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【企業広報戦略研究所レポート2023】企業の魅力に強く相関する、社会課題への対応(第8回魅力度ブランディング調査)


企業広報戦略研究所は、「企業広報(コーポレート・コミュニケーション)の発展」を目的に、株式会社電通パブリックリレーションズ(現:電通PRコンサルティング)の社内シンクタンクとして、2013年12月に設立、本年2023年12月で10年を迎えました。

2016年から開始し、2017年には日本マーケティング学会でオーラルセッション2017ベストペーパーを受賞した、企業の「魅力度ブランディング調査」は、今年で第8回。生活者1万人に対し、20業界計200社について調査したデータから、企業の「魅力」を経年分析しています。

2023年最新の調査データから見えてきたこと、それは、企業の社会課題対応が、企業魅力度に強く影響を与えているという事実です。英国オックスフォード大学サイード経営大学院名誉教授のコリン・メイヤー氏はその著書「株式会社規範のコペルニクス的転回――脱株主ファーストの生存戦略」(東洋経済新報社、2021年)の中で、「株式会社のパーパス(目的)は社会課題の解決」にあると指摘しました。

今回、国内企業対象の当調査を通じて、この指摘についてデータで解き明かすことができたのではないかと思います。詳しくは本記事をご覧ください。


■【2分でわかる!魅力度ブランディング調査】動画公開中!!

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■関連資料のご案内

  C.S.I.ファクトブック概要版 2013年12月に設立した、企業広報戦略研究所2023年12月に設立10周年を迎えます。 設立以来、学術機関や企業の広報セクションと連携しながら、企業広報の発展に寄与すべく調査・研究活動を行ってまいりました。 企業広報戦略研究所のこれまでの軌跡と、現在実施している調査・研究をまとめたファクトブックの概要版です。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング




目次[非表示]

  1. 1.魅力度ブランディングモデルとは
  2. 2.「第8回魅力度ブランディング調査」結果概要
    1. 2.1.調査概要
    2. 2.2.企業魅力の総量集計から考える
    3. 2.3.解決を期待されるソーシャルイシューとは
    4. 2.4.企業魅力と社会課題解決の相関性~注目は「人的資本」
    5. 2.5.企業の魅力を伝えるコンタクトポイント
  3. 3.電通PRC-PRX事務局からのご案内




魅力度ブランディングモデルとは



生活者や個人投資家が、企業のどのような活動や事実(ファクト)に「魅力」を感じるのか。

これを、「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」の3要素(各12項目、合計36項目)で検証するブランドモデル、それが企業広報戦略研究所による「魅力度ブランディングモデル」です。

【3魅力の定義】

●「人的魅力」:リーダーシップや職場風土、ソーシャルイシュー対応力など、企業を構成する「個人」や事業活動を通じて周囲に感じさせる「法人」としての魅力

●「財務的魅力」:成長戦略、安定性・(中・長期的な)収益性、リスク&ガバナンス対応など、優れた財務パフォーマンスと、それらを支える仕組みや取り組みに関する魅力

●「商品的魅力」:コストパフォーマンス、安全性・アフターサービス力・クレーム対応、独創性・革新性など、商品・サービスを通じて伝わる魅力

2016年に、企業広報戦略研究所が開発し、このモデルを基にした論文が日本マーケティング学会2017ベストペーパー賞を受賞しています。






「第8回魅力度ブランディング調査」結果概要



調査概要


「魅力度ブランディングモデル」を用いて、20業界各10社(計200社)について、計1万人の生活者の声を集めた調査、それが「魅力度ブランディング調査」です。

該当200社と自社との比較分析を通じて、生活者が自社に抱いている魅力やブランドイメージを可視化することが可能となることから、他社との相対的な比較を希望される企業には、企業広報戦略の策定から効果測定まで、幅広くご活用いただいています。





企業魅力の総量集計から考える


まず、2023年第8回の調査において、対象企業200社に対して感じた魅力の総量を集計したところ、最も多かった魅力が「人的魅力」で、全体の37.7%。次いで、「商品的魅力」が33.8%、「財務的魅力」が28.4%となりました。この順位は、割合に微増・微減はあるものの、調査開始以来8年連続で変わりません。企業の3魅力を巡る考え方は、世の中の移り変わりにあまり左右されない不動のものであることがうかがえます。

また、個別の魅力項目ランキングを見ると、全36項目中上位5位までに、昨年と同項目がランクイン。さらに、本調査開始以来8年連続で、「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」(48.8%)が1位となりました。





次に、業界別に企業魅力の総量を見てみましょう。こちらのグラフをご覧ください。

調査対象としている20業界の魅力総量ランキングです。





生活者が企業に対して感じた魅力項目の合計ポイント数を業界別で見ると、上位3位は、「損保・生保・商社」(17,488ポイント)、「食品」(16,407ポイント)、「電機」 (16,037ポイント)となりました。

