周年事業 企業・大学・自治体の事例で見る広報PRのポイント
企業や団体にとって周年は、ただ記念行事を行うだけでなく、組織の価値や理念を再定義し、社内外のステークホルダーに訴求する絶好の機会です。
特に、近年はパーパス経営の視点が重要視され、周年をきっかけに中長期的な成長戦略を描く企業が増えています。
本記事では、成功事例を通じて効果的な周年事業のポイントを解説し、持続的なブランド価値を築くためのヒントを提供します。
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企業の周年事業 各社の取り組みは?
近年、企業・団体が行う周年事業は、「パーパス経営」の推進や多様なステークホルダーとの関係構築を目的とした活動が増えています。
株式会社帝国データバンクの調査によると、2024年には日本国内で10年刻みの周年を迎える企業が13万社を超え、その中で100周年を迎える企業も約2,000社に上ります。
周年企業の主な取り組みとしては、オリジナル商品の発売や、特別キャンペーンの開催、記念サイト制作などのような例があります。
株式会社IDEATECH(本社:東京都港区、代表取締役社長:石川友夫)が経営者96名を対象に行った企業の周年記念に関する実態調査では、回答企業の65.6%が「周年に関するコンテンツ」の発信経験がありました。
発信経験がある企業のうち、85.7%がリードを獲得しており、周年施策による対外的な効果が明らかに。特に、「新卒」「中途・第二新卒」の求人応募に効果が見られ、周年は企業にとってPRの絶好のチャンスであるといえます。
出展:「アニピー」https://ideatech.jp/service/anniv-pr/
周年事業 変化する活用方法と「パーパス」
こうした周年事業ですが、近年、活用目的が変化しています。
2020年のコロナ禍以降、企業を取り巻く情勢が絶えず変化し、先行きの見えない時代において、「パーパス経営」を重視する企業が増加。
このようなパーパス経営への関心の高まりに伴い、企業の社会的意義を見つめ直し、複数のステークホルダー(顧客、従業員、投資家、コミュニティなど)に向けて企業の価値や理念を示す機会として、「周年」を活用する企業が増えてきています。
企業や団体は具体的に、どのように「周年」を活用して企業価値やマルチステークホルダーのエンゲージメント向上につなげているのでしょうか。コーポレートブランディングの事例を中心に紹介します。
周年事業 スタートアップ企業の事例
スタートアップ企業は創業からの年数が浅いということもあり、4周年など区切りの良い数字でなくても周年を活用する企業が見られます。
中途・新入社員が増える、事業規模が拡大するなどのタイミングで、創業の思いや社会的存在意義を改めて言語化するために、周年を活用してビジョン策定や浸透施策を行っている例が見られました。
事例1:株式会社ビズパ 4周年
創業4周年を機に新コーポレートミッション「もう広告で迷わせない」を策定し、併せてコーポレートバリューも改定したことをプレスリリースにて公開。今後を見据え、目指すものがブレないよう言語化しました。
また、ミッションおよびバリュー改定の目的や目指す姿についてnoteで発信し、社内外の理解を促進しました。
バリュー策定に当たっては社員合宿を開催し、「自分自身がどうありたいかという価値観」「できれば一緒に働く仲間にも持ってもらいたい価値観」などを発表することで、社員みんなが腹落ちするバリューを目指しました。
参考:Bizpa note記事 より
事例2:atama plus株式会社 5周年
5周年特設サイトを公開し、塾を中心とした取引先や新規顧客に向け、これまでの実績と今後の展開について発信しました。
また、Zoomウェビナーにて、4晩連続の5周年記念イベント「atama plusのこれまでとこれから」を開催しました。
ウェビナーでは共同創業者である稲田大輔CEOと中下真取締役をはじめ、各部門の担当者が幅広く登壇し、組織・カルチャー、ビジネス、技術、プロダクト開発など、さまざまな観点でatama plusの5年間を振り返り、企業の「これから」を伝えました。
参考:atama plus 創業5周年特設サイト より
周年事業 老舗企業の事例
