
ベンチャー企業の広報の役割とは?「立ち上げ」から「強化」まで、事業フェーズ別に解説
「広報って、うちの会社に本当に必要なのか?」と広報活動に悩むベンチャー企業は、少なくありません。また、広報部は存在していても、実質的には“一人広報”や“兼任広報”のような体制で手が回らず、広報部の役割が曖昧なまま放置されてしまうことも。
しかし今、ベンチャー企業を取り巻く事業環境は大きく変化しています。限られた人材・資金・時間の中でいかに社会との接点を築き、企業の存在価値を伝えていくかが、事業成長のカギを握るようになったことから、広報は「企業の価値を社会に伝える戦略」として、あらためてその重要性が再認識されつつあります。
本記事では、ベンチャー企業における広報の役割を成長フェーズごとに解説し、実践に向けた具体的なアプローチを紹介します。
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ベンチャー企業 広報の必要性とは
ベンチャー企業では、広報の必要性が見えづらく、そもそも広報部が設置されていなかったり、存在していても“広報らしい仕事”が担われていないケースも少なくありません。”一人広報”や”兼任広報”の体制で、「イベントの案内文を書く」「記者対応をこなす」といった限定的な業務だけにとどまってしまうことが多くあります。
さらに、「何を伝えるべきかが分からない」「自社の強みを表現できない」「他部署と連携ができない」といった課題も散見されます。こうした状況では、広報の役割が十分に機能しません。
一方で今、広報は情報発信の役割を超えて、ベンチャー企業の成長戦略を支える重要な機能と捉えられつつあります。知名度や予算に限りがあるからこそ、企業の価値やビジョンを的確に伝え、ファンや支援者を得る広報の力が生きるのです。
また、「ヒト(人材)」「モノ(製品)」「カネ(資金)」「情報」といった経営資源の獲得においても、広報はその土台となります。企業や商品、サービスの魅力を言語化し、社会とつながることで、採用や資金調達、営業にも波及効果をもたらす——。広報は、ベンチャー企業にとって事業成長の要となる存在といえるでしょう。
ベンチャー企業の広報 3つの役割
こうした背景を踏まえ、ベンチャー企業の広報が果たすべき3つの基本的な役割を見ていきましょう。
共感される企業へ|存在価値を社会に伝える
企業が市場や社会において存在感を持つためには、「なぜこの会社が存在するのか?」という存在価値を明確にし、それを社会に発信していく必要があります。
創業期においては特に、顧客・投資家・採用候補者などとの関係構築に広報が大きな役割を果たします。
自社のミッションやバリューに共感を集められるかどうかが、採用や営業活動にも直結するからです。
選ばれる企業へ|ブランドを築く「攻め」の手段
広報は、競争が激しい市場の中で「自社らしさ」や「価値」を明確に言語化し、伝えていく「攻め」の手段です。
優れたプロダクトやサービスがあっても、その価値が認知されなければ競争優位性の獲得にはつながりません。
マーケティング・営業と連携しながら、情報設計と戦略的なメッセージ発信を行うことで、選ばれる企業としての地位を確立します。
信頼される企業へ|価値づくりとしての「守り」の手段
企業は、ただ成長すればよいわけではありません。社会から信頼される存在であり続けるには、企業がどのような価値を提供しているのかを、継続的かつ誠実に伝える必要があります。
「攻め」の側面に加えて、企業倫理やサステナビリティへの対応、そして危機対応時の適切なコミュニケーションなど、「守り」の視点が欠かせません。
信頼は一朝一夕には築けず、日々の積み重ねが長期的な事業の持続可能性を支えます。
成長フェーズごとに変化するベンチャー企業の広報の役割
上記のような役割を担う広報ですが、企業の成長のフェーズによって経営課題も変化し、目的や求められるアウトプットも大きく変わっていきます。
ここでは、企業成長の「創業期」「成長・拡大期」「IPO準備期」のフェーズごとに、広報が果たすべき役割や特徴的な活動を解説します。
創業期の課題と3つの壁|認知ゼロからの立ち上げ方
創業初期は、企業そのものの認知がゼロからのスタート。広報体制も未整備な中で、「何を発信すれば良いのか分からない」「そもそも情報が集まらない」「発信の型が定まらない」といった“3つの壁”に直面します。
例えば、製品開発に集中するあまり現場から情報が出てこない、取材依頼に誰が対応するか社内で決まっていないなど、社内体制の未整備も大きなハードルとなります。
この時期に必要なのは、「なぜ広報をやるのか」という目的を明確にすること。PR部門の立ち上げには、まず最低限の発信フォーマット(リリースやSNSのテンプレートなど)と情報収集のルートづくり、そして社内への活動目的の共有が欠かせません。
成長・拡大期|PESOメディア戦略で差別化
サービスの認知が高まり、事業が拡大するフェーズでは、広報に求められる役割も進化します。
メディア掲載の増加、SNSでのシェア、広告展開など、情報の流通経路が多様化する中、メディアをPESO(Paid/Earned/Shared/Owned)で分類して捉える戦略設計が重要になります。
