心や問題』をテーマに、関心・問題を出し合うワークショップを実施しました。ワークショップ形式でファシリテーターが1人立ち、他の5人が参加者の形です。5人の中には当事者でもある新入社員2人も参加しました。
ワークショップでは、配られた「鬱憤構文」カードに当てはめる形で、具体的に文章を作るブレストを行ったところ、下記ような仮説が生まれました。
テーマ:『社会人1年目が抱いているであろう関心や問題』
✔「何か相談するとすぐに「リモートじゃなければねぇ」と昔話が始まるのだけは、やめてほしい問題」
✔「リモートワークだと会社の飲み会経験が無く、今後飲み会の幹事をできる気がしない問題」
✔「学生生活の自粛で苦労したね・かわいそうだねと同情されることに、内心飽きている問題」
✔「リモートワークのため、先輩社員からおごられた機会がほとんどないのに、今度は後輩におごらなきゃいけないことに不満がたまっている問題」
✔「(自分たちもリモートは初めての経験なのに)”リモート慣れ”している、という幻想を抱かれがち説」
これらはごく一部ですが、30分ほどのワークで40個の仮説が生まれました。生み出す数が目的ではなく、あくまで「鬱憤構文」を元に発想するのが目的でしたが、短時間で予想以上に多くの仮説が出ました。参加者と距離が近いテーマだったことも要因かもしれません。
参加者からは「鬱憤構文があることでそこから逆算して案を出せた」といった発想面で機能したことが感じられる感想のほか、「自分の意見を言うのが苦手な人でもゲーム感覚で気軽に発言できそう」「自分の意見に対して共感がもらえるとうれしい」「他の人の意見を聞いてなるほど!と思った」などのフィードバックがありました。言語化することで、客観的な問題としてとらえることにもつながります。
他のテーマでも同様にワークショップをやってみたところ、多少難しいテーマでも「鬱憤構文」に当てはめる形で考えてみることで、さまざまな視点からの仮説を作ることができました。
今日から使える「鬱憤構文」10選
先ほど「鬱憤構文」が合計で約100個ほどあるとお話ししました。全部をここで大大大公開するのはちょっと難しいので、この記事では比較的シンプルで応用しやすい10個をご紹介します。
あくまで「鬱憤構文」は鬱憤を入り口とした企業やブランドが取り組む問題の着眼点を見つけるための演繹(えんえき)的な発想法であり、どの構文を使うのが正しいかなどは特にありません。むしろ、さまざまな構文を使って少しずつ違った角度から考えることが関心・問題を見つけやすくするポイントです。
そして、核心を突いていそうな仮説が見つかったら、正確なステップとしては「鬱憤構文」から生まれた仮説が本当にそうなのか、調査や当事者へのインタビューなど別の手段で検証した上で見極めることも必要です。
まずは、その糸口として、一人またはチームメンバーと一緒にブレストや思考する際に「鬱憤構文」を活用していただければうれしいです。
出典 https://note.prx-studio-q.com/n/ndf4e772982b5
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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