「損保・生保・商社」は他の業界と比較して、「財務的魅力」の割合が最も大きくなっています。昨今の値上げラッシュなどにより、社会・経済環境が不安定な中、収益基盤やビジネスモデルの安定性への関心が改めて高まっていることが要因の一つと推測しています。

例えば商社では、人的資本にまつわる取り組みの報道も多く目にすることがありますが、そのような取り組みがこのランキングに表れているのではないでしょうか。



解決を期待されるソーシャルイシューとは


これまでの企業「魅力度ブランディング調査」では、「企業の魅力が伝わると、生活者の行動が変わる」ことを明らかにしてきました。今回2023年(第8回)は、魅力総量を測るだけでなく、企業の魅力を高めるための「企業の魅力とソーシャルイシュー(社会課題)の関連性」についても、調査を実施しています。





まず、日々の生活の中で「優先して解決・進展すべき/してほしいソーシャルイシュー(社会課題)」について聞いたところ、1位「賃上げ」(34.4%)、2位「物価高騰による食料品の値上げ」(28.1%)、3位「物価高騰による、食料品以外の値上げ」(27.1%)、4位「所得の格差」(25.4%)と、上位を生活に負担を与える、経済的な課題が占める結果となりました。解決の兆しが見えない、昨今の値上げ等「生活直結型」のイシューが、いかに生活者にとって喫緊の課題であるかがうかがえます。

次に、「企業に解決を求めるソーシャルイシュー」についての調査結果をご覧ください。

1位「賃上げ」(16.8%)は、一般的な認識と同様ながらポイント数は34.4%から17.6ポイント減少。また2位以下のランキングでは、その様相が大きく異なっています。2位「日本の科学技術力低下」(14.6%)、3位「労働環境の改善」(14.5%)、4位「長時間労働・過労死」(14.4%)という結果となりました。つまり、コロナ禍に表面化した「(半導体不足など)国産技術の問題」や「エネルギー問題」、そして「生活者の働き方」にまつわる課題解決を、生活者は企業に期待していることが分かります。





この調査結果を、一般的な「解決優先度」と、企業に期待する「解決優先度」の2軸で整理したのが、下の図となります。生活者の解決優先度が高く、かつ企業に解決を求めるソーシャルイシューは、「値上げ・賃上げといった生活直結型イシュー」「働き方といった人的資本イシュー」「エネルギー問題を含む環境イシュー」など。

つまりこの図において、右上に位置付けられる「ソーシャルイシューへの取り組み」こそが、現在、生活者にとって自分ごと化しやすく、共感を得やすいテーマといえるのではないでしょうか。



企業魅力と社会課題解決の相関性~注目は「人的資本」


さらに詳しく見ていきます。生活者が思う「それぞれの企業が取り組んでいるソーシャルイシュー」と「その企業の魅力度(魅力総量)」の相関を分析してみました。



魅力を感じる企業がある人(n=9,331 )



魅力総量とは、調査内で提示した企業について、回答者が36の魅力項目の中から該当すると思うものを全て選択した、生活者1万人の総反応個数です。結論から言うとと、ソーシャルイシュー(社会課題)への取り組みの認知は、自社の魅力に強く相関することが分かります。つまり、実際にソーシャルイシュー(社会課題)解決に向けて企業が取り組むこと、そしてそれが認知・理解されることは、自社の魅力訴求にも大きく貢献しているわけです。

中でも、「企業魅力度」と最も強い相関性が見られたソーシャルイシューは、「賃上げ」(相関係数:0.86)。次いで、「産休・育休制度」(相関係数:0.83)、「労働環境の改善」(相関係数:0.80)となっています。これら3項目は相関係数が0.8を超えており、非常に強い相関をうかがえる結果となりました。

また注目すべきは、「生活直結型イシュー」である「賃上げ」に続き、「人的資本」に関連するイシューが特に高い相関性を示しているという点です。つまり、自社の業務領域や得意領域に係るソーシャルイシューへの取り組みも重要ですが、企業が成り立つための土台であり、かつ企業成長のための重要な経営資源ともいえる「人的資本経営」にまつわる取り組みに、生活者は敏感に反応しているのです。


※PRXマガジンでは、「人的資本経営」を支援する広報PRの考え方についてもご紹介しています。ぜひご参照ください。

  「人的資本経営」における広報PRの可能性と企業ブランド (「今なぜ企業ブランドなのか」その4) 「人的資本経営」への関心が高まる中、2023年3月期より「有価証券報告書」における非財務情報開示の義務化が開始。にもかかわらず、7分野19項目の開示項目のうち、今回義務化したのはその一部に過ぎません。その理由は? それは、「ステップ・バイ・ステップ」での非財務情報の開示を通じて、各社ごとに異なる、企業価値向上のシナリオを描く為にほかなりません。自社固有の独自性(=成長の源泉)をも勘案つつ、経営戦略と人材戦略との関係性を統合的なストーリーとして構築し、機関投資家や株主、ステークホルダーとの対話を通じて磨き上げること。今こそ、広報PR部門の「ストーリー設計力」に強い期待が寄せられていると言っても過言ではありません。 広報PR部門の方々が、どのようにこの「人的資本経営」に向き合い、企業価値の向上に貢献するべきか、「企業広報戦略研究所」末次副所長が紹介します。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング