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実際にこのフェーズでは、単発の話題づくりではなく、「自社の伝えたいことを、適切なチャネルで、最適なタイミングで」届ける全体設計力が問われます。競合と差別化されたポジショニングを打ち出すには、複数のチャネルを使っての広報展開が不可欠です。
IPO準備期|パーパスとナラティブの設計がカギ
成長とともに広報の役割はより重く、戦略的になります。特にIPO準備期では、企業の価値観やビジョンを社会と共有する力が、次の成長ステージへの信頼を築くカギとなります。
IPO準備段階に入ると、広報の役割は「攻め」だけでなく「守り」の側面がより一層重要になります。
企業としての社会的責任が問われる中で、パーパスやミッションの再定義、ナラティブ(企業ストーリー)の整理と発信が求められます。
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このフェーズでは、社内向け・社外向けのメッセージを統一し、IR・採用・CSRなど各部門と連携した情報発信体制が必要になります。
また、不測の事態への備え(危機管理広報)も計画に含め、全社で一貫した対応力を持つことが求められます。
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ベンチャー企業“一人広報”でも実践できる広報活動のポイント
このようにフェーズ別に広報の役割を理解したうえで、 “一人広報”や“兼任広報”として業務を担う場合、限られたリソースで成果を上げる必要があります。以下では、リソースが少ない中でも着手できる、広報の基本的な取り組みについて紹介します。
取り組み①:広報計画を立てて、優先順位を明確にする
「やるべきことが多過ぎて何から手をつければいいか分からない」という声は、“一人広報”の現場ではよくあることです。
まずは、年単位・四半期単位での広報カレンダーを作成し、発信機会を可視化することから始めましょう。
記念日、業界イベントなどの外部要因と、サービスのリリースなど社内の動きを掛け合わせて整理することで、自然と広報テーマが見えてきます。
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取り組み②:KPIを設定し、社内合意を得ながら進める
「どれくらい露出されれば成功なのか」「どんなメディアに出たいのか」といった目標が曖昧だと、広報活動の評価が困難になります。
プレスリリース本数やメディア掲載件数、SNSでのエンゲージメント数など、定量的なKPIを設定し、経営層と擦り合わせておくことで、活動の目的と成果が共有しやすくなります。
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取り組み③:リリースはワイヤー配信を活用して効率化
限られた人員で多くのメディアに情報を届けるには、ワイヤー配信サービスの活用が有効です。
媒体ごとの記者連絡先を調べる手間を省きながら、広範な配信が可能になります。
また、テンプレート化されたフォーマットで作成することで、発信業務のルーティン化も促進されます。
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取り組み④:外部パートナーとの連携も視野に
たとえ“一人広報”でも、目的を持ち、適切なリソースを活用すれば十分に成果を出すことが可能です。
ベンチャー企業のスピード感に合った広報の進め方を、段階的に設計していくことが成功のカギです。
全てを自前で行う必要はありません。相談できる相手がいることが、広報の品質とスピードを高めることにつながります。
リリース文案の作成や、企業の緊急時のメディア対応、戦略の再設計など、ポイントごとにプロの意見を取り入れることで、より効果的な広報活動が実現できます。
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まとめ
ベンチャー企業や中堅企業にとって、広報は「余裕ができてから着手するもの」ではなく、創業と同時に企業の価値を社会に伝え、成長の土台を築くための重要な戦略的機能です。
“一人広報”や“兼任広報”といった体制でも、フェーズに応じた役割を整理し、できるところから順に取り組むことで、大きな成果につながります。
本記事でご紹介したように、広報の役割は企業の成長とともに変化します。創業期には“なぜ存在するのか”を伝えるための認知活動から始まり、成長・拡大期には差別化のための戦略的発信、そしてIPO準備期には信頼構築とリスク対応が求められます。
まずは、今のフェーズで自社にとって必要な広報機能を明確にし、計画と実行のステップを設計してみてください。必要に応じて、専門家の力を借りながら進めることも有効な選択肢です。
「広報は戦略である」——この視点を持つことが、企業の次の成長を加速させる第一歩となります。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
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