「レピュテーションマネジメント」とは?広報・PRで実践すべき“7つの視点”
近年、広報・PRにおいて重要視されるのが「レピュテーションマネジメント」です。
社会の潮流が変化する中、その重要性は年々、高まっており、レピュテーションマネジメントがPRの根幹を成しているといっても過言ではありません。
そもそもレピュテーションマネジメントとは何なのか。そして、今後、企業や団体が実践するに当たって求められる「7つの視点」について、電通PRコンサルティングが2024年4月に出版した書籍『PR4.0への提言』(宣伝会議)を基に解説します。
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レピュテーションマネジメントとは?
「レピュテーションマネジメント」とは、言葉の通り「レピュテーション(reputation;評判・世評)」を「マネジメント(management;管理)」することであり、企業・団体が自身の評判を高めたり、風評被害や悪い評判への対策や対応をしたりすることを指します。
組織が社会的な存在意義を示し、サステナブルな成長を続けるためには、様々なステークホルダーを含む“パブリック(社会全般)”からの正当な評価を構築しなければなりません。そんな中で重要性を高めているのが、レピュテーションマネジメントです。
近年、スマートフォンの普及により、企業・団体に対する評判が瞬く間に広がるようになり、レピュテーションマネジメントの焦点は、デジタルコミュニケーションに移行しています。
コントロールの利かない評判をいかに適切に管理するのか。広報・PR担当者は、時代の変化への適合や予測をしながら、レピュテーションマネジメントを実践していかなければいけません。
レピュテーションマネジメント実践に向けて 重要な7つの視点
潮流が変わる社会の中で、広報・PR担当者は、どのようにレピュテーションマネジメントを考えていけばよいのでしょうか。
本書『PR4.0への提言』では、今後、レピュテーションマネジメントを実践していくための重要なヒントとして、広報・PR担当者に向けて“7つの視点”をまとめています。
視点①外部環境の変化とコミュニケーションの変貌
これまで、社会や生活者の価値観の変化に対応すべく、企業のコミュニケーション活動の在り方は変化してきました。
企業コミュニケーションの歴史を振り返ると、当初は「認知拡大」が目的だったのに対し、その後、「効果測定」も重視されるようになりました。そして、目指す成果自体も、「売り上げ拡大」のみならず、「企業好感度の向上」など、より広範囲の目標設定に変化してきました。
2020年代に入ると、その活動が、世の中に広くかつ良いインパクトを与えているかまで測るようになり、企業もその先を見据え、自社の立ち位置を確認することが、もはや習慣化しています。
そして、誰もが感じているように、ここ最近の企業や団体を取り巻くコミュニケーション環境の変化には著しいものがあります。
企業にはコミュニケーションの対象となるステークホルダーの要求や感情に向き合い、それぞれに丁寧に対応していく姿勢が求められ、併せて、そもそもの社会的意義といった本質的価値を問い直されています。
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視点②マスメディアからマステーマへ
マスメディアからソーシャルメディアへ、あるいはソーシャルメディアからマスメディアへと情報の流れ方は複層化、複雑化しています。
しかし、それらの情報がどの経路をたどろうとも、生活者側の意思でその情報はいかようにも入手可能であり、逆に言えば能動的にその情報に向き合う気持ちがなければ情報接触は果たせません。
そこで、電通PRコンサルティングが提唱しているのが「マスメディアからマステーマへ」という視点です。
多くの生活者が関心を持って向き合ってくれそうな「マステーマ」を設定し、それをベースに企業側の意見や主張を織り交ぜ、提示することが一つの解決策となります。
ただし、そのテーマ設定においては、事前に生活者側の関心を把握しておくこと、またその関心と自社が訴求したい情報との間にどのような接点・共通点をつくれるかを検討し、併せて共感を高めるために自社活動をアジャストしていくプロセスが必要です。
視点③ブランド・アクティビズム
これまで企業の本質は商品やサービスを創造し、その差別化を目指し、提供することで社会や生活者のよりよい暮らしをサポートすることでした。
しかし、現代において、それは企業が当然果たすべき役割とされ、さらにその先に何を達成しようとするのかという企業側の一歩踏み込んだコミットメントが求められています。
最近、特に企業への期待が高まっているのは、さまざまな社会課題や政治的方針について、自身の意見を世間にしっかりと表明するアクティビストとしての行動です。これは事業会社としての業績の維持や株価向上だけでなく、企業が関わるさまざまなステークホルダーの要求に応えていくステークホルダー資本主義時代における要請とも言えます。
意見表明しないものには社会と関わる意思がないと見なされ、優柔不断なスタンスは当然のことながら全ての生活者から不信感を持って見られることとなります。そしてそのブランドや企業は購買の選択肢や就職先として積極選択されなくなるのです。
