SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは何か?(後編)
#PRエージェンシーが推進するSXの意義と本質
こちらの記事は、「Transformation SHOWCASE」にて制作・掲載されたものです。
「事業推進」と「社会課題解決」を両立し、「存続に値する企業」を目指す、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という考え方。前編では、目先の売り上げや話題づくりにとらわれず、中長期的な目線をもって責任を果たしていくことが企業に求められていることを、株式会社電通PRコンサルティング サステナブル・トランスフォーメーションセンターに所属する石井裕太氏と横川愛未氏が語りました。
続く後編では、SXを推進するためのアプローチ方法や、マインドセットの部分をより深く掘り下げていきます。
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まず現在地を把握することがSX推進の出発点
Q.「SXを進めたいけれど、何をしたらいいか分からない」という企業に対して、共通のアドバイスはありますか?
石井:まずは「現在地をきちんと把握すること」が出発点だと考えています。自社が生活者からどう思われているか。当社内シンクタンクの「企業広報戦略研究所」にはさまざまな調査データがありますので、それらも活用しながら現在地を把握することを第一歩と考えています。
その上で、社員や社長に対しての「N=1の対話」を重ねて、1人ひとりの具体的な「こうなっていきたい」をしっかりつかみ、データによる「客観的な視点」と、個々の社員が目指したい具体像とのギャップをどう埋めるかを考えます。そこから翻ってみることで、今のアクションを見つめ直したり、軌道修正したり、あるいは足りないと思われる領域があれば、それが新たなアクションを考える入口になります。
株式会社 電通PRコンサルティング 石井裕太氏
横川:それに加えて、私たちは「ソーシャルハンティング®︎」と名付けていますが、人々の不満がたまっているところを探るような作業も行います。私たちのベースは「PRエージェンシー」ですので、「誰に何をどう評価されているのか」という世の中全体の視点や時流を重要視しています。だからこそ現状分析も大切で、そこを把握するための調査はしっかり行いますし、アクションプランを考える上でも、「これを実践することでステークホルダーにどう思われたいのか」は大切にしています。
Q.「ソーシャルハンティング®︎」という説明がありましたが、「人々の不満をつかむ」というのはユニークなアプローチですね。
石井:マーケティング思考であれば、「企業やブランド、商品、サービスに向けられる生活者のニーズ」をひもといていく、という話になると思いますが、私たちは「社内外のあらゆるステークホルダー」からどう評価されているかを大事にしていますね。SNSを活用すれば、企業に対する潜在的な不平不満もかなりモニタリングできます。つまり、N=1を1つひとつしっかり見て「こういう不満がありそうだ」という芽を捉えていく。
もちろんその企業がどんなパーパスを掲げているかはとても大事ですが、一方で具体的に「誰がどのような変化を求めているのか」ということを、私たちはPRマインドをもって見ています。
これからの時代は、企業こそ社会課題解決のメインプレーヤーであるべき
Q.石井さんは、サステナビリティ領域に携わって20年くらいのキャリアを持っています。ざっと振り返って、世の中の変化をどのようにお感じになりますか。横川さんには若い世代の視点から見たサステナビリティ領域のイメージをお聞かせいただけますでしょうか。
石井:大きな変化としては、企業がメインプレーヤーになってきたという印象を強く感じます。これまで社会課題と言えば、NPOなどのソーシャルセクターがやることだ、という認識が強かったのではないかと思うのですが、最近は、あらゆるセクターが連携しないと複雑化した社会課題の根本的な解決は難しいことがいよいよはっきりしてきて、企業がメインプレーヤーとして動くことの重要性が大きく高まっています。そのことが広く理解されるようになって、企業もいろいろなアクションを行うようになった。まだ社会的なインパクトをうまく生み出せていない、という企業も多いかと思いますが、さらに20年も経てば、営利にも非営利にも縛られない、あらゆる集合知が一体となって動いているような時代が訪れているかもしれません。
