グリーンハッシングとは? グリーンウォッシングに陥らないための企業のリスク回避策
企業のサステナビリティに対する期待が高まる中、「グリーンウォッシング」や「グリーンハッシング」という言葉が注目されています。
グリーンウォッシングは、企業が環境への取り組みを実際以上に見せかける行為をいいます。
一方で、海外の大手企業には、環境への取り組みや成果について控えめに公開したり、意図的に情報を隠すグリーンハッシングという行為も見受けられるようになっています。
この記事では、海外の大手企業の動向を参考に、企業が陥りがちなこれらのリスクと、その回避策について解説します。
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グリーンウォッシングとは?
グリーンウォッシングとは、企業が環境保護に積極的に取り組んでいると誤解させる行動や活動を指します。
例えば、製品に「エコフレンドリー」や「サステナブル」といったラベルを付けながら、実際にはなんらかの実質を伴うわけではない場合や、「グリーン」とラベル付けされたファンドがグリーンファンドとは関係がない場合などをいいます。
このような行為は消費者や投資家に誤解を与え、企業の信頼を著しく損なうリスクを伴います。
グリーンウィッシングとは?
グリーンウィッシングとは、意図せずに行われるグリーンウォッシングのこと。
企業が特定の持続可能性のコミットメントを達成したいと願いつつも、実際には財政的、技術的、組織的な制約のためにその能力がない場合に起きてしまう場合があります。
急速な新しい規制が企業の法令順守能力を上回る場合に特に顕著に起こり、目標を達成できない場合、企業は信頼を損なう可能性があります。
英米大手企業の6割が陥るグリーンハッシングとは?
一方、企業が環境への取り組みや成果を過少報告または意図的に情報を隠す、グリーンハッシングという行為もあります。
データ分析会社Connected Impactが発表した「Transparency Index 2024」によると、米国の上場および非上場のトップ100社のうち、約6割(58%)がESGの進捗(しんちょく)状況を控えめに開示し、これを広く一般社会に公開していないことが判明しました。
画像:Connected Impact https://www.corporatetransparencyindex.com/
また、同調査によると、FTSE 100企業(ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄)の63%が、昨年のESGの進捗をソーシャルメディアなどで発信せず「過少宣伝」し、年次報告書などで開示した活動実績の全てを広く一般社会に公開していませんでした。
このような状況が起きる理由について、Connected ImpactのCEOルーシー・ウォルトン博士は、「正当なESG努力を誤って表現した場合には、規制の強化や罰金が科せられる可能性があります。企業には、グリーンウォッシングを避けようという圧力が高まっています」と述べています。
企業がグリーンハッシングを選ぶ理由
多くの企業がグリーンハッシングを選択するのには、以下のような理由が挙げられます。
・環境努力に関する報告に対し、グリーンウォッシングであると批判されることへの懸念
・環境努力に関する目標を達成できない場合、批判されることへの懸念
・環境努力に関する報告に対する当局等による監視や取り締まりの強化
・報告のルールや基準が頻繁に変化する状況で、ルール違反になるのを避けるため
米国では、訴訟になっている例もあります。米銀大手バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの資産運用子会社は、ESG投資に関する開示が不十分であるとして、2022年に米証券取引委員会(SEC)から150万ドル(約1億9000万円)の制裁金を科されました。(日本経済新聞2022年5月24日記事:米SEC、BNYメロンに制裁金「ESG投資の開示不十分」)
しかし、情報を公開しないことで、逆に企業は透明性に欠けると見なされ、長期的にはブランド価値や信頼性を損なうリスクがあります。
透明性を保つために 「完璧さ」よりも「進歩と誠実さ」を
ウォルトン博士は、「調査では85%の投資家が、世界のESG 投資額の30兆ドルがより良いリターンをもたらすと信じています。情報公開を控えめにしている企業は投資の機会を逃している可能性が示唆されます」と述べます。
一方で、「ESGの進捗状況を透明にする企業は、投資を呼び込むことができ、消費者からの信頼を得ることができます」とし、ESG情報を公開することによる、企業側のメリットを指摘しています。
ルーシー・ウォルトン博士 画像提供:Connected Impact
さらに、米環境テック企業グリーンプリントの調査によると、米国人の64%は持続可能な製品にもっとお金を払ってもいいと考えているが、うち74%は適切な見分け方がわからないと回答。消費者の「サステナブルな消費をしたい」というニーズに対して、企業が判断材料を提供できていないという問題点が浮き彫りになっています。
企業がグリーンウォッシングやグリーンハッシングを避けるためには、どうしたら良いのでしょうか。また、グリーンウィッシングに陥る可能性がある場合はどのような対応が必要でしょうか? ウォルトン博士は以下の3つのポイントを挙げています。
(1)第一に、オープンなコミュニケーションを促進する必要があります。サステナビリティに関する計画や進捗状況を積極的に共有し、達成した成果だけでなく、直面している課題も正直に伝えることが大切です。
(2)サステナビリティへの移行は複雑で長期的な取り組みです。企業がサステナビリティに関する取り組みを公表する際には、ステークホルダーは「完璧さ」よりも「進歩と誠実さ」を重要視しているので、安心しましょう。達成できなかったことは「限界」として正直に情報共有することも重要です。
(3)また、企業には、急速に変化する規制や環境の状況に対応することが求められます。サステナビリティに関する自社の主張が正確で、法令に準拠していることを確認し続けましょう。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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