企業には、社会とどう関わっていくつもりなのかを表明することを求められています。
そのため、経営者は企業がどういうスタンスで今後社会に対して向き合っていくのか、その指針をしっかりと固めておくこと。また、その指針がその時々において正しいのかを確認し続けることが大切です。
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視点④パーパス
昨今、問われる「パーパス」について、自社の企業理念やミッションと照らし合わせつつ、再確認をする企業が増えています。
企業はこれまでの立ち振る舞いを再点検し、そのようなWin-Winの関係を築けるのか、何かを目指し共創することができるのかを相手に伝えなければなりません。
そして、それは、独り善がりであってはならず、相手の意見に耳を傾けながら、その目標を定めていくことが重要です。
これまでのモノやサービスを提供する側とそれらを購入する側といった立場から、両者がともに歩み合おうとする立場に変化してきたことから起こっている変化でもあります。
視点⑤ナラティブ
企業が生活者にメッセージを届ける際にもトレンドがあり、その1つの型が「ナラティブ」です。
「ナラティブ」は「物語」や「語り口」とも訳されますが、企業側が発信した情報に対し、受け手がどう受け止め、どう語るかという受け手側の視点に立った情報の状態と考えるのが良いでしょう。
企業自身が考え固定された物語である「ストーリー」とは違い、「ナラティブ」では、終わりがなく、受け手によって、さまざまなバージョンが存在します。
もちろん多様な捉えられ方を許容しながら、少しでもこちらの企図するイメージを増幅させたい気持ちはあるでしょう。ここで強い味方となるのが、従業員などインターナルのメンバーです。
自身の仕事について家族に語り、家族が知人・友人に語り、リアルな顔の見えるコミュニケーションでその熱さは伝わっていきます。いわば、企業版のファン・マーケティングのようなものと言えるでしょう。
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視点⑥コレクティブ・インパクト
現在のコミュニケーションで注目されているのが「仲間づくり」です。個人事業主や、生活者など、企業の横に協働・共創する仲間として、そのレイヤーが多様になってきています。
「コレクティブ・インパクト」は、ある社会課題に対して、個々の強みを生かして有機的な役割分担を果たすスキームとして、欧米ではさまざまな成功ケースがあります。
日本でも、そういった取り組みを支援するNGO/NPO組織や、企業コンソーシアムも出てきました。その中で顕著なのが、先の個々人を巻き込む組織体系であり、逆に言えば個人がリードし、そこに企業などの組織がサポートを行うという形が増えてきていることです。
イノベーションは、何もないところからではなく、既存のものの意外な組み合わせから生まれるといわれます。
これからのチーミングは、大小さまざまな単位が混在することが当たり前になり、個々の存在というよりも、そのつながりそのものが価値となることが考えられます。
視点⑦ソーシャルコミットメント
ソーシャルコミットメントとは、パーパスで掲げる自社の社会的存在意義をバックボーンとしながら、具体的にどのように活動し、何を達成すると社会や生活者に約束するのか、それをしっかりと明言し、実行することです。
一企業市民としての責務を果たし、さらに社会の公器として公明正大に立ち振る舞うことはもちろん、できるならばさらにもう一歩踏み込んで、どこのどの問題解決に取り組み解決するのかまでを宣言することが現在求められています。
多くの国で、政府が社会課題を解決できない状況を受け、生活者やステークホルダーはその解決を企業やブランドに求めるようになっています。
企業やブランドが取り組む社会課題は、従業員、株主、顧客、地域住民などのステークホルダーが選ぶ時代となっており、その要請に対して耳を傾け、そこに何かしらの貢献ができないかを考え、部分的にでも関与していく準備をしておくことも必要です。
企業は今こそ、現代における自社の存在意義を再度確認し、パーパス設定を行い、社会のためにできることを「ソーシャルコミットメント」という形で明言・実践することで、社会と一体化し、社会を支える存在になれるのです。
『PR4.0への提言』では、最新のレピュテーションマネジメントを詳説
書籍『PR4.0への提言』では、今回ご紹介した7つの視点について詳しく解説しています。
また、PR1.0から現在のPR3.0、これから訪れるPR4.0に向けた時代的な変遷を含めた、広報・PRの「6つの潮流」から、レピュテーションマネジメントについての考察を深めています。
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※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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