創業から年月がたち、自社を取り巻く環境が大幅に変化したことを受け、自社がこれから向き合う社会課題と掛け合わせた文脈をつくり周年施策を行うことで、企業価値を高めようとする工夫が共通して見られます。
インターナル施策では、社員向けのイベント開催や、歴代社長との対話、社員寮の改革など、社内でのリアルな交流を重視する施策が行われる傾向も。これは、コロナ禍以降の社内コミュニケーション不足や働き方改革などが影響していることが考えられます。
事例1:戸田建設株式会社 140周年
2021年に140周年を迎えた戸田建設は、「未来ビジョンCX150」を策定し、特設サイトで公開。自社を取り巻く課題を整理し、目指す方向性を共有することを目的としています。
140周年のロゴマーク制定に向け、社員アンケートや意見投稿などのコミュニケーションを実施しました。
社内報では140周年を機に2021年夏号で「私たちが描く次の10年」を特集し、若手・中堅社員が多数登場して1人ずつ10年後の目標を発信しました。
参考:戸田建設未来ビジョン2030 多様性を力に より
事例2:川崎信用金庫 100周年
経営理念を改定し、職員向けの100周年記念式典で発表。「顧客・金庫・職員、三位一体の繁栄」に「地域」と「未来」の視点を新たに追加し、「五方よし」へと理念を高く掲げました。それに合わせ、一部支店を地域課題解決のための拠点として整備。職員寮に新たにサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や学生寮を併設することで、若者を呼び込み、地域活性化への貢献を目指しました。
また、川崎信用金庫100周年と川崎市制100周年を記念して取引先の中小規模事業者の商品を展示販売したほか、地域の事業者の太陽光パネル設置を支援する融資「かわしんサンシャイン」を開始し、地域の取引先企業の事業活性化や脱炭素化に貢献することを目指しています。
参考:かわしんディスクロージャー2023 より
周年事業 大学の事例
インターナルの施策では、学生活動の表彰やスクールソングの制作、インタビューなどさまざまな手法を用いて学生を巻き込み、エンゲージメントを高める工夫が共通して見られました。
エクスターナルの施策では、大学の拠点となる地域に根差した活動や、卒業生など第三者とのコラボ、優秀な留学生の獲得など、個々の大学で重要視しているステークホルダーに違いが見られます。
事例1:学校法人武蔵野大学 100周年
創立100周年記念事業メッセージ「響き合って、未来へ。」を策定し、特設サイトにて公開。
また、「『世界の幸せをカタチにする。』ため、私たちにできること」をテーマに、学生が実践する活動を表彰する「創立100周年記念アワードプロジェクト」を開催しました。
このほか、学部も学年も異なる学生・生徒や教師たちが、AIを活用したワークショップなどを通して、作詞・作曲し、武蔵野大学公式スクールソングを作成しました。
参考:学校法人武蔵野大学創立100周年記念事業サイト より
事例2:学校法人明星学苑 100周年
明星大学の新たなビジョンを体現していくためのファーストステップとして「多摩共創企画2023」と題する、4つの企画を展開。
記念講演会や、大学の研究を地域の企業に知ってもらう産学交流会など、地元・多摩地域に根差し、地域への貢献を重視した企画が実施されました。
地域へ感謝と共創のメッセージを伝えるツールとして、多摩モノレールで100周年記念列車「MEISEI 100」を運行し、明星大学の学生が車内装飾を行いました。
参考:明星学苑創立100周年特設ページ より
周年事業 自治体の事例
市民向けの施策では記念式典等のリアルイベントだけでなく、SNSやゲームなどのデジタルを活用した施策で市民を主体的に関わらせる工夫が見られます。
また、市民以外に向けた施策でもデジタルの活用によって幅広く発信し、特に次世代層への認知拡大に注力しています。
事例1:宮城県 150周年
県政150周年記念事業では、県民の愛着の醸成や地域の魅力の再発見、内外への発信を通した地域活性化を目的として80件以上のイベントやキャンペーンを実施しました。
将来を担う若い世代を巻き込む企画として、県内の高校生を対象に150周年記ロゴマークのデザインを募ったほか、県内に所在する大学等の学生を対象に県の魅力を探求し、県の将来を創造する活動企画を募集しました。
