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なぜ今、「従業員」が最重要ステークホルダーなのか?──人的資本経営時代におけるインターナル・ブランディングの再設計

人的資本経営が重視されるようになって、数年が経ちました。しかし、なぜこれほどまでに資産としての「人」が注目されるようになったのでしょうか。

背景にはさまざまな要因がありますが、最も大きいのは、2010年代以降に進んだ産業構造のデジタルシフトです。製造業を中心とした「モノづくり」が価値の源泉だった時代から、IT・サービス・イノベーションによって、価値は「人の知識や創造性」から生まれるものへとシフトしました。

この変化を受け、投資家は人的資本を企業価値の中核として評価するようになり、人的資本開示の制度化へと発展していきました。

今回は、電通PRコンサルティングでコーポレート・ブランディング・ユニットを統括する石井裕太が、人的資本として「従業員」を重視するようになっていった近年の変化と、製造業におけるインターナル・ブランディングの最新潮流をご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.広報データが示す「静かな構造転換」
  2. 2.人的資本経営の本質
  3. 3.「インターナル・ブランディング」の現在地
  4. 4.製造業で起きている“価値の再定義”
  5. 5.現場から生まれた新しい動き
  6. 6.Factory Pride Summit 2026 開催
  7. 7.最後に

広報データが示す「静かな構造転換」


2014年から2024年の10年間で、企業の広報部門が重視するステークホルダーは大きく変化しました。

企業広報戦略研究所(株式会社電通PRコンサルティング内)「第6回 企業広報力調査」
533社/郵送・インターネット調査 2024年5月19日〜8月20日

• 従業員とその家族:53.7% → 76.0%(+22.3%)
• 就活生・学生:40.1% → 72.0%(+31.9%)
• 一方で、国内メディアは2018年から減少傾向

つまり、経営者が重視するステークホルダーの重心が「外(メディア)」から「内(人)」へと移行しているのです。

人的資本経営の本質


このデータから言えるのは、従業員・就活生・メディアの中では「従業員が最重要ステークホルダーになった」ということです。

以前から従業員はステークホルダーの一つとして捉えられていましたが、あくまでも他のステークホルダーと並列で「様々あるステークホルダーのうちの1つ」として捉えられていました。しかし現在は、従業員を他のステークホルダーと並列に捉えるのではなく、従業員を起点に自社に重要なステークホルダーとの関係を再構築する時代に入っています。

「インターナル・ブランディング」の現在地


こうした背景から、多くの企業が取り組み始めているのがインターナル・ブランディング®です。

※「インターナル・ブランディング」は電通PRコンサルティングの商標登録です。

インターナル・ブランディングとは、従業員が自社の価値や魅力を理解・共感し、自ら体現・発信できる状態をつくるための継続的な取り組みです。

一方で、現場では次のような課題が顕在化しています。

• 自社の魅力や「らしさ」を言語化できない
• 何を発信すべきか分からない
• 施策が単発で終わってしまう

「従業員を大事にするべき」という認識は共有されているものの、“どう実装するか”が分からない──これが現在地です。

製造業で起きている“価値の再定義”


この流れは、とりわけ製造業において顕著に表れています。

先述の調査結果を製造業と非製造業で比較すると、製造業は「従業員とその家族」および「就活生・学生」を非製造業よりも高いスコアで重視する傾向が確認されます。一方で、「国内メディア」については非製造業の方が相対的に高いスコアとなっており、重視するステークホルダーの違いが示唆されています。

企業広報戦略研究所(株式会社電通PRコンサルティング内)「第6回 企業広報力調査」
533社/895件・インターネット調査
2024年5月19日〜8月20日
https://www.dentsuprc.co.jp/csi/csi-topics/20250109.html

これまで製造業は、コスト削減・効率化・生産性を最優先としてきました。しかし現在は、働く人の誇りや現場の文化、個々人の能力に光を当てる動きが広がりつつあります。つまり、「いい工場」とは単に効率が良い工場ではなく、“働く人が誇れる工場”へと再定義されつつあるのです。

現場から生まれた新しい動き


こうした課題に対し、現場発の新たな取り組みも生まれています。その一つが、製造業におけるルールチェンジを目指して設立された、一般社団法人 Factory Pride Association(以下、FPA)です。

FPAは、製造業の地位をポジティブに上げていく活動を展開しています。例えば、アワードやセッションなど、工場の未来をともに考え仲間と交流するイベントの開催や、製造業におけるウェルビーイングを評価するためのKPIセッティングなど、業界の共通言語を増やす活動を行っています。

単なる情報発信にとどまらず、「誇り」を起点に製造業を再定義する試みと言えるでしょう。

Factory Pride Summit 2026 開催


FPAの取り組みの一環として、「Factory Pride Summit 2026」が5月29日(金)に東京・八重洲で初めて開催されます。本サミットでは、工場の価値をどう言語化するか、従業員の誇りをどう育むか、インターナル・ブランディングをどう設計するかなどといった実践知が共有される予定です。

製造業におけるインターナル・ブランディングは、まだ成功事例が少なく、方法論も確立されていない領域です。だからこそ、現場の知見が一堂に会する機会は非常に貴重だと言えます。

最後に


人的資本経営の時代において、企業価値の源泉は「人」です。そして、広報・ブランディングの起点もまた「人」へと移行しています。この変化をどう捉え、どう実装するか。そのヒントは、現場にあります。ぜひ、最前線の知見に触れてみてください。

※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。

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石井 裕太
石井 裕太
統合コミュニケーション局コーポレートコミュニケーション部 シニア・チーフ・コンサルタント。2001年新卒入社。以来、企業・行政・大学・非営利組織など、1,000以上のクライアントと多様なステークホルダーとの関係づくりに従事。現在は「コーポレート・ブランディング・ユニット」を統括し、社会的&経済的インパクトの両立を目指すブランディング戦略領域全般に携わる。企業や自治体向けの研修講師のほか、ワークショップの開発やファシリテーションなども。公共政策修士。

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