
危機管理広報のトレンドは「社内」にある?インターナル・コミュニケーションの充実が企業リスクを防ぐ理由
コロナ禍を契機に、企業の働き方は大きく変化しました。リモートワークの普及などにより、場所や時間にとらわれない柔軟なワークスタイルが定着しつつあります。
一方で、企業を取り巻くリスク環境も大きく変化しています。VPN*の脆弱(ぜいじゃく)性を狙ったサイバー攻撃や従業員による内部情報の持ち出し、SNSをきっかけとした「炎上」など、企業の内部を起点とするリスクは複雑化しています。
*拠点間をいわば仮想の専用線で結び、安全なデータ通信環境を確立する技術のこと
こうした状況の中で改めて注目されているのが、「インターナル・コミュニケーション」です。
危機管理広報というと、クライシスが発生した後に行う緊急記者会見など、外部のステークホルダーに対して説明責任を果たす活動を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、企業の危機の多くは社内で発生し、社内で拡大します。
本記事では、危機管理広報の観点から、企業におけるインターナル・コミュニケーションの重要性と、危機管理に強い組織づくりのための具体的なアクションを解説します。
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危機管理広報においてインターナル・コミュニケーションが重要な理由
危機管理広報は、クライシス発生後の「説明責任を果たす広報」だけではありません。平常時から危機を未然に防ぎ、万が一クライシスが発生した場合でも迅速に対応できる体制を整備することも重要な役割です。
その中でも、近年とくにその重要性が注目されているのがインターナル・コミュニケーションです。
近年では多様な働き方の普及により、経営層と現場の距離が広がる傾向があります。社内コミュニケーションが減少すると、企業として重視する価値観や行動規範が「伝わったつもり」になり、現場の実態を正確に把握しにくくなります。
その結果、次のようなリスクが生じる可能性があります。
・判断基準のばらつき:同様の事象でも部門や個人によって対応が異なる・兆候の見えにくさ:小さな「ヒヤリハット」が共有されず、問題が潜在化する・初動の遅れ:関係者が情報を持ったままで組織間で連携できず、対応が後手に回る
危機を感知する「最初のセンサー」は現場の社員です。社員がリスクを素早く察知し、共有し、適切にエスカレーションできる体制を整えることが、リスクマネジメントを実効性のあるものとして機能させる前提となります。
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インターナル・コミュニケーションを軽視すると何が起きるのか
企業の不祥事や重大インシデントは、制度や規則の不備だけで発生するわけではありません。多くのケースで問題となるのが、組織内コミュニケーションの機能不全です。
典型的なパターンとして、次の3つが挙げられます。
パターンA:声を上げにくい組織風土
上意下達の気風が強い組織では、異論や懸念が表面化しにくくなります。その結果、軽微な不正や不適切行為が見過ごされ、やがて重大な不祥事へと発展するケースも少なくありません。パターンB:経営と現場の認識ギャップ
経営層は売上目標や納期、品質、コストなどを強く現場に発信します。一方で、現場の実態を正確に把握する仕組みが弱いと、クライシス発生時に「現場がここまで追い込まれていたとは」という、経営層にとって想定外の事態に直面します。パターンC:情報の点在による初動遅れ
サイバー攻撃や情報漏えい、SNSでの「炎上」などは初動対応の早さが極めて重要です。分散している社内情報を集約する仕組みが確立していないと、正しい情報を公表できず後手後手の対応となり、被害拡大やレピュテーションリスクにつながります。
ここで重要なのは、経営層による社内に向けた一方的な情報発信ではなく、従業員との双方向のコミュニケーションが機能しているかという点です。
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危機管理に強いインターナル・コミュニケーション設計のポイント
広報担当者が実践すべき設計ポイントは、大きく3つあります。
① 兆候を拾い上げる「入り口」の複線化
消費者庁の「民間事業者等における内部通報制度の実態調査」によると、不正発見のきっかけの約8割が内部通報でした。
社内・社外の相談窓口だけでなく、目安箱や簡易相談フォームなど複数の入り口を設けることで、不正の兆候を早期に拾い上げる仕組みを整備することが重要です。
出典:消費者庁「民間事業者の内部通報対応 - 実態調査結果概要 -」(2024年6月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/research/assets/research_240426_0001.pdf
② リスク情報を共有する仕組みをつくる
業界の不祥事や情報漏えい事例共有、サイバー攻撃の注意喚起など、リスク情報を定期的に共有する仕組みづくりも重要です。
例えば次のような取り組みが考えられます。
月次会議でのリスク共有(ハラスメント防止など)
社内アラートによる注意喚起(情報漏えいに対する注意など)
社内ニュースによる事例共有(関連業種の不祥事など)
こうした情報共有は、社員一人一人のリスク感度を高めることにつながります。
③ 「ワンボイス」の情報発信
クライシス発生時には、情報管理の不徹底が企業にさらなる混乱を招く可能性があります。
社外向けのステートメントやQ&Aを整備するだけでなく、社内に対しても「誰がどの情報を発信するのか」というルールを明確にしておくことが重要です。社員が「社外で何を話してよいのか」を理解していなければ、意図しない情報拡散につながる恐れがあります。
ドラマを活用したユニークなインターナル・コミュニケーション事例
「ワンボイス」の重要性を伝えるため、ユニークな取り組みを行った企業があります。
その企業は、都心部の住宅地に隣接する地区に新しい研究棟の建設を予定していました。近隣住民との良好な関係を維持するため、事業所の従業員全員にリスクコミュニケーションを理解してもらう必要がありました。
しかし、通常の社内メールによる告知では、日々忙しい従業員に十分読まれない可能性があります。また、「自分には関係ない」と受け止められてしまう懸念もありました。
そこで同社は、ドラマ形式の研修動画を制作しました。
退勤時に記者から質問を受けた従業員が、何げなく話した内容が報道されてしまうというストーリーです。個人の発言が企業の公式コメントとして扱われる可能性があることを、リアルに理解してもらう狙いがありました。
さらに動画の出演者には事業所の従業員を起用しました。「○○さんが出演している動画」として社内で話題になり、多くの社員が視聴するきっかけとなりました。
この動画はその後、別拠点でも研修コンテンツとして活用され、組織全体のリスクコミュニケーション力向上に寄与しています。

まとめ|危機管理広報の成否は「社内」で決まる
危機管理広報は、クライシスが発生してから始まるものではありません。危機の芽は社内にあり、拡大化もまた社内で起こります。
だからこそ平常時から、
危機管理広報マニュアルの整備
リスク情報の社内共有
危機管理セミナーや教育動画などによる啓発活動
といったインターナル・コミュニケーションを強化することが、危機の予防と迅速な初動対応につながります。
「危機管理マニュアルが長らく更新されていない」
「社内の情報共有体制に不備がある」
「社員に伝わる研修コンテンツを作りたい」
このような危機管理×インターナル・コミュニケーションに関するご相談がありましたら、お気軽に電通PRコンサルティングまでお問い合わせください。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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