その中で、人気観光スポットをVRで体験できるプロジェクトなどが採択され、記念式典で活動成果を発表。VRプロジェクトは周年後の現在も続いています。
公式SNSも活用し、記念事業の取り組みの積極的な発信やオリジナルのハッシュタグを用いた県民参加型の写真投稿キャンペーンなどを実施しています。
参考:公立大学法人 宮城大学 ホームページ より
事例2:東広島市 50周年
広島大学などと連携して地域の社会課題などの解決に取り組む「Town(市) & Gown(大学)構想」を周年以前より実施。
「東広島市を舞台に1つの大きなビジョンを共有し、同じ方向を向いてみんなで取り組んでいこう」というもので、「持続可能なまちづくり」と「市域課題の解決」を目指し、新しい技術の実装やそれを支える人材育成のためのさまざまなプロジェクトを推進しています。
「構想に賛同した企業」と共にコンソーシアムを形成し、若者の視点を取り入れるためのワークショップの開催や、学生生活に便利なサービスを提供するアプリの制作など、産官学で連携し、次世代を意識した取り組みを行っています。
参考:東広島「市制施行50周年」より
周年事業 ポイントは「社内」と「社外」の相乗効果
これまでの周年は、トップダウンで掲げたコンセプトのもと、社外向けの発信に活用することが主な目的でした。
しかし、事例からも分かるように、コロナ禍以降の社会変化やパーパス経営への関心の高まりの影響で、社員の主体性や共感を生むことを意識した周年のコンセプトづくりや、社員を巻き込んだ施策の実施が見られるようになりました。
周年を機に、「自組織をどうしていきたいのか」を社内で言語化し共通認識をつくっていく過程が、組織のパーパス浸透とエンゲージメントの強化につながっていきます。
下記のようなサイクルで、「インターナル」と「エクスターナル」を両輪で推進することで、周年事業の相乗効果を高められるでしょう。
①:まずは、インターナルコミュニケーションとして、社員一人ひとりが理解・共感・納得し、意識や企業変革を実践するアクションを起こします。
↓
②:次にエクスターナルコミュニケーションとして、社外のステークホルダーに向けて、企業価値を認知・理解してもらいます。
↓
③:そして、社外に発信した情報や社外からの評判が社内に届き、社員の中に自信と誇りが生まれるようになります。
ワークショップで「共通認識」を言語化しよう
周年実施にあたり、みんなが腹落ちする共通認識をつくっていくのに有効なのが、ワークショップ形式での社員の思い・思考の言語化です。
電通PRコンサルティングでは、2つのワークショップを用意。現場社員の多様な視点から現在を紐解くことで、社員が共感する課題と解決のためのアクションを考える機会を創出します。
▼周年を起点に社員エンゲージメントを強化する「インターナルブランディング」ワークショップ
電通PRコンサルティングのワークショップ①:ビジョン・クエスト
周年で、「原点」と「ありたい姿」を探究することで、企業が大事にしていること、自分の大事にしていることを明確にします。
企業と自分の重なる部分を見つけることで、会社へのつながりを再確認できるようになります。
▼ワークショップ「ビジョン・クエスト」について詳しく読む
電通PRコンサルティングのワークショップ②:鬱憤構文
原点回帰とありたい姿が明確になったら、次は、現状の課題を社員が抱える鬱憤から紐解いていきます。
社員の共感が高い鬱憤を見つけ、社員同士で解決に向けてどうしたら良いか、発想することで、自分ごととしてアクションへの参加を促し、組織をより良くするための取り組みへとつなげます。
▼ワークショップ「鬱憤構文」について詳しく読む
周年事業の企画やコンセプト策定、広報戦略の立案に関心がある方は、電通PRコンサルティングまで、お気軽にお問い合わせください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
▼周年を起点に社員エンゲージメントを強化する「インターナルブランディング」ワークショップ
▼未来を探求する対話型ワークショップ『ビジョン・クエスト』サービス資料をダウンロード
▼ステークホルダーの“モヤモヤ”を言語化する「鬱憤構文」ワークショップ資料をダウンロード
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