  【企業広報戦略研究所セミナーレポート】企業価値向上を目指した戦略的コミュニケーション~魅力的なESG活動・人的資本経営へ~ 企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)では、創設10周年を記念して、2023年7月セミナーを開催。不確実性が高まっている現代において、強い関心が寄せられるテーマ「ESGとは何か」、さらに本年注目を集める「人的資本経営」に焦点をあて、企業ブランドの創り方やそのためのコミュニケーションのあり方について読み解きました。 「PR X」マガジン|すべてのビジネス領域に、PRの技術を|株式会社電通PRコンサルティング



企業の魅力を伝えるコンタクトポイント



では、実際に社会課題に取り組んでいることを生活者に伝えるためのコンタクトポイントについては、どう考えればよいのでしょうか。

先の調査で、「企業の魅力をどのようなところで見聞きしたか」について聞いたところ、カテゴリ別では商品・サービスの購入や社員・店員を通した「リアル」が最も多く(49.5%)、次いで「メディアの番組・記事」(29.1%)、「メディアの広告」(23.1%)、「オウンドメディア」(22.1%)、「ソーシャルメディア」(18.9%)の順となりました。

前年度(2022年第7回調査)と比較すると、各カテゴリの順位は変わりませんが、「ソーシャルメディア」のみ割合がやや増加しています。このことから、生活者の企業に関する情報源として、「ソーシャルメディア」の重要性は今後も高まっていくことが考えられます。





さらに、企業の魅力を感じる情報源として、「ソーシャルメディア」を選択した人に、「どのソーシャルメディアで魅力を感じるか」を聞くと、1位「YouTube」(46.9%)、2位「X(旧Twitter)」(39.2%)、3位は「Instagram」(31.3%)、4位「LINE」(18.6%)、5位「Facebook」(15.1%)という結果となりました。

また、「普段よく利用しているメディア」としては、1位「YouTube」(55.4%)、2位「X(旧Twitter)」(43.7%)、3位「LINE」(38.7%)、 4位「Instagram」(38.6%)、5位「Facebook」(15.8%)という結果に。

ソーシャルメディアで企業の魅力を感じた人のうち、「YouTube」は、半数以上の人が普段から利用していると回答しています。企業の魅力を感じる情報源としても4割以上の人が選択しており、企業のブランディングにおいて、動画コンテンツ活用の重要性が高まっていることが考えられます。

では、ソーシャルメディアで企業の魅力を感じた方々を、年代別に整理すると、どのような特徴が見られるのでしょうか。





30代~50代では、企業の魅力を感じる情報源の上位3位はいずれも、「YouTube」「X(旧Twitter)」「Instagram」の順ですが、20代は1位が「X(旧Twitter)」となっており、ソーシャルメディアで魅力を感じた人のうち、半数以上の人(57.7%)が「X(旧Twitter)」から企業の魅力を感じていることが分かります。

普段からよく利用されているものでは、40代、50代は「Instagram」よりも「LINE」の方が高くなっていますが、企業の魅力を感じる情報源としては「LINE」より「Instagram」の方が上位という結果になりました。 60代は唯一「LINE」が企業の魅力を感じる情報源として3位以内にランクインし、「Instagram」や「X(旧Twitter)」よりも影響力が大きいようです。

このように、一口に「ソーシャルメディア」といっても、採用や今後の消費の中心としてZ世代を重視するなら、どのソーシャルメディアを使うのかなど、ターゲットとする年代ごとに、アプローチすべきメディアの種類は検討していくことが必要です。





ソーシャルイシュー(社会課題)解決のための企業活動を、しっかり広報することができれば、それは高い相関性をもって、その企業の魅力向上に貢献していくことが明らかになるとともに、このような企業広報に活用する媒体として、ソーシャルメディアや動画メディアの活用の可能性にも注目が高まりつつあることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

「企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)」では、この先10年も、企業広報活動の発展にデータドリブンに貢献してまいります。


※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。




電通PRC-PRX事務局からのご案内



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大澤 英介
大澤 英介
大手流通企業でのSV、調査会社を経て、2019年電通PRコンサルティング入社。 主に調査セクションにて、国内電機メーカー、大手住宅メーカー、食品メーカーなどを担当し、マーケティングコミュニケーションのプランニングを調査起点で行う。関与プロジェクトは、年間50件を超える。 2022年度より企業広報戦略研究所(C.S.I.)にて、各種調査の企画・実施とそれを基点としたコーポレートコミュニケーション戦略の策定から実行に携わっている。

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