企業ブランディングのKPI設定・効果測定 スコアで可視化する「魅力度ブランディング」とは
ブランディング戦略を展開する中で、企業の「ブランド」という見えにくいものに対する、効果測定やKPI(重要業績評価指標)設定をしたいという悩みはよく聞きます。
企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)が開発した「魅力度ブランディングモデル」では、企業活動を一つ一つの「ファクト」として分類し、生活者が企業に“魅力”を感じるファクトをスコア化しました。
ブランド調査の多くが「洗練された」「先進的な」などの抽象的なイメージを調査項目としているのに対し、本モデルは、より具体的な企業の活動(ファクト)に注目したものとなっています。「企業ブランドは、イメージ戦略だけではつくれない。活動(ファクト)が伴ったブランド戦略が必要である」という考えに基づいています。
本記事では、「魅力度ブランディング」とは何なのか、そして、最新の調査で見えてきた、生活者が「企業に魅力を感じる要素」を明らかにします。企業ブランディングの戦略設計にお役立てください。
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企業の魅力をスコア化「魅力度ブランディングモデル」とは
企業戦略の核ともいえるブランディング。多くの企業が直面してきた課題として、“ブランド”という目に見えない要素に対し、ブランド価値を高める “イメージ”までは決定するものの、“具体的に何をすればよいのか”という企業の活動(ファクト)に落とし込むことが難しいというものがありました。
そこで登場したのが、企業広報戦略研究所の「魅力度ブランディングモデル」です。このモデルは、広告や広報・PRなどの企業活動の中から、生活者が感じる“魅力”を、生活者視点で測定・評価することで、ブランディング戦略に生かせるデータとして提供するものです。
2016年から毎年調査を行っていて、2024年は、全国の生活者1万人を対象とした調査結果から、企業200社の「魅力度ランキング」「業界別ランキング」「魅力を感じた情報源」「企業イメージ」などについて分析・報告しています。
モデルの概要
「魅力度ブランディングモデル」は、企業が持つ魅力を「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」という3つの要素に分け、それをさらに18の領域、36の項目に分類して、スコア化する方法です。
・人的魅力(6領域12項目)
項目例:「チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる」「社員がやりがいを持って活き活きと仕事をしている」など・財務的魅力(6領域12項目)
項目例:「収益基盤が安定している」「リスクへの備えがしっかりしている」など・商品的魅力(6領域12項目)
項目例:「高い技術力・ノウハウに基づく商品・サービスを提供」、「メディアや口コミで話題の商品・サービスを提供している」など
これらの要素を定量的に評価することで、企業の魅力を見える化し、他社との比較や自社の強み・課題を明確にします。
「魅力度ブランディングモデル」は学術的にも高く評価されており、日本マーケティング学会での受賞歴もあります。
日本マーケティング学会の最高賞(オーラルセッション2017ベストペーパー賞)を受賞
年間広報計画を作成することで、広報活動の一貫性を保つことができるほか、関係者間の連携強化を実現し、戦略的かつ計画的な活動が可能になります。
形式は自由ですが、中でもカレンダー形式で年間の計画を整理しながら、可視化する方法がおすすめです。
企業ブランディングへの活用方法
このような魅力度ブランディングモデルですが、実際、どのように企業ブランディングへ活用できるのでしょうか。企業の目線に立って、具体的な活用方法を説明します。
活用方法①:自社の強み・弱みの発見
魅力度ブランディングモデルを活用することで、生活者視点での、自社の強みや課題を明確に把握できます。
例えば、カスタマイズレポートとして提供している、「競合3社との領域比較」では、自社の優位性や改善が必要なポイントを一目で把握可能です。
競合比較のほか、レポートから生活者が魅力を感じる項目(例:リーダーのビジョン、商品独自性など)を特定し、それをPR・商品戦略に反映したり、社内での人材育成や文化醸成の指針として活用したりすることも可能です。
活用方法②:効果測定やKPIとしての利用
自社の魅力度のスコアを年次で追跡することで、展開するブランディング戦略の進捗(しんちょく)や効果を測定できます。
さらに、改善が必要な領域をデータに基づいて特定し、具体的な施策を導き出したり、次年度のKPI設定に生かしたりすることも可能です。
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「生活者が魅力を感じる要素」は?最新調査結果
このモデルを活用して2024年に行われた第9回魅力度ブランディング調査では、生活者が企業に感じる魅力について、次のような結果が得られました。
「魅力に感じる」トップは“人的魅力”
「人的魅力」が全体の38.6%を占めました。次いで「商品的魅力」が33.5%、「財務的魅力」が27.9%となっています。この順位は調査開始以来、9年連続で変わらず、企業の3魅力を巡る考え方が世の中の移り変わりに左右されないことを示しています。
「ビジョン」の重要性
魅力を構成する項目のランキングでは、「ビジョンを掲げ、業界をけん引している」(47.2%)が9年連続で1位を獲得。5位には「良い企業理念・ビジョンにもとづいた経営をしている」(35.3%)がランクインし、6年ぶりに1位から5位まで、全て「人的魅力」となりました。
この調査結果では 1位や5位に企業のビジョンが入っていることから、企業のビジョンやパーパスが生活者の魅力評価に大きく影響することがうかがえます。
昨今の社会・経済環境の変化により、生活者に不安が生じる中、将来的な事業成長への道筋を示し安心を届けることが、企業ビジョンやリーダーの役割として重要性を増しています。
業界別の魅力の違い
生活者が企業に対して感じた魅力項目の合計ポイント数を業界別で見ると、上位3位は、「輸入EV自動車・自動車関連部品」(17,103ポイント)、「電気機器」(15,846ポイント)、「流通・小売」 (15,418ポイント)となりました。
1位の「輸入EV自動車・自動車関連部品」は、2位の「電気機器」と比較して、「財務的魅力」の値が大きいことが分かります。
「輸入EV自動車・自動車関連部品」の業界にはテスラやメルセデス・ベンツ、ブリヂストンなどグローバルで注目される企業が含まれており、将来に向け注目されるビジネスモデルやグローバルに活躍するブランド構築への関心が高まっていることがうかがえます。
第9回の調査では、生活者が「企業に取り組みを期待するソーシャルイシュー」なども明らかにしています。これらのデータを基に、自社として発信を強化すべき内容を整理していきましょう。
まとめ
企業のブランディング活動の効果を最大化するには、データに基づいた分析が不可欠です。
魅力度ブランディングモデルを活用すれば、生活者視点での魅力を把握し、自社の強みを生かした戦略の立案が可能となります。
企業広報戦略研究所の「魅力度ブランディング調査」は、こうしたデータドリブンなアプローチを支える重要な指標です。
電通PRコンサルティングでは、社内シンクタンクである企業広報戦略研究所のデータを活用し、ブランディングに関するコンサルティングを実施しています。最新の魅力度ブランディング調査の結果や、自社の企業ブランディングの「現在地が分からない」「KPIなどの目標設定や、効果測定がうまくできない」等のお悩みがある方は、ぜひお問い合わせください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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