横川:私が社会人になったのは2019年なので、サステナビリティという概念が普及しているのはもう当たり前、というのが正直な感覚です。個人的な体感としては、「徐々に普及してきた」というよりも、私が生きてきた中で、常に重要なテーマとして横にあった、というイメージでしょうか。私が電通PRコンサルティングに入社したのも、当社が進めていた社会課題解決施策に感銘を受けた、というのが一番の理由ですので、大前提のテーマだ、という印象です。
株式会社 電通PRコンサルティング 横川愛未氏
Q.前編で「ウオッシュではないかと批判されるリスクもある」というお話がありましたが、やはりこの領域で仕事をするのであれば、「SXの推進を手伝う、と公言したものの、実際のところ何ができているのか」という問いに答えることも必要ではないかとも思われますが、どのように考えていらっしゃるでしょうか。
石井:まさに「紺屋の白袴」になってはいけないと思います。当社としても、15年ほど前から、パラスポーツの支援や普及活動を、国内で先行して取り組んできたという自負はありますが、それで十分というわけでは全くなく、日々勉強中です。むしろ当社の失敗と挑戦の様子をどんどん公開することが必要だと思っています。
特に「サステナビリティ」というビッグワードは、いろいろな文脈で語られていますが、いざNPOの人たちと現場に行くと、そこには「N=1」がはっきりと見えます。「こういう社会課題を解決している」のではなく、「この人を助けている」ということが分かる。これこそが、社会課題のど真ん中で頑張っている人たちの現場感なのではないかと思います。決して頭でっかちにならず、「この人がうれしい」という、小さいけれど明確なストーリーが重なることで、壮大なインパクトが生み出されていくのではないかと思います。困っているN=1の人の悩みを、現実的に解決することでしか始まらない、本気でそう思います。
極論ですが、SXのような言葉を使っている間は、漠然とした「誰かのための何か」という思考になってしまう。そうではなく、具体的な「誰の何を解決しているのか」が大事で、N=1の課題解決に企業が本気で取り組むことが全てのスタートラインなのではないかと思います。その「1人の起点」から生み出されたものが、数年後には新しい当たり前になっている、そんな世の中になっていくといいと願っています。
「サステナビリティ」「ダイバーシティ」「SDGs」というと、とても大きなテーマに向き合って、スケールの大きいことをやらなければいけない、と思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、今回SXセンターの二人が強調していたのは、「N=1に向き合う」ことの重要さ。「この人を助けている」「この人に喜んでもらえている」という明確なアクションこそ、企業の本気感なのではないか、という話は非常に示唆に富んでいます。
「SXを進めたいけれど、何から手をつけたらいいか分からない」という人は、まずあなたの隣の困っている人をどうしたら助けられるかを考えてみてはいかがでしょうか。そして、もしあなたがその人を助けることができたら、同じ方法でもっと多くの人を助けられるかもしれません。そんな、1つひとつの小さなアクションが、大きなうねりとなって、いずれ社会を変えていく。それこそがSXの本質的な姿なのかもしれません。
今回話を聞いた石井氏と横川氏は、SX関連はもちろん、そのほかにもそれぞれ得意な分野、関心のある領域があります。スポーツや演劇と長く関わってきた石井氏はそれを新たな街づくりやコミュニティデザインの文脈で生かしたいと。また、横川氏は自身もZ世代であることから、Z世代を巻き込んだプロジェクト、Z世代に向けた取り組みなどにも携わっていきたいということです。こうした分野に関心のある方も、まずは本サイトのCONTACTからお問い合わせください。
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※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
【SXセンター関連サービスプログラム資料 ダウンロードのご案内】
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは、2020年8月経済産業省によって提唱された、企業がサステナブルな経営方針に舵を切る事で、企業成長と社会発展を支える「稼ぐ力」を養うという考え。電通PRコンサルティングSXCでは、様々なESGコミュニケーション活動の研究を通じて、お客様の「稼ぐ力」に貢献するESGコミュニケーション活動を、戦略設計~アクションプランニング~情報流通デザインとKPIマネジメントまで、ワンストップで支援してまいります。